「パワハラ加害者や責任者お咎めなしの甘さ」「とにかく注視」 宝塚歌劇団が改革の進捗状況を公表 Xでは批判、疑問、評価のコメント

写真はイメージです(Eric's library/stock.adobe.com)

宝塚歌劇団は14日、宙組所属の俳優(当時25)が2023年9月に急死した問題を受け、再発防止に向けた取り組みの進捗状況などについての長文を公式サイトに掲載しました。改革の進捗をめぐって、Xではさまざまな意見が見られました。

歌劇団は2024年3月、上級生らによるこの俳優へのパワハラを認めて遺族に謝罪しましたが、パワハラに関わったとされる個人の処分はなく、中止していた宙組公演を6月に再開するとしていることに、ファンからも批判が上がっています。進捗状況の長文では「ハラスメント研修、リスペクト研修、コーチング研修など各種研修を拡充しています」とありますが、今回のパワハラに相当する記述は見当たりません。Xでは「パワハラ認定された方々の処分がまだですが?」「加害についてファンへの説明は?」「今後はパワハラを行う者はどうなるんでしょうか。相変わらずそれが一切書かれていません」と疑問が呈されています。

急死した俳優は過密スケジュールによる過重労働で、強度の心理的負荷がかかっていたとされています。進捗報告では、4月から宝塚大劇場楽屋口にセキュリティゲートを設置し、入退館時間を記録することで劇団員の労働時間の管理を強化。「入館時間を遅らせ、退館時間を早めることで在館可能時間を短縮しました」と説明しています。

また、一連の取り組みを実効性の高いものとするためのサポート体制として、外部有識者で構成されるアドバイザリーボードを2024年4月に設置。「改革の内容について、専門的知見から助言をいただき、今後の劇団運営、改革の推進に生かしてまいります」としています。

Xではこれらに対して「この報告が出ただけでもアドバイザリーボードの効果を感じる。でも加害者や責任者お咎めなしの甘さでどれだけやれるか正直疑問」「変わろうとしていると思う。ファンとして見守っていきます。」「進捗状況の報告は定期的にやっていくみたいだからとにかく注視することが大事か」といった投稿が見受けられました。

同じ日、歌劇団を運営する阪急電鉄の親会社・阪急阪神ホールディングスは2024年3月期連結決算を発表し、歌劇団事業が中核を占めるステージ事業の売上高が前期比約5%減の322億円、営業利益が約29%減の48億円になったことを明らかにしました。これに絡めて、「同じ日にこれを発表したのは市場向けでもあるんだろうか」といった投稿もありました。

宝塚歌劇における改革の取組について

阪急阪神ホールディングス株式会社(以下「阪急阪神HD」といいます。)、阪急電鉄株式会社(以下「阪急電鉄」といいます。)および宝塚歌劇団(以下「劇団」といいます。)は、劇団員をはじめ宝塚歌劇の運営に携わる全ての関係者が、安心してより良い舞台づくりに専念できる環境の整備を進め、宝塚歌劇を新しい時代に相応しい形へと発展させるべく、全力で改革に取り組んでおります。

改革の取組について
劇団および阪急電鉄、阪急阪神HDが連携し、「興行計画の見直し(興行数・公演回数の削減)」「組織的なマネジメントやサポートを強化するための体制・システムの整備」「劇団員および関係者の意識改革・行動変容を促す取組」を推進しております。

アドバイザリーボード
改革を実効性の高いものとするためのサポート体制として、阪急電鉄において、外部有識者で構成されるアドバイザリーボードを2024年4月1日付で設置しました。改革の内容について、専門的知見から助言をいただき、今後の劇団運営、改革の推進に生かしてまいります。
<アドバイザリーボードメンバー>
ガバナンス・内部統制、法律関連、組織風土改革・心理的安全性、演劇制作の外部有識者

グループとしてのガバナンス強化に向けた取組
●阪急阪神HDにおいては、上記の取組を着実にサポートするとともに、並行して、劇団の特性を踏まえる形で劇団に対するガバナンスの実効性を高めてまいります。
●また、グループ全体において、「一人ひとりの活躍」に向けた取組のさらなる推進や、リスク管理体制の強化を進め、ガバナンスを一層充実させてまいります。

