在来線用なのに「新幹線仕様」! 青函トンネル周辺でしか見られない「レアな機関車」とは

青函トンネル区間専用機関車「EH800形」

本州と北海道を結ぶ「青函トンネル」は、北海道新幹線のほか、貨物列車が走る在来線「海峡線」が、同じ空間を共有して走っています。両者は、レールの幅は異なりますが、架線の電圧や保安装置は新幹線仕様に統一されています。そのため、青函トンネルを含む青森~函館間(正確には東青森~五稜郭間)では、専用機関車の「EH800形」が運用されています。

EH800形は、2016年の北海道新幹線開業を前に、2014年に営業運転を開始しました。青函トンネル区間では、開通時に専用機関車として改造投入されたED79形と、後にED79形やED75形を置き換えるために開発されたEH500形が、貨物列車をけん引してきました。しかし、新幹線の開業により、対応装備を持たないこれらの車両は、青函トンネルでの継続使用が不可能に。そのため、新幹線共用区間での運用にも対応する、EH800形が投入されたのです。

EH800形は、EH500形をベースとしていますが、交直両用のEH500形に対し、EH800形は交流専用。また、在来線区間の交流20000ボルトと、新幹線共用区間の交流25000ボルトの双方に対応した「複電圧車」となっています。

加えて、新幹線共用区間を走行するため、保安装置はATS-PFやATS-SFなどの在来線用のほか、新幹線用のデジタルATC、DS-ATCを搭載。また、2エンド側(函館方)の側面には新幹線区間用の通信アンテナを搭載しており、この部分がふくらんでいるのが特徴です。

EH800形は、青函トンネル区間用とはいえ、その他の交流区間でも(EH500形より性能低下はあるものの)理論上は走行できる車両ではあります。しかし現在のところ、かつてED79形が仙台まで運用を持っていたような、青函トンネル区間外での運用は見られません。青森・函館を離れるのは、大宮の車両基地で検査を受ける際と、京都鉄道博物館のイベントで展示された際のみに限られています。

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