『ブルーモーメント』過去を力強く乗り越えた雲田姉妹 夏帆が口にした重要なキーワード

灯(本田翼)の行動によって多くの命が失われたという5年前の水害に関する週刊誌の記事。誰かが一度握りつぶしていたはずのそれが世に出たことで、改めてSDMの存在意義を示すために晴原(山下智久)たちは防災活動に臨むことになる。5月15日に放送された『ブルーモーメント』(フジテレビ系)第4話は、雲田(出口夏希)の過去に触れるエピソードとなった。

第1話のなかで雲田が学生だった頃、目の前で姉の真紀(石井杏奈)がつむじ風によって煽られて横転したクレーンに巻き込まれるという回想シーンがあった。そこでは真紀の生死については明示されていなかったが、結果車椅子での生活になった真紀と雲田の関係に軋轢が生じるようになったことが今回ようやく描かれている。そして防災活動としてSDMのチームが向かったのは、雲田の地元である千葉県のとある町。そこで市役所の職員として、彼らの前に真紀が現れるのである。

今回のエピソードではドラマのタイトルにもなっている“ブルーモーメント”と同じように、自然のすばらしさの産物ともいえる美しい気象現象である“天使の梯子”(=雲の隙間から太陽の光が漏れて梯子のように見える現象)や“ダブルレインボー”(=その名の通り二重にかかる虹のこと)が象徴的に使われたほか、台風に伴い竜巻を引き起こす特殊な積乱雲の“ミニスーパーセル”など、さまざまな「用語」がたびたび登場した。そのなかでも、地元テレビ局の中継に出演して竜巻の危険性を説く雲田の姿を見ている真紀に汐見(夏帆)が言う“サバイバーズ・ギルド”は本作において極めて重要なキーワードであろう。

災害によって犠牲になって苦しむ者(あるいは命を落とす者)がいる一方で、災害から生存した人もまた自分だけが無事であったことの罪悪感によって苦しむ。その目に見えない苦しみが今回こうして言語化されることになったわけだが、すでに5年前に灯を失った晴原の姿を通して、また優吾(水上恒司)であったり灯の父の園部(舘ひろし)であったり、あるいは第2話で自らが災害孤児であることを告白している丸山(仁村紗和)らを通して、ずっとこのドラマのなかに横たわり続けていたものでもある。

そして今回登場した、半年前の台風で祖父を失った少女もその苦しみを抱えており(彼女と雲田のぬいぐるみをめぐるやり取りは原作で描かれていた要素だ)、その少女をなんとか元気付けようとしている少年もまた、間接的にそれに類似した罪悪感のようなものを抱えていると見える。ひとつの災害によってもたらされた犠牲は、あらゆるかたちで悲しみや苦しみを刻み続ける。それもテレビ中継で語りかける雲田の「人生を狂わせるような災害」という言葉によって言語化され、いかに向き合うべきかの答えは防災授業のシーンで提示された「正しく恐れる」の言葉に帰結する。

また、終盤でダブルレインボーを見に行くために浮かれる子どもたちの姿を眺めながら、晴原たちSDMのメンバーは彼らを「異常気象が当たり前の世界で生きていく世代」と形容し、「力強く乗り越えていってほしい」という思いを口にする。“正しく”恐れ、“力強く”乗り越える”。受動的では脅威になりうる自然を、そのように能動的に向き合い、理解していくことで、恐怖とは表裏一体にある美しさや素晴らしさに出会うことができる。それは今回、雲田の姉妹の関係に改善がみられたように、人同士のコミュニケーションにもいえることかもしれない。
(文=久保田和馬)

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