相次ぐ環境活動家のコート乱入に女子1位のシフィオンテクが持論「警備体制を整えること。それだけだわ」<SMASH>

現在開催中の男女テニスツアー「イタリア国際」(5月7日~19日/イタリア・ローマ)で女子シングルスベスト4に進出した世界ランク1位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)。準々決勝勝利後の記者会見では、環境活動家の乱入により今大会の数試合が中断された一件について言及し、「セキュリティを強化すべき」と主張した。

事件が起きたのは現地13日に実施されたマディソン・キーズ(アメリカ/16位)とソラーナ・シルステア(ルーマニア/32位)による女子シングルス4回戦でのことだった。

キーズが6-2、3-1とリードした場面で突如オレンジのベストを着用した環境活動家2人がコートに乱入。紙吹雪や液体をコート上にまき散らし、試合が一時中断される事態となった。その後彼らは駆け付けた警備員に連行され無事プレーは再開。最終的にキーズが6-2、6-1でシルステアを破り、ベスト8進出を決めた。

乱入事件はこれだけにとどまらなかった。同時刻に行なわれたエドゥアール・ロジェ-バセラン/サンティアゴ・ゴンザレス(フランス/メキシコ)とマテ・パビッチ/マルセロ・アレバロ(クロアチア/エルサルバドル)による男子ダブルス2回戦でも同様のハプニングが発生。こちらも程なくして試合は再開され、パビッチ/アレバロが6-1、6-2で勝利した。

海外メディア『UBITENNIS』によると、問題の活動家は気候変動の抑制を訴える環境保護団体「ラスト・ジェネレーション」(Last Generation)のメンバーで、彼らは連行後にSNSに投稿した動画で「気候と社会の危機がここにあり、できるだけ早く介入が必要であることを繰り返し主張していきたい」との声明を出したという。
テニスのツアー大会ではこうした環境活動家による乱入事件が後を絶たない。昨年もウインブルドンと全米オープン、シティ・オープンなどで抗議デモが行なわれ、試合の進行が妨げられたのは記憶に新しい。

14日の準々決勝でキーズに6-1、6-3で勝利したシフィオンテクは、会見で相次ぐ試合中の乱入に言及。過去に女子元世界1位のモニカ・セレス(アメリカ/50歳)がチェンジエンドで暴漢に背中を刺された事例にも触れ、自身の考えをこう口にした。

「最善の方法は、セキュリティを強化することだと思う。ただ私がコートにいる時に何らかの対処をしなければならないような状況に遭遇したことがないから、警備員がどのように機能するのかはよくわからない。最近の人々は注目を集めたいと思っていて、そのためには何でもする。それが今の世界の仕組みなのだと思う」

「セレスに何が起こったのかを見た時、私は数週間ほど、時折そのことについて考えた。そこでやるべきことは、そんな事態が起こった場合に備えて、WTA(女子テニス協会)が警備体制を整えて対応すること。それだけだわ」

現状各大会のセキュリティが甘いのはシフィオンテクの指摘通りである。セレスの悲劇を繰り返さないためにも、テニス界全体で早急に対応策を講じるべきだろう。

文●中村光佑

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