番組情報データが創造する視聴者とのタッチポイント 〜IPG「Gガイド運用連絡会議」レポート(前編) / Screens

全国の放送局から寄せられた番組情報(SI:Service Information)や配信情報を始めとする、エンターテイメントに関わるコンテンツのデータを集約し、電子番組表サービス「Gガイド」の運用や各種事業を展開している株式会社IPG。1999年の設立以来、視聴環境やニーズの多様化にあわせてサービスの拡充を続けており、番組情報を軸に出演者情報、番組広報情報、VOD・映画情報などの付加価値データを紐付け、各種サービスに提供するプラットフォーマーとして大きな役割を果たしている。

本記事では、同社が年に2回、Gガイドを始めとした各種サービスの運用状況を全国の放送局に向けて報告する「Gガイド運用連絡会議」を前・後編にわたってレポート。前編の今回は「Gガイド」サービス運用の現状と新たな取り組みにフォーカスしてお伝えする。

■番組表サービス「Gガイド」運営会社とメディア事業者が一堂に介する連絡会議

IPGの主要サービスである「Gガイド」は、全国の放送局を中心に集められた番組情報を管理し、テレビデバイスやPC・スマートフォンなどネット端末向けの番組表を配信するサービスだ。昨今、コネクテッドTV(CTV)をはじめ視聴環境が多様化し、統一化された番組情報データの重要性が高まる中、同社は「データベースカンパニー」を標榜し、視聴者がより多くのコンテンツと出会うための仕組みづくりに取り組んでいる。

こうした取り組みの一つが、今回取り上げる「Gガイド運用連絡会議」だ。年2回開催されるこの会議では、番組情報の提供元である放送局を中心に、ポータルサイトや各種検索エンジンなど配信データを利活用する事業者も参加し、放送コンテンツにおける生活者のタッチポイント作りについて取り上げている。

本記事では、2023年12月に行われた「第37回 Gガイド運用連絡会議」の模様を、担当者へのインタビューを交えながらレポートしていく。

■放送波での番組表配信「放送型Gガイド」画面内の告知枠は90%の高リーチを記録

代表的な「放送型Gガイド」は、ホスト局を務めるテレビ局(主にTBS系列局)の放送波に重畳して展開されるサービスだ。パナソニックやシャープをはじめとする主要メーカーのテレビに搭載され、対応機種は累計6700万台にのぼる。

番組表画面内には画像を用いて番組を訴求できる告知スペースが設けられており、放送当日、前日のほか、1週間前からのカウントダウン掲載、放送終了後の配信サービス誘導に活用されている。

「放送型Gガイド」の利用ユーザーにおける1日あたりの番組表利用回数は平均2.4回。男女比では男性の利用頻度が高く、特に平日深夜帯の利用が多いという。一方、1回あたりの番組表利用秒数は平均約55.6回。利用秒数は女性のほうが長く、時間をかけてコンテンツを探す傾向にあるという。

ユーザーへのリーチ率は1日あたり約60%と非常に高く、特に水曜、土曜、日曜で高い傾向。番組表内の告知スペースへ1週間連続で広告を掲載したケースでは、延べ到達率が約90%に及ぶなど、高い認知効果を上げている。

■番組表からOTTへシームレスに接続、コネクテッドTV特化の「HTML Gガイド」

また、コネクテッドTVの特性を活かしたGガイドサービスとして展開されているのが「HTML Gガイド」だ。

こちらは番組ロゴや代表カット(キービジュアル)など、HTML5ベースの技術を活用したリッチな表現が可能。ポップアップ画面や広告クリックでのチャンネル切り替えや番組詳細ページへの遷移など、インターネット結線されたテレビならではのプロモーション機能を備えている。

「HTML Gガイド」では、放送と配信にまたがるシームレスな誘導につながる機能として、2022年11月より「OTTリンク」機能を実装。番組表、番組検索機能から配信コンテンツへ直接遷移するリンクを表示することで、放送が終了した番組についても視聴機会を逃さず楽しむことができる。

