【介護初心者のお悩みQ&A】親の介護が始まったらまずやるべきことは?

突然やってくる親の介護。初めてとなればわからないことだらけ。介護について誰に相談すればよいの? どこに何を申請して、どんな介護サービスを受けたらいいの?……そんな不安だらけの介護初心者のために、介護の基本を専門家に伺いました。

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<お話を伺ったのは>
株式会社NSFエンゲージメント シニア介護コンサルタント
川上由里子さん

かわかみ・ゆりこ●ケアマネジャー、看護師、産業カウンセラー。13年間看護師として勤め、その後、高齢期の暮らし全般のコンサルティング、講演、執筆活動、仕事と介護の両立支援を行う。働きながら父の遠距離介護を体験。

Q 介護保険サービスの上手な利用法について教えてください

介護保険サービスは、要介護認定で要支援または要介護と判定された65歳以上と、40歳以上65歳未満で特定疾病が原因で介護が必要と認定された人が利用できる。親との同居、別居にかかわらず、介護保険サービスを上手に利用したい。

「サービスを利用するにはケアマネジャーによるケアプランの作成(要支援の場合は地域包括支援センターが作成)が必要です。ケアマネジャーは介護生活のコーディネーター。定期的に自宅を訪問し、心身の状態を確認しながらプランを見直すなど、重要な役割を担います。長いおつき合いになるのでケアマネジャー選びは重要です」

ケアマネジャーは居宅介護支援事業所に所属しているので、要介護認定の結果が届いたら、まず居宅介護支援事業所を、市区町村から提供されるリストの中から選ぶことになる。

「事業所、ケアマネジャーを選ぶ際には訪問介護や訪問看護など、希望するサービスが使いやすいか、自宅からの距離は遠すぎないかなども目安です。利用したいデイサービスや、将来、入所を検討したい特別養護老人ホームなどがあれば、そういった施設を併設している法人を選ぶのもいいと思います。いくつか候補が挙がったら、本人の心身の状態や介護者の状況を詳しく説明し、相手の対応も参考にしながら契約しましょう」

事業所、ケアマネジャーが決まったら、どのような目標に向かいサービスを利用するか相談のうえ、ケアマネジャーがケアプランを作成。その後、各サービスを提供する介護事業者と契約する流れだ。

「介護保険サービスの種類や料金などの詳細な情報は市区町村の発行する冊子やWAM NET(下段コラム)、介護情報公表システム(厚生労働省)で知ることができます」

利用率の高い訪問介護は身体介護と生活援助の二つに分けられ、身体介護には入浴、排泄、食事の介護など、生活援助には調理、洗濯、買い物、掃除といった家事などが含まれる。

「入浴や排泄介助はサービスを利用することで介護者の負担を減らしますし、プロの技術を学ぶ機会にもなります。要介護になっても人と交流することも大切です。通所サービスも利用してほしいですね」

通所サービスにはデイサービス(通所介護)と、デイケア(通所リハビリテーション)がある。親がデイサービスに行くのを嫌がるという声も聞くが。

「本人が生き生きと楽しめるようなプログラムについて相談しましょう。残存能力や大切にしてきたことを生かしてくれる関わりが望ましいですね。入浴や食事のないリハビリテーション重視の短時間デイケアや、認知症の方専門の認知症対応型通所介護もあります。まず、ケアマネジャーに相談してみましょう」

※厚生労働省ホームページ「介護事業所・生活関連情報検索 『介護サービス情報公表システム』」を参考に作成。

介護保険の各種サービス内容の詳細を知りたいときはワムネット「高齢・介護」が便利

WAM NET
https://www.wam.go.jp/wamappl/seidokaisetsu.nsf/asssearch?Open&cc=01

WAM NETは独立行政法人福祉医療機構が運営する福祉・保険・医療の情報サイトです。

Q 介護者が倒れてしまった場合、介護されている人はどうなりますか?

介護者が病気やケガで急に介護ができなくなる場合もある。

「緊急の場合、24時間介護を受けられる施設(特別養護老人ホームや介護老人保健施設など)の緊急ショートステイを利用する方法があります。ケアマネジャーに相談を。経済的に余裕があれば、介護保険外ですが、介護付き有料老人ホームのショートステイを使う方法もあります」

ただ、施設で過ごすことを嫌がる親は多い。

「要介護3以上になったら、一度ショートステイを利用しておくのがおすすめ。親には『私が倒れたら面倒を見てくれる人がいないのよ。試しに一度利用してみよう』などと、すすめてみましょう。利用には施設との契約や負担限度額認定証の申請など、手続きが必要なので、一度利用しておくと緊急ショートステイを利用するときにスムーズです」

介護保険外の民間のヘルパーサービスを使う方法もある。

「状況に応じてオーダーメイド型の依頼ができます。1時間2000~3000円の費用はかかりますが、それで乗り切れることもあります。こちらも要介護3以上になったら、試しておくといいですね」

小規模多機能型居宅介護を知っていますか?

小規模多機能型居宅介護は、「通い・訪問・泊まり」の3つを一つの事業所で利用できる介護サービス。

「状況に応じ、3つを組み合わせて利用できます。介護者の急病時なども泊まりを利用できます。ただすでに介護保険サービスを利用している場合、これまで担当してくれたケアマネジャーやヘルパーを、小規模多機能の事業所に変更しなければなりません。利用を考えるなら、事前に見学しておくといいでしょう」

地域密着型のサービスで、利用は居住地域の施設が原則。料金は定額制で要介護度によって異なる。その点も確認しておきたい。

Q 親の在宅介護で仕事を辞めたくありません

「仕事は辞めず両立してください。仕事を辞めると精神的・肉体的・経済的な負担が増します。一日中介護の生活が続き、親と一緒に家に引きこもることになれば共倒れにもなりかねません」

介護と仕事を両立しようと、一人で抱えすぎていることも多いという。

「ケアマネジャーに相談し、介護者の働き方、関わり方を反映させたケアプランを考えましょう。介護サービスを活用し、プロの手を積極的に借りる意識が大切です。職場にも伝え、介護休業制度などの活用方法を考えます。介護保険サービスと職場の支援制度の両輪で両立を目指すことができます」

介護休業制度の中には介護休業と介護休暇がある。介護休業は介護される家族1人につき通算93日、3回まで分割してとれる。介護休暇は1年度に5日、1時間単位でもとれる。

「介護休業は介護導入期の準備段階に使い、介護休暇はケアマネジャーとの面談や通院のつき添いに使うなど、状況に応じて使い分けを」

認知症の介護については「認知症の人と家族の会」や社会福祉協議会にも相談窓口があるので、複数の相談窓口を活用するのもおすすめだ。

取材・文/田﨑佳子

※この記事は「ゆうゆう」2023年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

※2023年10月17日に配信した記事を再編集しています。


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