左目がほとんど見えない27歳の女子テニス選手が初の世界100位へ! 目標は「より長く健康であり続けること」<SMASH>

27歳の女子テニス選手、レベッカ・シュラムコワ(スロバキア/世界ランク120位)が、開催中のWTA1000大会「イタリア国際」(5月7日~19日/イタリア・ローマ)で予選から本戦ベスト16進出の大躍進を見せ、週明けのランキングで自身初のトップ100入りを確実にした。4回戦でエレナ・オスタペンコ(ラトビア/同10位)に6-4、4-6、6-7(3)で敗れたが、シードのケイティ・ボールター(イギリス/同28位)や元世界4位のソフィア・ケニン(アメリカ)を倒した素晴らしい1週間だった。

27歳で初のトップ100というのはさほど特別なことではないが、これまでのシュラムコワの苦難の道のりを知れば、それがとてつもない偉業だとわかるはずだ。WTA公式サイトが本人のインタビューと共に報じている。

苦難の1つは、彼女の左目が生まれつきほとんど見えないということだ。それは彼女がテニスを始めた理由でもあった。高度な奥行き知覚やハンドアイ・コーディネーションが求められる競技に取り組むことで、視力が向上するのではないかと期待したという。残念ながら視力は良くならなかったが、成績はみるみる上がっていった。

2012年、15歳でプロサーキットにデビューすると、18歳でWTAツアーの予選(ノッティンガム)に初出場。19歳でトップ200を突破、20歳だった17年全豪オープンで初めて四大大会本戦の舞台に立った。このシーズンには、グシュタードでWTA本戦初勝利も挙げ、今週までのキャリアハイ世界111位をマークしている。
キャリアを順調に歩んでいたシュラムコワだが、17年からは度重なるケガに襲われる。最初は背中を故障して、1年近く戦列を離脱。

「その後、肩と腹筋に問題が生じました。またいいプレーができるようになった矢先、次は足を疲労骨折。それが2年前で、22年に手術を受けたんです。骨が3つに分裂していて、2つを取り除きました。調子を取り戻すのにさらに3カ月もかかったわ」

現在、シュラムコワを支えるチームのメンバーは、コーチのミラン・マルティネツとフィットネストレーナーのダビド・オラス。彼女の目標は「より長く健康であり続けること」だが、信頼できるチームの後押しを受け、ようやく全てがうまく回り出した。一時は388位(22年9月26日)まで落ちていたランキングは、昨年7月に200位を突破すると、その後は右肩上がりで推移。同月のWTA250大会「BNPパリバ・ワルシャワ」では、カロリーナ・ムチョバ(チェコ)に勝って初のツアー準々決勝進出を果たしていた。

左目が見えない上、ケガにも悩まされてきたシュラムコワ。いったい彼女を支えているものは何か? 27歳はこう答えている。

「ひとかどの選手になりたい。だからこのスポーツをやっているの。周りの子たちが、優れた選手になるために戦っているのを見ると、自分もそうなりたいと思うでしょう。それが私の原動力なんです」

幾つもの困難を乗り越え、すでに立派なキャリアを築いているシュラムコワ。彼女のチャレンジの続きから目が離せない。

構成●スマッシュ編集部

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