茨城・牛久入管死、再び賠償命令 東京高裁 国の責任認める

判決後に記者会見に臨んだ遺族側弁護士ら=東京都内

茨城県牛久市の東日本入国管理センターで2014年、収容中のカメルーン国籍の男性=当時(43)=が亡くなったのは入管側の対応に不備があったためだとして、遺族が国に1000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が16日、東京高裁であった。増田稔裁判長は、入管側の注意義務違反を認めた一審の水戸地裁判決を支持し、165万円の支払いを命じた。遺族側代理人によると、入管施設での死亡を巡る訴訟で、国の責任を認める高裁判決は初めてという。

判決によると、男性は13年10月、成田空港で入国を拒否され、翌11月に同センターに収容。糖尿病などを患い、14年3月27日、24時間容体を監視できる休養室へ移された。同29日に「アイムダイイング(死にそうだ)」などと叫び、胸の痛みを訴えた。職員は床に落ちた男性をベッドに戻したが、男性は翌30日朝に心肺停止状態で見つかるまで放置された。

判決理由で増田裁判長は、男性が収容中で自由に診療を受けられない立場にあり、入管職員には適切な医療を受けさせる責務があったと指摘。遅くとも死亡前夜に胸の痛みを訴えたころに、救急車の出動を要請すべきだったとし、約12時間後まで救急搬送を要請しなかった対応について、「注意義務違反の程度は軽いものとはいえない」と述べた。一方、男性は急速な容体悪化で「救命が困難な状態にあった」として、救急搬送していれば死亡しなかったとは「認められない」とした。

判決後、遺族の代理人弁護士は上告について、「カメルーンにいる遺族と相談して決める」とコメント。出入国在留管理庁は「判決内容を精査し、適切に対応したい」としている。

■判決は「一歩前進」 遺族側弁護団強調

判決後に開かれた記者会見で、遺族側弁護団の団長を務める児玉晃一弁護士は、「高裁で注意義務違反を維持できたのは一歩前進」と強調した。救急搬送しなかったことと死亡との因果関係が認められなかった点については「残念だ」と述べた。

会見では、死亡したカメルーン国籍の男性が悲鳴を上げ、うめき苦しむ姿が映った監視カメラの映像を改めて公開。児玉弁護士は「男性はたった1人で部屋にいた。家族も友人もそばにいない。助けられたのは入管職員だけだった」と指摘し、入管側の過失を訴えた。

入管に対しては「きちんと医療を施さなければならないという意識が薄い」と批判。同訴訟は「(入管の)医療態勢について、問題提起になる裁判だ」と話した。

© 株式会社茨城新聞社