堀田真由「格好いい自立した女性役は未知であり、新たな挑戦でもあった」――「アンチヒーロー」インタビュー

TBS系では長谷川博己が主演を務める日曜劇場「アンチヒーロー」が放送中。長谷川が演じるのは、「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士・明墨正樹。「弁護士ドラマ」という枠組みを超え、視聴者に“正義とは果たして何なのか?”“世の中の悪とされていることは、本当に悪いことなのか?”を問いかける、前代未聞の逆転パラドックスエンターテインメントだ。

第5話では、明墨の事務所に所属するクールな弁護士・紫ノ宮飛鳥(堀田真由)が、千葉県警刑事部長の父・倉田功(藤木直人)に過去の真相について尋ね、明墨の本当の狙いが明らかになり始めた。愛する父か、自身の正義かの選択を迫られる展開も見どころに。そんな紫ノ宮を演じる堀田さんに、本作に懸ける思いや魅力、今後の展開について伺った。

――紫ノ宮は感情を抑えなければいけない役柄だと思いますが、前半の展開を振り返っていかがでしょうか?

「近年、笑顔の印象がある役や心(しん)の通った力強い役を演じることはありましたが、社会人の役で格好いい自立した女性役は演じてこなかったので、新たな挑戦でもありました。第4話で彼女がこの事務所に来た理由がついに明かされて、ここまで撮り終えた時は、役として報われた感覚になりました。ただ、父の過去が分かってきた上で、紫ノ宮の、お父さんと娘、弁護士としての向き合い方は今後も揺れ動いていくので、ぜひ楽しみに見ていただきたいです」

――本作でご自身にとって今までにない挑戦だなと感じている部分はありますか?

「視聴者の皆さんからもすごく反響があったバイクを乗るシーンは、もともと免許は持っていましたが、お芝居の中で挑戦したことはなかったので、そういった自分の持っているものを生かせるチャンスをくださってすごくうれしいです。最初、私が免許を持っていることは皆さんご存じではなく、お話をいただいた時に乗れることを伝えたら『それだったらもうやるしかない!』という経緯でした。最初のバイクのシーンが私のクランクイン日でドキドキはしていましたが、無事撮影ができて、皆さんからも反響をたくさんいただけてうれしいです」

――今作で堀田さんはNGが全然ないとお聞きしました。役作りで意識していることはありますか?

「私もたくさんNGを出してはいますが、自分がこの作品において何ができるんだろうと考えた時に、紫ノ宮という役は見えていないところでたくさん努力をしていて、完璧主義な人物だと思うので、普段の自分も境目なく完璧にやっていきたいなと思って挑んでいます。いろいろな作品に出て毎回違う役を演じる難しさはありますが、自分の中でチャレンジングな部分をどんどん課していく方が楽しいなと。今回、紫ノ宮という役をいただいて、完璧な彼女でいなければいけないというところから、できるだけ自分の中でも紫ノ宮と同居していけるように、セリフは何度も練習して間違えないようにしています」

――印象的だったシーンはありますか?

「第4話の赤峰柊斗くん(北村匠海)とラーメンを食べて替え玉をするシーンは、替え玉する人は入れる時に少し笑顔になったりするそうなので、紫ノ宮の普段とは違うギャップが出ていて良かったかなと思います。また、ラーメンの湯気と横顔のアングルは、その時はまだ父のことが明かされていない状況だったので、心のモヤモヤした霧のかかった感じと、湯気がすごくリンクしていて印象的でした」

お芝居は人と人とのキャッチボールだなと

――長谷川さんの芝居を間近で見ていかがですか?

