「夏山シーズン」本格化まえの「足ならし」登山に! 標高1,900m超・歩行5時間「水の山」

笠取山山頂付近からの景色。富士山を眺めながら食べる山ご飯は格別の一言(撮影:伏見みう)

山梨県と埼玉県の境にある奥秩父の山「笠取山(かさとりやま・標高1,953m)」は、多摩川の源泉や多摩川・荒川・富士川の分水嶺(ぶんすいれい)もあり、「水の山」とも称されている。

山頂付近からは富士山や南アルプスの絶景が拝め、川のせせらぎを聞きながら5時間程度で往復できるほか、凍結や積雪の心配が少ないため、本格的な夏の登山シーズン前の足ならしにおすすめの山だ。

都心から登山口まで車で2時間40分。比較的アクセスがよいので、日帰り登山にオススメの笠取山登山のルートとその魅力を紹介しよう。

■作場平口駐車場から登山スタート

笠取山の玄関口は中央自動車道・勝沼ICから約60分の場所にある作場平口(さくばだいらぐち)駐車場。第一・第二駐車場合わせて約30台程度無料で停められるスペースがあり、第一駐車場にはバイオトイレが備えられている。携帯電話が圏外なのでオンラインの登山届を事前に提出し、地図アプリなどはオフラインで使えるようにしておこう。駐車場に着いたらトイレを済ませて、いざ出発。

作場平口駐車場からはしばらくカラマツの林の中を歩く。足元は柔らかい土で歩きやすく、勾配もなだらかなのでウォーミングアップにちょうどよい。

途中、沢を縫うように橋がいくつか架けられている。この沢は多摩川の源流であり、透き通った水とそのせせらぎを楽しみながら歩を進めよう。

30分ほど歩くと、一休坂分岐(いっきゅうざかぶんき)にたどり着く。ここからはヤブ沢峠経由、もしくは一休坂を経由して笠取小屋を目指す。どちらのコースを選んでもいいが、ヤブ沢峠経由の方が勾配がなだらかでルートもわかりやすいので、筆者はヤブ沢峠経由を選択。

分岐からはしばらく勾配の緩い坂を登り、ヤブ沢峠からはよく整備された広い道を進む。一休坂分岐から1時間20分ほどで標高1,776m地点にある笠取小屋にたどり着く。小屋にはトイレやベンチが整備されているので、ここでしっかり休憩して最後の急登に備えよう。

笠取小屋で休憩したのち、開けた道を歩いて山頂へ。10分ほど歩くと笠取山名物の「心臓破りの急登」が見えてくる。山頂まで約40分、最後の急登だ。傾斜がきつく疲れるので、時おり立ち止まって休憩しながら進もう。足を滑らせないようにゆっくりとしっかり踏みしめながら、確実に自分のペースで登っていこう。

心臓破りの急登を登っている途中、振り返ると南アルプスが見える。筆者は少々運動不足で急登がつらかったため、こまめに休憩をとり南アルプスの山容を眺めながら山頂にたどり着いた。

急登を登り切ると、開けた岩場にたどり着く。山頂は展望がないので、記念撮影するハイカーが多いポイントだ。筆者もここから富士山を眺めながら、急登を登り切った達成感に浸っていた。実際の山頂はここから茂みの中を20分ほど歩いた先なので、山頂を目指す人はそこまで歩こう。

■足を延ばして「水の山」ならではのスポットへ

笠取山は多摩川の源泉「水干(みずひ)」や多摩川・富士川・荒川の分水嶺があり「水の山」と称される。水の山ならではのスポットに立ち寄るのもおすすめだ。

まず、「小さな分水嶺」と呼ばれるポイントが笠取小屋から山頂への途中、心臓破りの急登の間の小さなピークにある。山頂に続く道から少し逸れるだけなので、ぜひ見ておきたい。

分水嶺の東側に降った雨は荒川に、西側に降った雨は富士川に、南側に降った雨は多摩川に流れる。この山の小さな峰を起点に雨が3つの水系に分かれるのはなんとも感慨深い。

山頂から笠取小屋に戻る際、急登を下って登りとは別の整備された道をトラバースすると、多摩川の最初の一滴が染み出す「水干(みずひ)」にたどり着く。水干とは「沢の行き止まり」で、川の源流を意味する。ここから多摩川が生まれ東京湾まで約138kmの長い水の旅が始まるとのこと。

水干を見たあとは来た道を戻り、笠取小屋へ。ピストンするのと15分程度しかコースタイムが変わらず、道も緩やかなので余裕があれば、ぜひ足を延ばしてみてほしい。

■都心からアクセス良好&絶景を拝める笠取山は本格的な登山シーズン前の足慣らしにピッタリ

笠取山は都心からアクセスが良好で初心者でも日帰り登山に挑戦できる穴場スポット。絶景やここでしか見られない水の山の所以を眺められるので、本格的な登山シーズン前の足慣らしにピッタリだろう。

とはいえコースタイムが休憩なしで5時間程度かかるので、経験者との同行や事前の体調管理、装備品など、しっかり準備をしたうえで登山に挑んでほしい。

【アクセス】
作場平口駐車場
中央自動車道・勝沼ICから約60分

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