俳優・福士蒼汰は２０１１年、『仮面ライダーフォーゼ』（テレビ朝日系）でテレビドラマに初主演、世間にその名を広く知られることとなった。さらに’１３年には大反響を呼んだＮＨＫ連続テレビ小説『あまちゃん』で、ヒロインが一目惚れする高校の先輩を演じ、その人気を不動のものとする。彼にとって、生き方が変わることとなった変化「ＴＨＥ ＣＨＡＮＧＥ」とはいったいなんだったのだろうか。【第３回／全４回】
福士さんは５月１７日に公開の主演作『湖の女たち』で、松本まりかさん、浅野忠信さん、財前直見さんといったそうそうたる役者の方々と共演している。彼らは福士さんにどのような印象を残し、また影響を与えたのだろうか。
まずは、今作で福士さんと最もセンシティブなシーンを共にする女優の松本まりかさん。２人が演じる刑事の濱中と看護師の豊田は、実に複雑で歪んだ関係に発展していくのだが、そんな松本さんとは現場でどのようなコミュニケーションをとっていたのだろうか。
「実は、松本さんとは現場で一切お話をしませんでした。僕が演じる“濱中圭介”と、松本さんが演じる“豊田佳代”という役として、劇中でセリフを交わすだけでした。というのも、圭介と佳代の関係性をずっと保ちたくて。
結果的に、松本さんにはとても嫌われてしまいました（笑）。先日も取材会でお会いしたのですが、松本さんから“本当に嫌いだった。今でもまだ信じていない”と言われてしまいました。
「笑顔を見せることも封印していた」
会話をしないだけではなく、笑顔を見せることも封印していたので、相当嫌な奴に見えただろうと思います。でも、松本さんがそうおっしゃったということは、映画をより良いものにするためには、僕の選択は間違っていなかったと思っています」
驚くほどストイックな福士さんのアプローチに対し、松本さんも臆することなく完璧に応えることで、実際に２人のシーンはヒリヒリするほど生々しい。松本さんの“本当に嫌いだった”発言も、お互いの頑張りを称えあうために、彼女が示した一流の茶目っ気ではないだろうか。
作品の中で福士さんが演じる濱中は、浅野忠信さんが演じる伊佐美という先輩刑事から、時に暴力的なプレッシャーをかけられ追い詰められていく。そのシーンはどれも演技とは思えないような緊張感があり、観ていてハラハラしてしまうのだが、実際に現場では浅野さんとどのようなコミュニケーションがあったのだろうか。
「浅野さんは普段とても優しいので、僕が頭を叩かれるシーンの撮影の前には“頭叩いちゃうけどごめんね”とおっしゃってくださいましたし、撮影が始まった瞬間にスイッチが入るような瞬間もないんです。
だから現場ではすごくナチュラルに感じていたのですが、映像を通してみるとものすごく怖くて（笑）。それがとても不思議で、あらためてすごい役者さんだなと思いました。
福士さんが憧れを抱いた俳優「岡田准一」
大森監督が浅野さんの若かったころを振り返って、“同世代の俳優の中で頭一つ飛び抜けていた”とおっしゃっていたんです。さらにキャリアを進めていく中で海外に進出されて、いまでは世界基準で活躍されています。
最近で言えば、真田広之さんがプロデュースされている話題のドラマ『ＳＨＯＧＵＮ』にも出演されていますが、浅野さんのお芝居は海外の方から見ても非常にリアリティのあるものなんだなと、あらためて痛感しました」
今では世界で認められる日本人俳優の一人として大活躍している浅野さんだが、現場では優しくひょうひょうとしていたようで、作中での激しい役柄を観てしまうと、その驚くべきギャップを感じられる貴重なエピソードを伺えた。
最後に、福士さんが初めて憧れを抱いた俳優について聞いてみると、かつて共演した岡田准一さんの名前があがった。
「『図書館戦争』という映画で共演させてもらったのがきっかけです。その時に岡田さんから紹介していただいたのをきっかけに、俳優で武術家でもあったブルース・リーが開発したジークンドーという武術を習い始めました。
岡田さんはお芝居を見ていても、 現場での振る舞いを見ていても、人として尊敬できる部分がすごくたくさんあって、自分の中で唯一な存在というか、ずっと憧れ続けている先輩です」
俳優として様々な役に挑戦し続ける福士さんにとって、共演者たちとのやり取りの中で学び続けることが、自分の中での大きな変化「ＴＨＥ ＣＨＡＮＧＥ」を生み出す道しるべとなっているようだ。
ふくし・そうた
１９９３年５月３０日、東京都生まれ。’１１年にデビューして以来、数々のドラマや映画などで活躍。近年の主な出演作には、ドラマ『大奥シーズン１、２』、『弁護士ソドム』、『アイのない恋人たち』など。昨年Ｈｕｌｕオリジナル『ＴＨＥ ＨＥＡＤ Ｓｅａｓｏｎ２』では、念願の海外進出を果たした。また、ＷＯＷＯＷ『アクターズ・ショート・フィルム』では、初監督作品『イツキトミワ』を手掛けた。５月７日から公開の映画『湖の女たち』では、いままでにないダークなイメージのキャラクターにも挑戦している。
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