「8年前のまだ私が10代だった頃にご一緒させていただいて、その作品では同じシーンは少なかったのですが、撮影がない空き時間もたくさん話しかけてくださって、それを今でも覚えています。普段の長谷川さんはすごく柔らかくて、チャーミングな方なのですが、役のスイッチが入ると妥協が絶対なく、どのシーンも納得がいくまでやられています。長谷川さんにしかできない明墨という役は本当に迫力がありますし、法廷は特に長いシーンが多いので、自分と常に戦っている姿を見せてくださり、私もそこに食らいついていかなければといつも感じています」

――北村さん演じる赤峰とのバディ感が見えてきたのも印象的です。

「第4話で父の存在を赤峰くんも気付いてから、紫ノ宮が過去のことをオフィスで打ち明けるシーンは、気持ちがどんどん落ちてしまう中で、北村さんが『こういうお芝居の時は受け取る側の人がすごく重要だから、僕が頑張ります』とさらっとおっしゃってくださって、その時にお芝居は人と人とのキャッチボールだなとあらためて感じました。また、赤峰くんに今までは強い態度で当たっていましたが、きっと最初から同じ線の上にいて、それにただ紫ノ宮は気付いていなく…。最終回に向けて2人が明墨法律事務所でどのように成長していくかというよりかは、この事務所の一員としてどう動いていくのかが見どころになってくると思います。赤峰くんとはバディでもあり、2人のシーンがかなり増えてくるので、そこも楽しみに見ていただけたらうれしいです」

――明墨法律事務所のメンバーの撮影現場での様子はいかがですか?

「専門用語など多く大変なシーンがありますが、年齢もバラバラの中でいろいろなお話をしながら和気あいあいとした穏やかな雰囲気で進んでいます。林(泰文)さんや大島(優子)さんの包容力がすごいので、法廷での撮影の時は、隣にいることが多い北村さんと『事務所に帰ってあの2人に会いたいね』と話しています」

――父・倉田役の藤木さんと自宅で食事をするシーンは、今までとは違う2人の演技にも引き込まれました。

「初めてお会いしたのは、第5話の久々に実家に帰って父とお惣菜を食べるシーンでした。紫ノ宮も父と会っていない時間がある中で、コミュニケーションを取りすぎていたら出せなかった空気感もあったと思うので、そこが初めましてで良かったのかなと思います。劇中ではバチバチですが、普段の藤木さんはプライベートなお話をしてくださったりと、とても優しい方です」

一度立ち止まって、自分の人生に責任を持って生きていくことが私自身の正義

――以前、飯田和孝プロデューサーに取材をさせていただき、紫ノ宮役は普段やらなそうな人に演じてもらいたく、そこに堀田さんが浮かんだとおっしゃっていました。

「やらなさそうということは未知であり、ある意味、挑戦的だったと思います。そこを託してくださったことがすごくうれしいです」

――本作は、正義とは何なのか考えさせられる内容ですが、堀田さんが思う正義とは?

「“正義”というのはとても難しい言葉だと感じています。悪でもその中には正義があったり、正義という言葉を掲げれば成立してしまう怖さもあるなと。以前読んだ本に、正義の“正”という字は、漢数字の一に止まると書いて“正”と書くと記載されていました。本当にその通りで、いろいろな物事に対して、何も考えずにそれが正しいと思い突き進んでしまったら誰かを傷つけてしまうかもしれない。一度立ち止まって自分の人生に責任を持って生きていくことが私自身の正義だなと感じています」

――最後に、今後の見どころを教えてください。

「第5話までで紫ノ宮が何を目的として動いていたのかが徐々に分かってきました。今後は、赤峰くんと紫ノ宮の2人がこの物語の本筋をどう捉えていくかがすごく見どころになってきます。最終的に12年前の事件を追っていく中で、明墨先生がこの2人をなぜこの事務所に入れたのかにも注目してもらうと、すごく楽しんでいただけると思います。1秒たりとも見逃さず見ていただきたいです」

【プロフィール】

__堀田真由(ほった まゆ)
__1998年4月2日生まれ。滋賀県出身。主な出演作にNHK連続テレビ小説「わろてんか」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、「大奥」(NHK総合)、「たとえあなたを忘れても」(テレビ朝日系)、「恋はつづくよどこまでも」「危険なビーナス」(ともにTBS系)、「3年A組\-今から皆さんは、人質です\-」(日本テレビ系)、「風間公親\-教場0\-」(フジテレビ系)、映画「ハニーレモンソーダ」(2021年)、「バカ塗りの娘」「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」(ともに23年)、「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL 」(24年)など。

【番組情報】

「アンチヒーロー」
TBS系
日曜 午後9:00~9:54

取材・文/N・E(TBS担当)

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