2024年5月1日から発売中の「MotorMagazine6月号」第一特集は「夏が来る前に、スポーツカーに乗らないか」。パート1では、ライトウェイトスポーツカー編と題して、アルピーヌA110R チュリニとマツダ ロードスター RF VSの比較試乗を紹介しています。ここでは本編に登場しないアナザーカットを中心に「ちょうどいいバランス」を生むポイントをチェックしてみました(写真:永元秀和、佐藤正巳)
そもそも軽いA110が、さらに過激な「R」に進化?
第一特集パート1をメインキャッチはそのものズバリ!の「軽いは、楽しい。」
クルマの価値を高める=それに見合ったパフォーマンスを高めるための高出力化は同時に、ボディをはじめとするシャシまわりの強化やトラクション性能を高めるための各種制御メカニズムの追加、タイヤ/ホイールの大径化、さらにはブレーキ系のポテンシャルアップといった「重量増」につながるファクターがてんこ盛り。
「今日のクルマといえば前からだけでなく側後方からの衝突安全基準をクリアする必要があり、先進運転支援機能の搭載やインフォテインメントの充実、それに伴うハーネス類の増大やなんや・・・と、ともあれ軽く作ることが難しくなっている」と、特集の筆者である自動車評論家 渡辺敏史氏も語っています。
アルピーヌA110はそもそもの成り立ちからして、1100kgちょいという現代のクルマとは思えない軽さが、スポーツカーとしての最大の武器となっていました。
単純に重量が軽いということは、無駄な剛力は必要ないし、入力に対する反応もまたより鋭くなり、結果として重量級の大柄ハイパワーモデルにありがちな「よっこらせ」という挙動ラグを感じさせない「自然な一体感」につながります。これまたシンプルに「操る楽しさ」が違ってくるわけです。
2022年10月に日本で発表された「A110 R」は、カーボンパーツを多用することで、さらにその「違い」を際立たせたモデルでした。車両重量は、素のA110に対して約34kg軽く、「ラディカル(過激)」という評がぴったりのエッジ感は素晴らしいものがありました。
軽いのに重い不思議。軽くないけど重くない悦び
けれど同時に、その軽量化がそのパフォーマンスを楽しむためのハードルを、少し上げてしまっていたようです。さいたる原因のひとつが渡辺氏も指摘している、「カーボンホイールの(重量ではなく)存在感が重いからなのだと思う」ということでしょう。
今回、特集の中で紹介しているA110R チュリニ(以下 チュリニ)はそういう意味でほどよく「軽くないけど重くない」仕様に変更されています。ホイールは、オプション設定のアルミホイールの中では、もっとも軽量な「GTレース」に履き替えています。
「ガンガン使えるアルミホイールの方がむしろお誂えなのだろう。チュリニという公道寄せな名前はそんな気軽さも表しているのかとみてとれる」(渡辺氏)ということで、より日常的に「ガチに走りこみたい」層にぴったりの仕様となっているようです。
もっとも、やっぱり気になるのはA110Sの標準装着ホイール比で12.5kg軽い=バネ下重量軽減に貢献しているというカーボンホイールから、いかに軽いとはいえバネ下が重くなるアルミホイールに変更したことによる弊害でしょう。すっきりクリアな「R」の乗り味がスポイルされてしまっているのではないか、という不安はごもっとも。
本編ではそのあたりを渡辺氏が、しっかりねっとりじっくり検証してくれています。価格差1000万円オーバーのマツダ ロードスターRF VSの脅威的なコストパフォーマンスの高さも含めて、現代のライトウェイトスポーツカーが行きついた「日常と非日常のちょうどいい匙加減」を、味わってみてください。
アルピーヌ A110 R チュリニ 主要装備&主要諸元
アルピーヌ A110 R チュリニ 主要装備
●ノワール プロフォンM(Aピラー/Cピラー)
●カーボンパック
(フロントボンネット/ルーフ/サイドスカート/リアフード/リアディフューザー)
●A110 R専用エアロキット
(フロントスプリッター、スワンネックマウントカーボン製リアスポイラー)
●ラディカルシャシー
(スプリング、アンチロールバー専用チューニング、アジャスタブルダンパー)
●前輪ブレーキクーリングダクト
●セミスリックタイヤ(ミシュラン パイロットスポーツ カップ2)
●18インチアロイホイール GT RACE(ブラック)
●二重構造デュアルエキゾースト
●SABELT製ブルカーボンモノコックバケットシート
●SABELT製6点式レーシングハーネス
●マイクロファイバー ルーフトリム
(ダッシュボード/センターコンソール/ドアパネル/ステアリング)
●専用プレート(シリアルナンバー付)
アルピーヌ A110 R チュリニ 主要諸元
●全長×全幅×全高 4255×1800×1240mm
●ホイールベース 2420mm
●トレッド フロント:1555mm/リア:1550 mm
●乗車定員 2名
●車両重量 1100kg
●エンジン 直列4気筒DOHCターボ
●エンジン型式 M5P
●ボア×ストローク 79.7×90.1mm
●排気量 1798cc
●圧縮比 8.9
●最高出力 221kW(300ps)/6300rpm
●最大トルク 340Nm(34.6kgm)/2400rpm
●燃料・タンク容量 プレミアム・45L
●トランスミッション 7速DCT
●駆動レイアウト MR
●サスペンション フロント:ダブルウイッシュボーン/リア:ダブルウイッシュボーン
●ブレーキ フロント:Vディスク(ブレンボ製アルミモノブロック対向式 4ピストンキャリパー)
リア:Vディスク(ブレンボ製アルミシングルピストンキャリパー)
●タイヤサイズ フロント:215/40R18/リア:245/40R18
●車両本体価格 1550万円