【川崎と鳥栖の試合でスコアを動かしたものとは(2)】山田「後ろだけの責任ではない」、木村「中盤より前の選手がボール限定してくれた」……両チームの選手から出た守備の感覚

川崎フロンターレの山田新がチャンスを迎えた場面 撮影:中地拓也

川崎フロンターレが2点取ったもののサガン鳥栖が5点を奪って終えた、5月15日の駅前不動産スタジアムでのJ1第14節。それぞれのチームが、勢いがつきやすい状況と、勢いがそがれやすい状況にあったことはすでに述べた。

90分終了時点での点差は開いたが、アジアカップで大きく成長して帰ってきた木村誠二は“踏ん張れた結果”だと試合後に明かしている。カタールから帰国後も精力的なプレーを披露しているこのCBは、自身について褒められても「パギさんのセーブで救われた」と守護神・朴一圭のプレーが流れを引き寄せたと振り返る。

「一回、背後へのボールで(キム・)テヒョンとお見合いになって、ゴール前に行かれてパギさんのセーブで救われたとか、あれが決まってたら全然流れも違ってます」

木村は、「試合の内容としては(序盤は)五分に近いぐらいでやれてたと思いますし、守備も前から行ってたし、後ろからの組み立てもうまくそれなりにうまくいけていて、背後への抜け出しもあったり、繋いでいけるのもあったり、全然悪くない試合でした」と振り返る中でも、大きなプレーだったという。

■前線からの守備で両チームの選手が語ったこと

後半の途中からは鳥栖は3バックに最終ラインに変更。川崎はそれを崩そうと猛攻を仕掛けたが、結果としてその時間にスコアは動かなかった。

「(川崎の攻撃に)踏ん張れてたかっていうと、本当にパギさんが守ってくれました」とも話して朴を賞賛・信頼する木村は、「基本的には前線が良い守備をしてくれて、限定してくれて、良い状態で自分たちが前に守備を押し出せるとか、背後に蹴らせたボールを回収できるとか、そういうのが今僕らがやろうとしてる守備」とチームとして守れた手応えもあったという。

「センターバック個人の能力で守れたとか、そういう場面はそんななくて、本当に今日試合通して、中盤より前の選手がボール限定してくれましたし、球際強く行ってこぼれ玉とか作ってくれたし、なんならショートカウンターでゴールまで行ってくれたし、本当に今日は前の選手に助けられた」

謙虚にそう語る木村は、「それを後ろから動かすのが僕らの役目だと思うので、そういった意味ではうまい具合に行けてた」と手応えも口にしつつ、そう試合を振り返る。

図らずも、川崎FW山田新からも「失点と言っても後ろだけの責任ではない」という言葉が試合後に聞かれた。5失点の受け止めについて、話を聞いた際のことだ。

「自分たちが前から守備している中で失点してるんで、ミスもありますけど、後ろだけじゃなくてチームとしての守備のところで、前半から足りてない部分も感じてました」

だからこそ、「前半早い時間に2点、3点取れていればと思います。取れてればああいうゲームにならなかったと思うので」と悔やむ。試合ごとにタフさと存在感を増し、この試合でも反撃の狼煙となり得る家長昭博の得点を力強いアシストで導いたが、それだけでは満足はできないと自身に発破を掛ける。

朴のセーブが流れを手繰り寄せたと木村が話せば、自身が得点を決めていれば流れを引き寄せたと山田が話す。点差こそついたものの、一つのきっかけで勝負はどちらに転がってもおかしくなかったのかもしれない。

■鬼木監督が求める選手

だからこそと言うべきか、試合後、鬼木監督は「勝ってても負けていても、急に何かが飛び抜けて強くなるとかうまくなるとこはない」と話したうえで、「自分たちのやるべきところを信じて突き進めていけるかどうか、選手に問いながら一緒に進んでいきたい」と決意を語っている。大敗したとはいえ、目指す目標に向かってやり続けることに変わりはないからだ。

そして、次なるガンバ大阪戦を翌々日に控えた17日、オンライン取材に応じて「俺が勝たせるんだ」という気持ちを持つ選手のさらなる登場を待望もしていた。

5失点というショッキングな出来事の直後だからこそ、何が見せられるのかが問われる。引き続きのアウェイゲームでタフな姿を見せられるか。大阪の地で、再起を期す。

(取材・文/中地拓也)

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