法律の専門家に聞く「機能性表示食品」

法律の専門家・犬塚さんに、機能性表示食品について聞きます。

小林製薬が製造した紅麹を原料とするサプリメントが原因と疑われる健康被害が発覚しました。消費者庁は今回の事案を受け、機能性表示食品制度の今後の在り方を考えるための検討会を開催することとしました。

健康ブームを背景に市場規模が拡大している「機能性表示食品」についての注意点などを改めて確認します。

昔はよく「トクホ」という言葉を耳にしたのですけど、今回の「機能性表示食品」とは違うのでしょうか?

犬塚弁護士:
はい、この2つは違うものです。一番の違いは「国の審査があるかないか」です。トクホは、正式には「特定保健用食品」といいまして1991年から制度が開始されました。「コレステロールの吸収を抑える」など、表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品1点ごとに消費者庁長官が許可しています。

一方で「機能性表示食品」は、2015年から制度が始まりました。「事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した」食品で、販売前に安全性や機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものです。ただし、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。

Q:
口に入れるものですから、やはり国の審査を経たものがいいと思うのですが、どうして機能性表示食品制度が設けられたのでしょうか?

犬塚弁護士:
特定保健用食品は、製品そのものを人間に摂取させて確かめた臨床試験データが必須とされるなど、許可されるまでの時間とハードルが高いとされています。
そこで国の成長戦略の一環として機能性表示食品制度が設けられ、機能性に関与する成分の文献評価が認められたり、製品の臨床試験データが必須とされないなど、企業にとってはかなり規制が緩和された制度といえます。

Q:
だから今回の問題が起きたというわけではありませんが、今後被害を受けた消費者は、会社側に損害賠償を請求することは可能なのでしょうか?

犬塚弁護士:
まず消費者がサプリメントの製造会社に民法709条の「不法行為」に基づく損害賠償を請求する場合、消費者側が製造会社の故意又は過失を主張・立証しなければなりませんので、大変ハードルが高くなります。
そこでもう一つ、被害者救済を図るために製造物責任法(PL法)があります。こちらは製造物の「欠陥」により被害が生じた場合における「製造業者等の損害賠償の責任」について定めるものです。「欠陥」とは、製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、サプリメントに本来含まれていないはずの有毒成分が入っていれば「欠陥」に該当します。有毒成分と被害との因果関係が認められれば、サプリメントの製造業者に対して損害賠償請求が可能となります。

Q:
消費者庁のデータベースによりますと、今年4月10日時点で約8200件の届出があった機能性表示食品のうち、約2割が「科学的根拠が乏しい」「販売終了」などの理由で表示を撤回していたことが分かりました。我々消費者側も情報を正しく理解することが大切ですね。

犬塚弁護士:
そうですね。機能性表示食品は、「事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品」ですので、「たくさん摂取すればより多くの効果が期待できる」というものではありません。逆に、過剰な摂取が健康に害を及ぼす場合もあります。パッケージには、一日当たりの摂取目安量、摂取の方法、摂取する上での注意事項が表示されていますので、よく確認してから摂取するようにして頂きたいですし、万一、体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止して
医療機関を受診して欲しいと思います。

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