ザ・キャビンカンパニーが日本絵本賞大賞に 夕暮れ時の風景を美しく描く【大分県】

受賞作を手にする阿部健太朗さんと原画を手にする吉岡紗希さん=由布市挾間町のアトリエ

 第29回日本絵本賞が15日、発表され、最高賞の日本絵本賞大賞に大分市在住の阿部健太朗さん(35)と吉岡紗希さん(35)夫婦による絵本作家、ザ・キャビンカンパニーの「ゆうやけにとけていく」(小学館)が選ばれた。優れた絵本に贈られる大きな賞の一つ。2人は「特に何も起こらない静かな日常を描いた作品が評価され驚いた」と喜んでいる。

 日本絵本賞は絵本芸術の普及などのため、全国学校図書館協議会が1995年から実施している。今回は2023年に刊行された作品から学校図書館向きの855点を選定。さらに30点に絞り、作家、画家、絵本研究者ら選考委員が大賞などを決めた。

 受賞作は、麦畑、夏のプール、家路に就く親子など、どこか懐かしい夕暮れ時の風景を美しい色彩で描いた。吉岡さんは「一冊の中に、一日、春夏秋冬、人の一生を表している。夕暮れの悲しい時間帯を慰め、夜が怖くないようにと願いを込めた」と話す。

 制作は友人の闘病がきっかけ。新型コロナウイルス禍で見舞うことができず、寄り添える絵本を贈りたいと思ったという。元気で空想的な作風から移行し、「地に足の着いた」表現で仕上げた。

 2人は、デビュー作「だいおういかのいかたろう」で15年の日本絵本賞の読者賞を受賞。18年に「しんごうきピコリ」で再び読者賞に選出。昨年は「がっこうにまにあわない」が大賞に次ぐ日本絵本賞に選ばれた。

 阿部さんは「この10年、絵本業界の人たちは、僕たちが、どう制作しているのか、どんな絵本を作りたいのか見てくれていた。教えられ、育てられたと思う。今までの経験がこの一冊になった」と話した。

 「ゆうやけ―」は第71回産経児童出版文化賞(5日発表)の産経新聞社賞も受賞している。

<メモ>

 2009年、共に県出身の阿部さん、吉岡さんが大分大教育福祉科学部(当時)在学中にユニットを組み活動をスタート。11年「ザ・キャビンカンパニー」名義に。これまでに絵本40冊を出版。現在は由布市挾間町の旧石城西部小をアトリエに、絵画や立体作品なども制作している。

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