また、関連機能として、2023年6月よりケーブルテレビ大手・J:COMのSTB端末にも「OTTリンク」機能を展開。Gガイドから民放公式テレビサービス「TVer」の配信コンテンツをワンステップで再生できるほか、同年11月からはパナソニックのテレビ受像機でTELASA・Hulu・FODとの連携もスタートした。

■外部ポータルサイトを介した視聴導線を構築「シンジケーテッドGガイド」

IPGではテレビデバイス向けのGガイドに加え、スマートフォンやPCを対象とした「通信型Gガイド」の運用も行っている。

スマートフォンアプリ「Gガイドモバイル」は、月間アクティブユーザー約80万人を抱える「日本で最も使われている番組表アプリ」だ。このほか、ブラウザ上で利用できるWEBサービスとして「Gガイドブラウザ」も展開。こちらも月間アクティブユーザー約170万人を保持。どちらも「OTTリンク」機能が実装され、TVer・TELASA・Hulu・FOD・U-NEXT(※TBS/テレ東系「Paraviコーナー」)と連携している。

今後は「HTML Gガイド」で実装済みの配信番組検索機能を「Gガイドブラウザ」にも設置。見逃し配信だけでなく、オリジナル作品も含めた全ての配信コンテンツへのタッチポイントを設ける予定だ。

また同社では、ポータルサイトなど外部のサービス事業者が運営するWEBメディア向けの番組表配信サービス「シンジケーテッドGガイド」も展開。2024年3月現在で6サイトに向けて配信しており、合計の月間利用者数は約1270万人、月間総ページビューは約1.1億にのぼる(※このうち「Yahoo! テレビ」が2024年3月末でサービス終了)。

■放送局向け「番組表キット」メタデータからGガイド・番組表ページを自動生成

会議では、放送局による番組情報発信を支援するソリューションサービスの運用状況もトピックに上がった。

放送局の自社サイト上における番組表運営をサポートする「minds(マインズ)番組表キット」は2024年3月現在、全国36社のテレビ局が導入している。

番組データに基づいて自社サイトの番組表ページが自動生成され、IPGが提供する番組コンテンツ登録システムに放送局がPR動画、画像素材を入力すると自動で連携される。1回の入力でGガイドデータともに一括で更新でき、不測の事件や災害などによる緊急編成にも柔軟に対応できる。外部システムと連携するAPIも用意されており、自社サイトのトップページに現在放送中の番組を自動で表示させる仕組みも簡単に構築可能だ。

さらに2024年1月からは、マルチ編成の番組表運用機能もスタート。サブチャンネルの編成がある時間帯のみ番組表を並列表示させることができ、ユーザーは画面を切り替えることなくサブチャンネルの番組情報を確認できる。

■各種技術検証への参画、Google検索画面を視聴タッチポイント化…IPGが挑む新たな取組み

IPGのノウハウを活かした技術検証、実証実験の取り組みも積極的に行われている。

共同研究企業や行政機関とともに、視聴コンテンツと生活者との最適なマッチングに向けて、技術検証・実証実験に参画。IPG がこれまで培ってきたコンテンツメタデータ運用の知見を提供している。

また、2023年6月よりスタートしたGoogleの検索新機能に、IPGは番組メタデータを提供。出演者や番組名をキーワードとする検索結果に「放送スケジュール」欄が新たに追加され、ユーザーがお気に入りとして登録した番組や芸能人が出演する番組を1週間先まで表示する。

2023年11月からはTVer等の配信情報にも対応し、一部の番組において過去1週間分の番組情報とTVer等の見逃し配信情報を、ユーザーの検索地域に連動させる形で表示。人物名番組名の検索を番組認知の機会として活かし、放送コンテンツと視聴者を繋ぐ新たな導線づくりに取り組んでいる。

続く後編では、番組メタデータ活用の取り組み事例などをお送りする。

Gガイド広告に関するお問い合わせは、下記へご連絡ください。

ad-sales@ipg.co.jp

【後編】“未来”と“過去”の両方にニーズ、番組データをリッチ化する意義

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