2024年5月14日現在
宝塚歌劇における改革の取組について

宝塚歌劇団および阪急電鉄並びに阪急阪神ホールディングスが連携して、以下の改革に取り組んでいます。

1.興行計画の見直し(興行数・公演回数の削減)
興行計画を見直し、より安心・安全な環境下で、一層充実した舞台をお届けできる体制を整備します。
① 年間9興行から8興行体制への変更【2024年1月より実施済】
公演間のインターバル(東京宝塚劇場公演の千秋楽から次の宝塚大劇場公演の稽古開始までの間隔)を約2週間延ばすことで、出演者の体調の維持管理に努めています。
② 1週間あたりの公演数を10回から9回に変更【2024年1月より実施済】
昨今の振付や音楽等の高度化に伴う出演者やスタッフの負担を軽減しています。

2.組織的なマネジメントやサポートを強化するための体制・システムの整備
現場のサポートやケアを行う体制・仕組みを強化し、出演者やスタッフが良好なコンディションのもと活動に打ち込める環境を整備します。
① 稽古スケジュールの見直し
興行計画の見直しと併せて、稽古期間を延長し、舞台稽古の日数を増やします。
② 新人公演の実施日程・運営方法の見直し
・宝塚大劇場の新人公演の実施日を従前から1週間遅らせる(初日から18営業日→23営業日目安)とともに、本公演の準備に集中できるよう、新人公演の稽古開始日を本公演初日後の休演日翌日からとします。【2024年7月雪組宝塚大劇場公演より実施】
・出演者が担当していた一部業務(稽古準備等)を各セクションのスタッフに振り分けるなど出演者の負担を軽減しています。【2024年1月雪組東京宝塚劇場新人公演より実施済】
③ 活動時間管理の強化【2024年4月より実施済】
劇団施設への入退館時間の管理を強化すべく、宝塚大劇場楽屋口にセキュリティゲートを設置し、入退館時間を記録するとともに、入館時間を遅らせ、退館時間を早めることで在館可能時間を短縮しました。
④ 劇団員の心身の健康管理体制の強化
・常設カウンセリングルームの開設【2023年11月より実施済】
2名のカウンセラーが交代で週3日駐在しています。
・専門医への相談ルートの拡充【2023年10月より実施済】
・診療所医師の勤務時間拡大【2024年1月より実施済】
⑤ 現場の問題を把握し、意見を吸い上げる仕組みの強化
・劇団専用の外部相談窓口の開設【2024年2月より実施済】
相談窓口担当の弁護士(おもに女性弁護士)に相談でき、内容に応じて事実関係を確認・調査できる体制を整えています。
・各種相談窓口(既存相談窓口を含む)の周知徹底【2024年2月実施済】
2024年2月に全劇団員に向けて周知徹底し、以降、利用促進中です。
・職場環境(心理的安全性※)に関する匿名アンケートの実施【2024年1月から3月に実施済】
アンケート結果を踏まえ、今後、上記各種相談窓口に加えて、日常的な対話やヒアリングを通じて、現場の声を受け止め、話し合いを重ねながら改革・改善を続けてまいります。
※健全に意見を交わし、生産的でより高い成果を生み出すことに注力できるチームや組織の状態
⑥ 内部監査体制の強化【2024年4月より実施済】
阪急電鉄の内部監査部に宝塚歌劇団担当を配置し、定期的に業務監査を行う体制を整備しました。

3.劇団員および関係者の意識改革・行動変容を促す取組
常に時代に合わせてルールや指導方法を見直し、不断の意識改革を図りながら、培ってきた舞台上での技術やノウハウ、振る舞いを伝承してまいります。
① 慣習・しきたり・指導方法の見直し【2024年1月以降、順次実施中】
情報伝達の方法やタイミング、備品の使用可否など、時代にそぐわないものや必要以上に制限するルールを廃止・変更しています。今後も効率化できる方法を検討しながら、適宜アップデートしていきます。
② 匿名で投稿できる意見箱の設置【2023年12月より実施済】
劇団施設内に2か所および専用WEBフォームを設置し、要望事項に対して劇団員の代表や関係先と協議の上、順次改善を実施しています。
③ 出演者・スタッフの役割分担の見直し
・稽古用小道具の準備や段取りに関する役割の見直し【2024年1月以降、順次実施中】
・IT ツールの導入【2024年中に実施予定】
IT ツールを導入し、一部の各種連絡や情報共有を効率的に行えるよう変更しました。
引き続き、業務の円滑化・効率化を図り、出演者やスタッフの負担を軽減します。
④ 人材育成の強化【2023 年12月以降、順次実施中】
ハラスメント研修、リスペクト研修、コーチング研修など各種研修を拡充しています。
今後は定期的に出演者やスタッフを対象としたハラスメント研修を実施する予定としており、そのほかの研修やキャリアサポートについても検討しています。

引き続き、各取組の実施状況やアドバイザリーボードの助言等も踏まえ、適宜必要な施策の実施や実施済の取組の見直しを進めてまいります。
以上

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