『マッドマックス:フュリオサ』カンヌ映画祭で大喝采 約7分のスタンディングオベーション

5月31日に公開される映画『マッドマックス:フュリオサ』が現地時間5月15日、第77回カンヌ国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門にてワールドプレミアとして上映された。

本作は、2015年に公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に続く、『マッドマックス』サーガ最新作。シャーリーズ・セロンが演じた最強の戦士フュリオサの怒りの“原点”を、アニャ・テイラー=ジョイと、『マイティ・ソー』シリーズのクリス・ヘムズワースの共演で描く。

本作同様、前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』も2015年のカンヌ国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門に出品されており、『マッドマックス』サーガとしては実に9年ぶりのカンヌへの凱旋となった。『怒りのデス・ロード』の際は、監督を務めたジョージ・ミラーと共に、主演のトム・ハーディやフュリオサ役のシャーリーズ・セロンらが登壇した。今回はその意思を受け継ぎ、若きフュリオサを演じたテイラー=ジョイと、宿敵ディメンタス役のヘムズワース、フュリオサのメンターとなる警護隊長ジャックを演じたトム・バーク、フュリオサの少女時代を演じたアリーラ・ブラウン、ヘムズワースの妻であり本作にも出演しているエルサ・パタキーが、ミラー監督と共にレッドカーペットに登場した。

本編の上映が終了すると、約7分間ものスタンディングオベーションが。会場は割れんばかりの拍手で包まれ、テイラー=ジョイは満面の笑みを浮かべながらミラー監督を称え、ヘムズワースも監督の肩を抱き寄せ、カンヌ映画祭での大絶賛をチーム全員で称え合う一幕を見せた。

翌5月16日(現地時間)に行われた記者会見には、テイラー=ジョイ、ヘムズワース、バーク、プロデューサーのダグ・ミッチェル、ミラー監督が参加し、会場は満員に。

ワールドプレミア上映について、テイラー=ジョイは「観客と一緒に観るのは本当に素晴らしい経験だった。私たちはカメラの後ろのトリックを知りすぎているけれど、映画のペースや、サウンドデザインや、すべての要素が素晴らしいと思えた。それはまたジョージの素晴らしさでもある。スタッフのなかにはすでに引退していたけれどジョージのために戻ってきた人もいた。本当に誇りに思えた」とコメント。

ヘムズワースは「自分にとっては初めてのカンヌで、素晴らしい体験ができた。オーストラリア人として『マッドマックス』シリーズは特別だ。自分の子供時代を思い出すようなノスタルジーがあった。ここに連れてきてくれてありがとうとジョージに言いたい」、バークは「昨夜の経験は本当に素晴らしかった。震えた。電気が走ったね」と明かした。

続けて、プロデューサーのミッチェルは「何年もジョージと本作のためにやってきたけれど、誇りに思う。ジョージとは43年前から一緒に仕事しているが、300人のクルーがいたけれど、ジョージがもっとも仕事をしていて、みんなジョージを慕っていた。本作は規模も大きく、とてもハードで、8カ月、みんな働きっぱなし。本当にマッシブな映画。ワーナーはリスクをおかしてくれた。だからみんなにありがとうと言いたい」と舞台裏を明かすとともに、スタッフへの感謝を述べた。

また長年人気を保てた理由を問われたミラー監督は、「わからないけど、運が良かったことはたしかだ。ストーリーのアレゴリーの面もあったかも。フランスでは1作目の『マッドマックス』について、車輪のついた西部劇と評された。日本では『マッドマックス』は侍だと言われた。黒澤明の映画のように、彼らの伝統にフィットしたんだろう。素晴らしいよ」と明かした。

本作でカーアクションやバイクアクションを披露しているテイラー=ジョイは、アクションシーンの撮影について、「スタントチームは素晴らしかった。できるだけ自分でやるようにしたけれど、いつもサポートしてくれて。その一方で、決してこれをやらなければならない、といった圧力は感じなかった。みんな私を信じてくれて、はげましてくれて、本当にすばらしいチームだった」と語った。

『マイティ・ソー』シリーズのソー役としても知られるヘムズワースが悪役を演じることでも注目を浴びる本作だが、ヘムズワースは自身が演じたディメンタス将軍について、「このキャラクターの興味深い点は多くの面があること。雄々しい一方で、ジョージとも話して、大事なのはヒューマニティでもある、彼の脆い面も必要と。彼は過去に非常に苦しんでいて、それが弁解になるわけじゃないけれど、生き残るためにああなった。それを理解するのは大事だった。彼はとても大きなエゴに満ちた人間。他のマッドマックスの脚本とも異なり、彼の人間性が伝わることを願った。暴力的でもね。予想不可能なキャラだけど。作り上げる上で多くの自由があって、創造性があって、とても素晴らしい経験だった。ジョージに感謝しているよ」と、ミラー監督への感謝を述べた。

時代ともに変化するアクション映画のイメージについて、ミラー監督は「映画の言語は100年以上になるけれど、最初からすべてアクションムービーとも言える。映画とはアクション。自分にとってだからピュアな映画というのはビジュアル的なものだ。映画ではなんでもできる。映画しか経験できないことがある」と自身の考えを語る。続けて自身の映画つくりへの考え方として「自分にとって大事なことは2つ。1つ目はいつも同じことを繰り返していたら、自分自身興味はなくなる。2つ目は、自分自身『マッドマックス』がこんなに続くとは思っていなかった。自分自身クレイジーと思っている。でも気づいたのは、自分はつねに学びたいと思っているし、ストーリーを語る最良の方法を見つけたいと思っている。それが原動力になっている。毎回異なるストーリーで、それがこのサーガを特別なものにしていると思っている」とその思いを明かした。

また、衣装やロケーションについて、「ストーリーを語る上で役立つものにならなければならない。コスチュームはゆえにキャラクターの延長のようなもの。スタイルや審美性、すべてに強いコネクションがある。もちろん、メイクもロケーションも同様。そこにロジックがあるようにみんなで話し合った」と明かしたミラー監督。この内容について、テイラー=ジョイも同じ考えをもっているようで、「アクションシーンもすべてキャラクターの延長にある。彼らが何を望んでいるのか、何によって動かされるのかとか。そういう面がストーリーに深みを与えると思う。すべてが一緒になって層をもたらすの」と語った。

「自分が好奇心を忘れないことが大事。同じストーリーを何度も語ることに自分自身興味がない。自分は映画界でずっと働けてラッキーだから、それが続けられるように面白いことをやっていきたい」と、今後も映画制作に対し意欲的な姿勢を見せたミラー監督。そのコメントに対し、プロデューサーのミッチェルは「偉大な映画は、観客の見方に影響を与える。モバイルの時代でも、ジョージの場合は、ロックンロールな価値がある。音響面でも特別だ。本作は、大きな映画館で観る特別な映画だ」と語り、テイラー=ジョイもまた「インテレクチュアルで哲学的なロックンロールオペラ」と本作への自信を覗かせた。
(文=リアルサウンド編集部)

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