「泣ける」やっぱり5歳だもの…映画『クレヨンしんちゃん』しんのすけが泣いたレアエピソード

『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』[DVD](バンダイビジュアル)

ちょっとお下品な5歳の主人公・野原しんのすけをはじめとする個性豊かなキャラクターたちのドタバタな日常を描いた臼井儀人さん原作の『クレヨンしんちゃん』。今や海外でも大人気の、日本が誇る国民的アニメだ。

なんでもポジティブにおふざけで乗り切ってしまうしんのすけも、やはりまだ5歳。作中では稀に子どもらしい涙を流す様子が見られ、普段とのギャップから大人もつられてつい涙してしまうこともある。

今回はそんなしんのすけが涙したエピソードを、映画作品から厳選していくつか紹介しようと思う。

■シロを守るため涙の逃避行『嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』

まずは、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ歌うケツだけ爆弾!』で見られた涙のシーンを紹介しよう。

宇宙人であるケツだけ星人が隕石群破壊のために放った爆弾が、ふとしたことでシロのお尻にくっついて離れなくなってしまう。爆弾の脅威を知る宇宙監視センター“ウンツィ”と、爆弾を悪用しようと目論む“ひなげし歌劇団”から、しんのすけとシロは追われることとなる。

“ウンツィ”長官の時雨院時常は、爆弾ごとシロを宇宙に打ち上げることで世界が救われると野原一家に説明する。ひろしとみさえは人類の命とシロの命を天秤にかけた結果、シロを“ウンツィ”に引き渡すべきだと考えてしまう。

しかしそれに猛反発したしんのすけは、シロを連れて夜の町へと逃げ出してしまうのだ。途中、“かすかべ防衛隊”の助力を得るも、大人たちの執拗な追跡に再びシロと2人きりになってしまったしんのすけ。

走り続けたうえ夜露で体力を消耗してしまうも、それでもひたすらに走り続けているとやがて桜並木に辿り着いた。激しく息を切らして走るしんのすけをシロが心配そうに見上げると、その頬には雨の中でもわかるほど大粒の涙が流れていた。

家族であるシロを守るため、決して弱音を吐かずに必死に走り続けるしんのすけの5歳児らしからぬ強靭な精神に感動すると同時に、どんなにつらくとも心折れまいと無言で涙を流すしんのすけの懸命さに、胸が締め付けられてしまう名シーンである。

■大好きなヒーローを馬鹿にするな!『嵐を呼ぶジャングル』

続いて、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』でのシーンを紹介しよう。

特撮ヒーロー「アクション仮面」の新作映画が最速上映される豪華客船ツアーに参加することになった野原一家。そこへ、パラダイスキング率いるサル軍団が襲来し、大人たちが密林の孤島にさらわれてしまう本作。しんのすけら“かすかべ防衛隊”が大人たちを救出するため、ジャングルでさまざまな困難に勇敢に立ち向かっていく様子が魅力である。

子どもたちを人質に取られ、パラダイスキングとの決闘を余儀なくされたアクション仮面は、パラダイスキングのトリッキーな戦いぶりに翻弄され、ついにダウンしてしまう。

アクション仮面のもとに駆け寄ったしんのすけ。「パラダイスキングのほうがかっこいいだろう?」とアクション仮面に問われると、「正義の味方のアクション仮面が好きだもん!」「お前みたいなバクハツ頭にアクション仮面が負けるワケない!」と、目に涙を浮かべながら叫ぶのだ。

5歳児ながら、好きなものは好きだとまっすぐに言えるこのしんのすけの姿に、胸を打たれた大人たちも多かったのではないだろうか。悪の親玉を前に臆することなく自身の想いをぶつけたしんのすけの勇気ある行動は、絶望の淵にあったアクション仮面にとっても、まさしくヒーローのように映ったことだろう。

■5歳じゃなくてもつらすぎる別れ…『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』

最後は『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』でのシーンを紹介しよう。

自宅の庭に埋まっていた謎の手紙を読んでいると、突如戦国時代にタイムスリップしてしまったしんのすけ。映画の撮影だと勘違いして合戦に紛れ込んでしまったことで武将・井尻又兵衛由俊と出会い、春日城の廉姫の助力も得て現代へ戻る方法をともに模索することになるのである。

現代に戻れぬまま大蔵井家との大戦がはじまるも、野原一家の活躍もあってついに大将・高虎を討ち取り、戦は終結。

又兵衛の馬で一緒に帰路につくしんのすけだったが、突如響き渡った銃声のあと、又兵衛が何者かの凶弾によって倒れてしまうのだ。又兵衛はしんのすけが過去にやってきた意味と、自身の役割を全うする日々をくれたことへの感謝を伝え、父の形見である脇差をしんのすけに託し、命を落としてしまう。

過去に来てからともに生活をし、男同士の誓いを立てるまで絆を深めたしんのすけと又兵衛。厳しい戦国の世で訪れた突然の別れに、しんのすけは大粒の涙を流すのだった。

『クレヨンしんちゃん』ではほとんど見られない死別の描写に驚くとともに、あまりの悲しさからしんのすけ同様、誰もが涙してしまう有名なシーンである。

こうした悲しい描写があっても本作が今もなお世代問わず愛されているのは、登場するキャラクターたちが織り成す、さまざまな形の「絆」の様子の美しさにあるのではないだろうか。

いつもはふざけてばかりのしんのすけが見せる涙には老若男女さまざまな感情を抱き、観ている側もつい涙してしまう。子どものころに観たあの作品やあのシーンも、大人になってあらためて観てみるとまた違った捉え方で楽しむことができる。

来たる8月9日には、劇場版31作目となる『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』の公開も予定されている。どんなドラマが待っているのか、今から楽しみだ。

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