ガザ南部ラファからの避難者、1週間で約45万人=国連機関

デイヴィッド・グリッテン、BBCニュース

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は14日、パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファから逃れた人の数が、この1週間で45万人近くに上ったと発表した。ラファをめぐっては、イスラム組織ハマスとの戦闘を続けるイスラエル国防軍(IDF)の戦車が街の深部へと前進していると報じられている。

UNRWAは「(ガザの)人々は絶え間ない疲弊や飢え、恐怖に直面している」と警告した。

IDFはラファ東部にある「テロ標的に対する作戦」を継続しているとしている。同地域には100万人以上が身を寄せている。

一方、ガザ北部でもIDFの新たな作戦があり、10万人が家を追われている。

IDFはハマスが部隊再編を進めているとして、ガザ市東部ゼイトゥンとガザ北部ジャバリアに戻っている。IDFはわずか5カ月前に、ハマスの現地大隊を解体したとしていた。

ラファ東部とジャバリアへの攻撃に先立ち、IDFは住民に避難指示を出した。ここ数日の避難者の数はガザ人口約230万人の4分の1近くにあたる。

昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲では、イスラエル側で約1200人が殺害され、252人が人質に取られた。イスラエルは直後にハマス壊滅を掲げてガザで軍事作戦を開始した。

ハマス運営のガザ保健省は、イスラエルの報復攻撃による同地区での死者は3万5170人に上るとしている。これには、過去24時間で殺害された82人が含まれる。

UNRWAは14日朝、ひと気がないラファの通りを写した画像を数枚、ソーシャルメディアに

した。IDFが6日に作戦を開始する以前は、テントや仮設シェルターでごった返していた場所だ。

複数の世帯が安全な場所を求めてラファを逃れたというが、UNRWAは「安全な場所などどこにもない。即時停戦が唯一の希望」だとしている。

ラファにいるUNRWAのルイーズ・ウォータリッジ報道官は、街に残っている人々は「できるだけ西側に移動」し、地中海沿岸のビーチにテントを設置したとソーシャルメディアに

。内陸部は「いまやゴーストタウンだ」と付け加えた。

生まれたばかりの子供と一緒に西部タル・アル・スルタン地区に避難しているハディール・ラドワン氏は、絶え間ない砲撃におびえ、飲料水やそのほかの物資が不足している状況に耐えていると語った。

ラドワン氏はAFP通信に対し、ほかの住民は逃げているが、「私は帝王切開で出産したので、恐怖にさらされる中で急いで移動するというのは、私には難しい」と述べた。

ロイター通信はパレスチナ人たちの話として、IDFの戦車がラファ南東部の住宅地の奥深くまで前進し、14日にIDFが制圧したエジプト国境にあるラファ検問所近くの、ガザ北部と南部を結ぶ主要道路を横断していたと伝えた。

「戦車が今朝、サラ・アル・ディン通りの西側、ブラジル地区とアル・ジュネイネ地区に入った」と、住民の1人は述べた。「彼らは市街地の通りに到達していて、衝突が起きている」。

アル・ジュネイネ地区はイスラエルの当初の避難指示の対象となった東部地区の一つ。ブラジル地区を含む避難指示は、11日に出された。

住民たちは、ラファの北側のアル・マワシからハンユニス、ガザ中部デイル・アル・バラフへと広がる、イスラエル軍が指定した「拡大人道地域」に向かうよう指示されている。しかし国連は、同地域では基本的なインフラが不足していると指摘している。

IDFは14日の声明で、IDF部隊が「ラファ検問所のガザ側での接近戦で、武装したテロリストの小集団を複数排除」し、ラファ東部では「多数のテロリストを排除し、武器のありかを突き止めた」と説明した。

ハマスはイスラエルやイギリスなどの国でテロ組織に指定されている。同組織は、ブラジル地区の南にあるアル・サラム地区で、イスラエルの兵員輸送機を対戦車ミサイルで攻撃し、ハマス戦闘員が複数のイスラエル兵を殺傷したとしている。また、アル・ジュネイネ地区を通るジョージ・ストリートで、偽装爆弾が仕掛けられた建物を爆破したとしている。

