初登場2位『猿の惑星/キングダム』 期待値を超えた成功の秘密は?

5月第2週の動員ランキングは、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』が週末3日間で動員36万2000人、興収5億3400万円をあげて5週連続1位。公開から31日間の累計成績は動員898万2600人、興収128億7600万円。公開5週目に入ってからも週末興収5億円以上をキープするという圧倒的な強さで、前作『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の最終興収138.8億円を超えるのも時間の問題だ。

初登場で2位にランクインしたのはウェス・ボール監督の『猿の惑星/キングダム』。オープニング3日間の動員18万2000人、興収2億7100万円。この成績は直近の外国映画の同期間の興収と比べると、『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の58%、『オッペンハイマー』の72%、『デューン 砂の惑星PART2』の138%。なかなか成否の判断が難しい数字ではあるが、映画興行において邦高洋低の傾向がますます高まっている昨今においては、健闘したと言っていい結果なのではないか。

というのも、2011年にルパート・ワイアット監督の『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』によってリブートされた現行『猿の惑星』フランチャイズは、1作目こそ最終興収24.2億円とヒットしたものの、2014年に公開されたマット・リーヴス監督による2作目『猿の惑星:新世紀(ライジング)』の最終興収は14.2億円、2017年に公開されたマット・リーヴス監督が続投した3作目『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』の最終興収は7.4億円と、シリーズを追うごとに興収が大幅に落ちていった(世界興収では2作目の『猿の惑星:新世紀(ライジング)』が最もヒットした)。そういう意味では、今回、前作『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』から約300年の年月が経過した地球が舞台になっているとはいえ、設定としては正式な続編であるにもかかわらず極力「続編」のイメージを排したプロモーションプランも功を奏したと言えるだろう。

そんなプロモーションプランと関係あるかどうかは定かではないが、『猿の惑星/キングダム』は20世紀スタジオ作品としては珍しく海外でも日本でも公開直前までマスコミ向けの試写がおこなわれなかった。マーベル作品など一部のネタバレ厳禁な作品を除いて、通常、直前まで試写がおこなわれない作品は、スタジオが作品の出来に自信がないのではないかと穿った見方をついしてしまうのだが、『猿の惑星/キングダム』は批評面においても概ね好評。興行的にも批評的にも失敗に終わった『メイズランナー』3部作以来、長編映画を撮れてなかったウェス・ボール監督にとっては起死回生の一作となった。

ちなみに今回の『猿の惑星/キングダム』は20世紀フォックスがディズニーの傘下に入ってから初の『猿の惑星』フランチャイズ作品。ディズニー配給の実写映画として今夏はもう一作、『デッドプール』の新作『デッドプール&ウルヴァリン』の公開も控えているが、こちらも元々は20世紀フォックスのフランチャイズ。今やディズニーの実写映画部門は、20世紀スタジオ作品によって支えられている。

(文=宇野維正)

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