油料作物に良し悪しはなし、あるのは手法の良し悪しだけ

*新たな報告書で明らかに:植物油生産で重要なのは植物ではなく手法

【バンダルスリブガワン(ブルネイ)2024年5月15日PR Newswire】油料作物ほど多くの2極化した見方や見出しを引き起こした話題はほとんどありません。こうした議論は自然保護、人権、栄養に及んでいますが、証拠は何を明らかにしているのでしょうか。IUCN Oil Crops Task Force(国際自然保護連合油料作物特別部会)の主催組織であるBorneo Futuresが作成した新たな報告書は、これまでにない知見を提供しています。

New IUCN report on the Future of Vegetable Oil - Oil crop implications – Fats, forests, forecasts, and futures

世界の農耕地の37%を占めている油料作物は、生物多様性損失に重要な役割を果たしており、さまざまな人権侵害に関連しています。しかし、それらはまた、重要な収入源であり、栄養源としての役割も果たしています。世界の植物油需要は2050年までに2億8800万トンに増加すると見込まれており、持続可能な生産手法の必要性が緊急の課題となっています。

この報告書は、オリーブやココナツのような一見良性に思えるものを含む全ての油料作物は、人や自然を考慮せずに生産されれば、悪影響をもたらす可能性があることを強調しています。特定の作物を悪者扱いするのではなく、持続可能な生産手法に注意が向けられるべきです。

報告書の主執筆者で、IUCN(国際自然保護連合)の油料作物特別部会の共同議長であるErik Meijaard教授は「この報告書が示しているのは、全ての油料作物について前向きの結果が達成できるということです。適切な投資、計画立案、政策、作物生産手法の改善により、油料作物エリアは生物多様性損失を軽減するための大きな機会をもたらすことができ、人権問題に取り組み、自然を回復することが可能です」と語りました。

同教授はアブラヤシを例に挙げ、この作物がアフリカの森林や村の庭で管理されている場合と、持続可能な手法を採用せずに生物多様なアジアの森林に取って代わる単一栽培で育てられている場合とでは極めて対照的であることを説明しています。同教授は「影響力を決めるのはヤシではなく、それが育てられている状況なのです」と述べました。

IUCN油料作物特別部会のMalika Virah-Sawmy共同議長は、特定の油料作物を本質的に良いか悪いかに分類するやり方に異議を唱えています。同氏はその代わりに、利害関係者に特定の作物を悪者扱いするのではなく、生産手法に焦点を当てるよう要請しています。

この報告書は幾つかの驚くべき調査結果を明らかにしています。現在、トウモロコシとココナツを栽培している地域は、絶滅危惧種の絶滅リスクを軽減する大きな機会を提供しています。それにもかかわらず、わずか4つの企業が75~95%を支配している世界の穀物取引での力の集中は、公平な農業手法への課題をもたらしています。

アブラヤシや大豆などの作物の影響は十分に文書化されている一方、ピーナツやゴマなどの他の作物については、生態系の転換や人権問題との関係があるにもかかわらず、十分な研究がなされていません。このデータの不足は、不当な2極化を避けるために情報に基づく公開議論が必要なことを明確に示しています。

急速に拡大している油市場では、持続可能な選択をするために生産の複雑さを理解することが不可欠です。この報告書は、いまだに残っている死角に対処するために一段の研究が必要であることを認識しながら、現存する知識の溝の一部を埋めることを目的としています。

Douglas Sheil教授は「何を植えるのかから、それがどのように栽培、取引、販売、消費されるかに焦点を切り替える必要があります。この報告書は、手法、影響、基準、それに何ができるかを概観するためのわれわれの最初の試みです」と述べました。

われわれの選択が世界の生態系やコミュニティーに影響を与える世界では、植物油生産の複雑さを理解することが持続可能な未来を築くために重要です。関心のある方は無料の報告書をダウンロードし、複雑な植物油の世界を熟知し、自分自身で何ができるかを学ぶべきです。

この研究はFerrero GroupのSoremartec SAとSoremartec Italia S.r.l.から独自に資金提供を受け、植物油生産の手法、影響、基準の包括的な概要を提供しています。

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