能登の被災地で高齢者らの生活支援 義肢装具士で看護師の近藤さん(熊本市) 段差が多い避難所「環境整備の体制が必要」

石川県能登町の避難所で、寄付されたつえを高齢者に配る近藤友紀子さん(手前右)=3月(近藤さん提供)

 義肢装具士で看護師の近藤友紀子さん(41)=熊本市中央区=は1月下旬から約2カ月間、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県能登町の避難所で高齢者らの生活支援に当たった。学校などに開設される避難所は段差が多く、入浴支援も高齢者らを想定していないと指摘。「災害発生後、避難所での生活環境をいち早く整えられる体制が必要」と訴える。

 近藤さんは熊本総合リハビリテーション学院(熊本市東区)の義肢装具学科を2018年に卒業。横浜市の義肢製作会社勤務を経て、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊としてインドネシアへの派遣準備中に能登半島地震が起きた。JICAの関連団体「青年海外協力協会」のボランティアとして1月末、能登町に入った。
 
 現地では中学校体育館などの避難所を巡回。避難者は大半が高齢者で、避難所は床がゆがみ階段が多いなど「高齢者は生活しにくい環境」だったという。

 日本義肢装具士協会などを通じ、福祉用品の支援を要請。体育館入り口の階段などに手すりを付け、骨折した避難者のコルセットなどの装具調整などにも当たった。また自衛隊が用意した浴槽は深く、縁をまたげずに「自分は足が悪いから風呂には入らない」という避難者もおり、1人用の浅い浴槽や踏み台を設置し入浴を支援した。

能登地方の地震被害や災害ボランティア活動を写した写真とともに、現地の状況について説明する近藤友紀子さん=4月11日、熊本市中央区の熊日本社(小野宏明)

 近藤さんは幼少期に大阪で阪神淡路大震災を経験。専門学校時代には熊本地震にも遭ったが「被災から1カ月たっても避難所で雑魚寝の状況。せめて2週間以内には段ボールベッドなどを設置できるように準備しなければいけない」と避難生活の不備を指摘する。

 被災した自宅に生活用品を置いたままの高齢者も多く、つえや歩行カートを配布。インドネシアやベトナムの技能実習生も探し、支援物資を届けるなどした。4月中旬からインドネシアでの活動に入った近藤さんは「復興にはまだ時間がかかる。機会があれば再び訪れたい」と話す。(丸山伸太郎)

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