意外に知らないステンレスボトルのNG 劣化の確認や正しいお手入れなどメーカーに聞いた

多くの人が利用しているステンレスボトル【写真提供:タイガー魔法瓶】

おいしい温度をキープして持ち歩けるステンレスボトル。エコで節約にもなることから、活用している人も多いでしょう。一方で、気になるのは劣化や破損で、定期的に買い替える必要があるといいます。安心安全にステンレスボトルを使用するため、買い替えの目安やお手入れ方法、選び方のポイントについて、タイガー魔法瓶株式会社 真空断熱ボトル商品企画担当の高田愛子さんにお話を伺いました。

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ステンレスボトルの劣化を確かめる方法

――一般的なステンレスボトルについて、買い替えの目安を教えてください。

「保温力や保冷力の低下を感じたときが、買い替え時期です。ステンレスボトルと呼ばれる真空断熱ボトルは外瓶と内瓶の二重構造で、その間は真空状態になっています。空気が存在しないことで、熱伝導はほぼゼロ。そのため保温・保冷効果が高いんです。

ただし、へこんだりサビが発生したりすることで、真空状態が損なわれると、飲み物の熱や冷たさが外瓶に伝わり、逃げてしまいます。毎日持ち歩いていると、ボトルをぶつけたり、落としたりすることも。そんなときはボトル本体のへこみやゆがみをチェックしてみください」

外瓶と内瓶の間の真空状態が損なわれると、熱が外瓶に伝わり飲み物の熱が逃げる【画像提供:タイガー魔法瓶】

――保温・保冷力の低下を確認する方法はありますか?

「保温効果を確かめるには、熱湯を本体に満量入れてください。約5分後、本体側面の中央から下側を触って外から温かさを感じるようだと、保温効力がない状態と判断できます。

ちなみに、本体側面の中央より上は、中瓶の熱が口の部分から外瓶の上部に伝わっただけかもしれません。保温効力が損なわれているわけではない可能性もあるので、確認する位置に注意してください」

本体やパッキンなどの定期的なお手入れが大事【写真提供:タイガー魔法瓶】

ステンレスボトルのお手入れ方法、気をつけるべき点は?

――ステンレスボトルを長持ちさせるお手入れ方法やコツを教えてください。

「本体の内側に『サビのような赤い斑点』『ザラザラしたもの』がつくことがありますが、これらは水の中に含まれているカルシウム・マグネシウム・鉄分といったミネラル成分。スーパーマーケットや薬局で販売されているクエン酸のご使用をおすすめします」

○クエン酸を使ったお手入れ方法
1. クエン酸(約10グラム)をぬるま湯で薄めて本体に入れる
2. 2~3時間後にやわらかいブラシできれいに洗い、水で充分にすすぐ
3. 充分に乾燥させる

「茶渋やコーヒーの汚れは、タンニンや油脂成分によるもので、こすってもなかなか落ちません。こうした汚れには、ステンレスボトル専用の洗浄剤を使うのがおすすめです」

○専用の洗浄剤を使ったお手入れ方法
1. 洗浄剤を入れ、ぬるま湯(約40度)をゆっくり本体に入れる
2. 2時間後に洗浄水を捨て、水で充分にすすぐ

――お手入れでのNGはあるのでしょうか。

「ステンレスボトルをお手入れする際、絶対に『塩素系漂白剤』は使わないでください。サビや穴が空く原因になります。酸素系漂白剤は、本体内部の洗浄にはご利用いただけますが、本体外側は塗装がはがれるなどの原因となりますので、ご利用いただけません。酸素系漂白剤のご使用については取扱説明書もよくご確認ください」

炭酸を入れても大丈夫なステンレスボトルも【写真提供:タイガー魔法瓶】

入れてはいけない飲み物 対応可能なものか注意を

――よく、「ステンレスボトルに炭酸飲料や乳製品はダメ」といわれますが、一般的に避けたほうがいい飲料について教えてください。

「1つ目は、お酢、スープやみそ汁などの『酸や塩分を含む飲み物』。ステンレス製のボトルは、酸や塩分によって腐食し、内瓶に穴が開くおそれがあります。また、注意してほしいのがスポーツドリンク。塩分を含むため、通常のステンレスボトルに入れると故障の原因になるおそれがあるのです。ただ最近は、ボトルの内面に特殊な加工を施して、スポーツドリンクを安心して入れられる『スポーツドリンク対応』のものも多く発売されています。ただ、その場合も、使用後すぐのお手入れが必要です。

2つ目は『牛乳や乳飲料』。変質したときにガスが発生し、栓やフタが開かなくなったり、中身が噴き出したりするおそれがあります。さらに、パッキンなど部品の隙間に付着すると、臭いの原因にもなります。カフェオレやミルクティーも避けてください。

3つ目は『炭酸飲料』。炭酸ガスによって、栓やフタが開かなくなったり、中身が噴き出したりするおそれがあるのでNGです。ただし、最近では炭酸飲料も入れられる構造のボトルが発売されているんです。フタを閉めている間は炭酸ガスをボトル内に閉じ込めていますが、フタ開栓時に炭酸ガスを先に抜く機構を採用することで、中身の噴き出しや飛び散りを防ぎつつ、軽い力で開けられます。コーラや炭酸水はもちろん、ビールやハイボールなどのアルコール飲料も入れられるので、これからの行楽シーズンにぴったりですよ」

――ステンレスボトルを選ぶ際のポイントは?

「大きなポイントは、保温・保冷対応か保冷専用か。保冷専用タイプは、冷たい飲み物を一度にたくさん飲めるような細い飲み口が一般的で、大容量タイプも多く発売されています。一方、細い飲み口で熱い飲み物を飲むと口内をやけどするおそれがあるため、保温・保冷対応の場合、飲み口が広くなっています。

飲み口の形状は、スクリュータイプとも呼ばれる口あたりのなめらかな飲み口や、片手でさっと水分補給ができるワンプッシュタイプ、ストロータイプなどさまざま。用途や好みに合わせて選んでみてください。

続いて、確認したいのがお手入れ方法について。昨今ではパッキンと栓が一体になったタイプが、各社から発売されています。加えて、食器洗い乾燥機に対応したタイプも増加。栓とボトル本体の両方を食器洗い乾燥機で洗浄することができ、隅々まで手早くきれいに洗うことができます。

あとは入れる飲み物。スポーツドリンクや炭酸飲料は、対応しているボトルを選ばないと安全に使用できません。好みや用途に合わせ、入れる可能性のある飲み物に対応しているか、購入時によく確認して選んでください」

気温が上がり、水分補給が欠かせなくなる季節。きちんお手入れをするほか、好みの飲み物に合ったマイボトルを活用し、おいしく楽しみたいですね。

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