【第3回WUBS】スプリングトーナメントで連覇を果たした日本体育大、初出場のWUBSで力試し

大学バスケットボールにおける毎春恒例のスプリングトーナメント(関東大学バスケットボール選手権大会)で、今年2年連続22回目の優勝を果たした日本体育大は、それと同時にWUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=世界大学バスケットボール選手権)への出場権を獲得した。同大会では、初戦の國學院大戦に105-75、続く中央大戦にも106-86と2試合連続100得点越えで勝ち進んだ後、準々決勝で拓殖大を79-69で下し、準決勝では大東文化大とのロースコアな戦いを66-54で制して決勝に。最後は専修大に対して爆発的なオフェンス力と試合巧者ぶりを見せつけ、じりじりと点差を離す展開でファイナルスコアを84-75として王座に就いた。

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フルコートを舞台に、伝統の走るバスケで戦う
スプリングトーナメントにエントリーした15人の平均身長は184.8cm。2人いる留学生センターのムトンボ ジャンピエール(206cm/4年、東山高)とコネ ボウゴウジィ ディット ハメード(207cm/2年、帝京長岡高)が突出して大柄ではあるものの、ほかのメンバーは全員190cm未満。3人いるポイントガードは、上級生キャプテンの土家拓大(170cm/4年)、月岡煕(174cm/3年)、大江悠斗(170cm/2年)とも170cm台で、高さも生かせるがどちらかと言えば平面的な展開が特徴だ。

藤田将弘監督は、チームの個性とメンバー選出の意図を以下のように語る。

「舞台がフルコートだとしたら、身長はあまり関係ありません。3Pのパーセントを上げていけば、全体的に大きなチームが相手でも戦えます。それを表現したくて今のメンバー構成になっています」

日本体育大の卒業生でもある藤田監督は昭和から続く同校のスタイルを変えていない。しかし実は、現在の日本代表の戦術にも通じる考え方だ。強度の強いディフェンスでボールを奪い、トランジションと3Pショットで得点を重ねていく。

昨年、21年ぶりにスプリングトーナメントを制し、今年連覇を果たした日本体育大は、間違いなく古豪復活の機運にある。しかしここで満足できるはずはないだろう。今夏、8月10日(土)から12日(祝・月)にかけて国立代々木競技場第二体育館で開催される第3回WUBSは、その後のオータムリーグやインカレでのさらなる成功に向け弾みをつける格好の舞台だ。

土家も「海外の選手とレベルの高いところでプレーできることは、自分たちの成長につながります」と話し、キャプテンとしてこの大会に向け意欲を燃やしている。「自分たちがやってきたことをぶつけて、通用すること、しないことに気付けるチャンスとして期待しています。日本の大学界の代表として出させていただくので、恥ずかしくないゲームをできるようにしっかり準備に取り組んで、自分たちのバスケを出せるようにしたいです」

ライオンズをキャプテンとして率いる土家拓大(写真/©月刊バスケットボール)

ワールドクラスの存在感、小澤飛悠
日本体育大のロスターは、スピードを生かしたプレーメイクに長けたガード陣、しぶとく勝負強いウイング陣、高さとパワーを併せ持つセンター陣で構成されている。

注目すべきタレントは多々在籍しているが、U19日本代表の一員としてFIBAワールドカップ2023で男子日本代表の歴代最高成績となるベスト8進出に貢献したスモールフォワードの小澤飛悠(189cm/2年)にまずは触れるべきか。

小澤はそのU19ワールドカップで8試合に出場し、平均4.7得点、3P成功率32.1%(28本中9本成功)、1.6リバウンドのアベレージを残した。今年5月17日(金)から19日(日)にかけて国立代々木競技場第二体育館で行われる第47回李相佰盃日・韓大学代表バスケットボール競技大会でも、昨年に続き2年連続で学生選抜に選ばれている。日本体育大での実績としては、昨年の新人戦とオータムリーグで優秀選手賞に輝いた後、今年のスプリングトーナメントでは優秀選手賞に加えアシスト王(15本)も獲得した。専修大との決勝では16得点、2リバウンドに5つのアシストを記録。3Pショットも5本中2本を沈めた活躍には、ワールドクラスのタレントの存在感があった。

FIBA U19ワールドカップ2023での小澤飛悠の勇姿(写真/©FIBA.U19WC2023)

ウイングでは、昨年のスプリングトーナメントで優秀選手賞を受賞した大森尊之(178cm/4年)にも注目したい。大森はその前年まではロスター外だったが、学生コーチたちとの地道なワークアウトの積み重ねでベンチ入りを果たし、レギュラーの座を勝ち取った努力家だ。今年のスプリングトーナメント決勝でも、序盤にチームを波に乗せる6連続得点など16得点、2リバウンド、3アシスト、1ブロックのオールラウンドな活躍を披露した。

