「医療的ケア児」災害時の課題は… 弘前市で初の避難訓練 医療機器を移動して避難所で使用できる?

災害発生時の「医療的ケア児」の安全確保が課題となる中、弘前市で作成した避難計画をもとに訓練が行われました。

弘前市の飯尾凰平君(3)。たんの吸引や人工呼吸器を必要とする「医療的ケア児」です。16日には、凰平君の「個別避難計画」をもとに、弘前市で初めての訓練が行われました。

【凰平君の母親 飯尾寛子さん】
「医療機器を移動させて、福祉避難所で実際に使用できるのかというのと、あとは持っていく荷物がすごく多いので、私1人、お兄ちゃん2人で手分けして運ぶという形になるので、その荷物の量がどのくらい負担になるのか」

「個別避難計画」とは、災害時に、自ら避難することが難しい人がどのような行動をとれば良いかを、行政などと協力しあらかじめ本人や家族と確認する計画です。

2023年9月時点の調査では、医療的ケア児がいる22市町村のうち、10の自治体が計画を「作成していない、未着手」となっています。

【凰平君の母親 飯尾寛子さん】
「お母さん今吸引機とか、人工呼吸器を運ぶ準備するから、凰平を見ていて」

凰平くんの場合、たんの吸引機や、人工呼吸器といったたくさんの荷物を運ばなければなりません。2人の兄も手伝い、運び出します。

【凰平君の母親 飯尾寛子さん】
「飯尾凰平ですけれども、今から自宅を出て出発します」

しかし、家を出てすぐに…。

【飯尾さん兄弟】
「ねえ!俺持てないじゃん!」(兄弟でけんかを始める)

素早く避難するためには、課題が山積。一番は、荷物の量です。そして、水に弱い医療機器が雨や雪で濡れないようにしなければなりません。

訓練に参加した防災の専門家からは、このようなアドバイスが―。

【弘前医療福祉短期大学部 立岡伸章教授】
「歩くところは本当に端で良いのか、壁の壁体、亀裂が入っていたら、それが崩れるかもしれないということを考えると、歩くところ」
「複数の経路を考えなくてはならない場合もあります。道路が寸断されている可能性もある」
「実際には、頭は絶対守らなくてはいけなくて、やはりいきなり壁や木、電柱が倒れることから頭を守らなくてはいけないことを考えると、ヘルメットを着用した方が良いかなというところです」

避難所に着いてから大切なのが、非常用電源でどれほどの電力が賄えるかです。全ての電源を入れ、使用できることを確認していました。

【凰平くんの母 飯尾寛子さん】
「凰平は元気だったのですけれども、その他の課題になるのではないかという荷物だったり、道路が狭くなったところだったり、兄弟がけんかしたりといういろんなこともあり」
「正直な感想としては、ふう終わった、大変だったという感じです」

市は今後、今回の訓練を踏まえ、他の医療的ケア児の「個別避難計画」の作成を速やかに進める方針です。

© 青森朝日放送