名画複製貸し出し好評 茨城県近代美術館、県内学校へ 鑑賞学習で感性磨く

県近代美術館が所蔵する名画の複製。左はゴッホの「夜のカフェテラス」=水戸市千波町

世界的な名画の複製を茨城県内の小中学校や特別支援学校へ無償で貸し出す県近代美術館(同県水戸市千波町)の取り組みが好評だ。20年以上続いており、貸し出しは年間200点超。教科書にも登場するモネやルノワールなどの名画鑑賞を通して、子どもたちの感性を磨いてもらいたい考えだ。

複製画は、モネの代表作「印象・日の出」「睡蓮(すいれん)の池」をはじめ、ルノワールの「舟遊びをする人々の昼食」、ゴッホの「ひまわり」、ピカソの「ゲルニカ」など。浅井忠の「グレーの橋」や佐伯祐三の「ラ・クロッシュ」といった日本人洋画家の作品を含め、同館が186点(一部貸し出し不可)を所蔵している。精巧な技術で製作され、油絵具の凹凸も再現されている。

貸し出しは同館が2000年度から続けている教育プログラムで、図工や美術の授業、部活動に加え、行事での活用や校内展示などを想定。小中高校の教科書に掲載されている作品や同館にない名画を中心に、少しずつ所蔵点数を増やしてきたという。

昨年度の貸し出し実績は延べ203点。貸出期間は4カ月以内で最大5点。同じ学校に年間で複数回貸し出すこともあるという。

地方で暮らす子どもたちは、規模の大きな美術館や芸術館へ訪れる機会が少なく、国内外の作品を直接鑑賞できる機会は限られるのが実情だ。

このため、下妻市立千代川中では、18年度から同館所蔵の複製画を借り受け、生徒の鑑賞学習につなげている。複製ではあるものの、生徒が世界的な名画を間近で鑑賞できる機会について、小堀勝広校長は「描いた人の思い、想像力、発想力、時代背景を学べる」と話した。本年度も校内の廊下に5点を展示。今後も同館から複製画を借り受け、生徒の学習機会を設けたい考えだ。

複製画は同館の無料スペース「アートフォーラム」でも複数展示。油彩画の歴史や技法も解説している。 同館担当者は、複製画貸し出しを通して「芸術に触れてもらい、子どもたちの心が少しでも豊かになれば」と話した。

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