IDFは、ガザ南部での戦闘で兵士1人が重傷を負ったとしている。

ガザでの戦闘開始から7カ月がたつ中、イスラエルは、ラファ制圧と、最後に残っているハマス大隊の排除なしに勝利はあり得ないと主張している。

一方で国連や西側諸国は、ガザへの全面攻撃は多数の民間人の死と人道的大惨事につながりかねないと警告している。

国連はエジプトとの境界にあるラファ検問所が封鎖され、イスラエルとの境界にあるケレム・シャローム検問所の周辺では敵対行為が起きていることから、燃料や食料、そのほかの必需品の供給が不足しているとも警告している。

13日には、ラファの北東に位置するハンユニスの病院へ向かっていた車両が攻撃を受け、乗っていた国連のインド人スタッフが死亡した。車両には国連であることを示す「UN」と書かれていた。

IDFによると、車両は戦闘が起きている地域で攻撃されたことが初期調査で示された。また、IDFは車両の走行ルートについて事前に知らされていなかったとした。しかし国連は、イスラエル当局は事前に計画されたこの移動について知らされていたと主張した。

アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障担当)は13日、同国は依然として、「明確な戦略的利益がなく、膨大な数の市民を危険にさらすラファ中心部への大規模軍事作戦を開始するのは間違い」だと考えていると述べた。

「我々はいまも、ラファを含め、ガザのあらゆる場所でハマスの敗北を確実にするための、より良い方法についてイスラエルと連携している」

こうした中、カタールのムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニ首相は14日、ラファでの作戦がイスラエルとハマスとの間の新たな戦闘休止と人質解放に向けたカタールとエジプトの取り組みを「後退させた」と警告した。

「特にここ数週間は(交渉の)勢いが増しているように見えていたが、残念ながら正しい方向には進まず、今ではほとんど行き詰まっている」

IDFは14日、ガザ北部ジャバリアで多数の交戦があり、「(IDFの)部隊を銃撃したテロリスト数十人を戦車で排除し、同地域に仕掛けられた爆弾網を解体した」と発表した。

ガザ市東部ゼイトゥンでは「数人のテロリストを排除」し、トンネル坑道を発見し、発射装置や武器貯蔵施設を解体したという。

ハマスの軍事部門によると、ハマス戦闘員はジャバリア難民キャンプ内のイスラエル軍の戦車に向けてミサイルを発射したほか、家の中に潜む部隊をミサイルや爆発物で攻撃し、多数の兵士を死傷させたという。

IDFはガザ北部で兵士3人が重傷を負ったとしている。

13日にジャバリアから逃れた住民は、戦車が難民キャンプに攻め込むのを目撃したと語った。

今も妻と幼い子供たちとジャバリアで暮らすムスタファ・ジャミール・アブ・サルマン氏は、「まるで戦争が始まった頃に戻ったようだ」と、BBCアラビア語の番組「ガザ・ライフライン」で話した。

「爆弾や銃撃の激しさという点において、戦争が以前よりも猛烈なものになっている」

「基本的な物資を買うために自宅を離れるのが怖くなった。(ジャバリア)北部の通りには今は誰もいない。誰1人通ることができないし、殉教者の遺体を収容することもできない」

男性は、「2日前に子供が生まれたが、(妻は)出産にまったく適さない場所で子供を産んだ」とも話した。

IDFは12日にジャバリアでの作戦を開始したと発表。「ハマスが同地域でテロリストのインフラと工作員を再編しようとしているとの情報に基づくもの」だとした。

世界食糧計画(WFP)によると、推定30万人がガザ北部から逃れられずにいる。援助物資も届かず、「本格的な飢饉(ききん)」に見舞われているという。

IDFは過去1日の間に、戦闘機などを使ってガザ全域の100以上の標的を攻撃したと発表。

ガザ中部のヌセイラット難民キャンプでは、UNRWAが運営する学校内に設置された「ハマスの戦争部屋」を攻撃し、武装集団のメンバー15人ほどを殺害したという。

UNRWAはこれについてコメントしていないが、複数の画像には、避難民でいっぱいの学校のそばに、破壊された建物を調べるUNRWAスタッフが写っている。

ハマスが運営する民間防衛隊は、IDFの空爆でヌセイラットの別の場所にある3階建て住宅が倒壊し、初期対応者が26人の遺体を収容したと発表した。UNRWA運営の学校への言及はなかった。

(英語記事 Gaza war: Almost 450,000 people have fled Rafah in a week, UN says

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