小柄な3人のガード陣で最も長い時間コートに立っているのは、昨年のスプリングトーナメントでアシスト王(23本)となった月岡だ。今年のスプリングトーナメントでは、大東文化大との準決勝で10得点、10リバウンド、4アシスト、2スティールと攻守に躍動。専修大との決勝ではチーム最長の27分6秒のプレーで試合の流れをしっかりコントロールして勝利を引き寄せた。

主軸ビッグマンのジャンピエールはスプリングトーナメントで2年連続MVP。専修大との決勝戦では、後半の豪快なスラムダンクを含む13得点にチームハイの9リバウンド、ゲームハイの2ブロックと大いに力を発揮した。もう一人のビッグマンであるコネも、この試合でゲームハイとなる19得点を記録している。コネは昨年の新人戦で得点王とリバウンド王(89得点、73リバウンド)に輝き優秀選手賞にも選ばれたが、今年のスプリングトーナメントはその土台からの成長を感じさせる活躍だった。

日本体育大のメンバーの中では、月岡と小澤が第2回WUBSに学生選抜の一員として出場していた。昨年の「出番」はDay0として行われたアテネオ・デ・マニラ大とのエキジビションのみだったが、今年は母校の看板を背負っての初出場。彼らの活躍にも大いに期待したいところだ。

☆スプリングトーナメント

正式名称は関東大学バスケットボール選手権大会。一般社団法人関東学生バスケットボール連盟(KCBF)が毎年5月に開催しているトーナメントで、第1回大会の開催は1950年。以来今年で75回目を数える伝統の大会だ。歴代チャンピオンは19大学あり、最多優勝は日体大の22回。ほかに10回以上優勝しているのは日本大(11回)のみだ。

加盟大学ならば1部から5部まで全チーム参加することができる一発勝負。しかも各大学が新チームで臨む年度初めのビッグイベントという大会の特徴から、ときにはわかりやすい形で下克上が起きるのもこのスプリングトーナメントの面白みだ。今年の大会こそベスト8をすべて1部のチームが占めたが、昨年の大会では、2022年のオータムリーグ(第98回関東大学バスケットボールリーグ戦)で2部の7位だった関東学院大学が、1部の拓殖大と神奈川大を破ってベスト8入りする快進撃を見せ、話題となった。

今年のスプリングトーナメントは日本体育大が連覇を達成した(写真はMVPに輝いたムトンボ ジャンピエール/©月刊バスケットボール)

☆日本体育大ライオンズとは

日本体育大は「ニッタイ」、「ニッタイダイ」といった呼称で広く日本全国に知られるスポーツの名門だ。開学の礎は、1891年(明治24年)に日高藤吉郎が東京牛込区に創立した「体育会」。戦後の1949年に新制大学としての認可を受け現在の名称となった。

在学生や卒業生に様々な競技の世界的トップアスリートがいることが、認知度の高さに一役買っているのは間違いない。しかしそれだけでなく、幼児体育から高齢者の健康維持まで、様々な場面で知見を生かして活躍する人材を輩出している。また、スポーツ科学分野における数々の研究成果などを通じて、日本の社会における存在意義も年々高まっている。

男子バスケットボール部は、全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)での優勝回数が大会史上最多の14回。スプリングトーナメントでも22回の王座獲得は史上最多だ。

名将清水義明監督(2021年逝去、享年79)が率いていた当時は「グリズリー(Glizzly)」というニックネームで親しまれた。これは指揮官の出身地(北海道)と大柄な風貌にちなんだものと言われている。現在は、2006年以来大学のシンボルマスコットとなっている「天空の月に向かって咆哮する獅子(The Triumphant Lion)」にあやかりライオンズをニックネームとしている。

昨年ロゴやチームカラーなどのブランド・アイデンティティを一新したタイミングでスプリングトーナメントを21年ぶりに制し、今年の大会で1989年から92年にかけての4連覇以来実に30年ぶりとなる連覇達成。それは奇しくも、日本のスポーツ界を新たな時代に導こうという大学とチームの決意を象徴している。

日本体育大で新機軸のチーム作りを進める藤田正弘監督。日本のスポーツ界をリードする大学の研究者たる自覚の中で、選手たちの自主性・主体性を重んじた育成を前進させようとしていることが、選手たちの伸び伸びとしたプレーぶりから伝わってくる(写真/©月刊バスケットボール)


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