これで下痢には悩まない(4)「SIBO」は下痢と関係があって改善につながるのか

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下痢に関連して近年、新たに登場した概念に「SIBO」(シーボ=小腸内細菌異常増殖症)がある。多くの人を悩ませてきた従来の下痢の解決につながるのだろうか。日本消化器病学会専門医で「東長崎駅前内科クリニック」(東京・豊島区)の吉良文孝院長はこう話す。

「SIBOとは、小腸の中の細菌のバランスが崩れ、本来はそんなにたくさんいないであろう菌が増えてガスが出る、という概念です。本来は大腸でお腹がグルグル鳴りますが、それが小腸でも起きてしまい、腹痛、下痢、お腹が張るなどの症状が出るというものです。診断がかなり難しい上に、日本では保険が利きませんし、明確な治療法も確立していません」

そもそも、まだ研究が始まったばかりで、わからないことが多いという。ネット上などでよく目にするのは、なんとなく飛びつきやすくてキャッチーだからではないか、と吉良院長は言う。自費診療を行う医師やサプリメント会社がビジネスチャンスと捉え、広まっているという側面もあるだろう。また、何かにすがりつきたい人が「私はSIBOかも……」と考えることで気持ちを落ち着かせるというケースもあるのでは、とも指摘する。

いずれにしても今のところは、SIBOが下痢に悩む人に対して、なんらかの解決策をもたらすことはなさそうだ。それでも何かに頼りたい人は吉良院長のこの言葉が役に立つはずだ。

「下痢が続いたからといって、死んでしまうということはありません。ただちょっと不快なだけで、まったく医学的には問題ないんです。個人の反応の仕方であって、深刻な病気ではありませんからね。『下痢をしたな』とか『原因はよくわからないけど下痢をするなあ』ぐらいに思えればいいんですよ」

これを知って胸のつかえが取れる人もいるのではないだろうか。日常生活がままならず本当に困っているという時のみ、専門医にかかって薬を処方してもらえばいい。下痢に関しては「気にしないこと」が最良の薬なのだ。(おわり)

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