大阪府警は注意喚起動画を公開「名古屋走り、岡山ルール、伊予の早曲がり」地方の危険運転リアル実態

全国で横行する危険運転 ※画像はphotolibrary

日も徐々に長くなり、行楽地などへ車で向かう人も増えそうなこの季節。交通事故発生防止に警戒態勢を敷いたのは大阪府警である。

2023年の年間交通事故死亡者数が148人と、2年連続で全国最多となった大阪府。府警は注意喚起の一環として、夜間や早朝の死亡事故を減らすべく、車のライトを上向きにして歩行者を見つけやすくする“ハイビーム”の活用を呼びかける動画を、大型連休であるGW直前の4月24日から大阪府警察交通部公式Youtubeチャンネル上で公開している。

全国の主要幹線道路でハンドルを握ってきた交通ジャーナリストの村松虎太郎氏が解説する。

「夜間や早朝の事故では車のライトを下向きにする”ロービーム”で運転したことが原因で、前方の歩行者に気が付かないというケースも多い。大阪は一方通行の道が多く、人口が多いこともあって交通事故が起こりやすい。府警としても少しでも事故を減らしたいという願いからの注意喚起ということでしょう」(村松氏)

一方で重大な交通事故を引き起こしかねない危険運転は、全国各地で目撃されている。

23年の交通事故死亡者数が145人と、大阪府に次いで多かった愛知県で悪名高いのは、路上を走行する車の運転手が交通ルール違反を繰り返す通称「名古屋走り」だ。

18年まで、16年連続で交通事故死亡者数が1位だった愛知県。「名古屋走り」は名古屋市およびその周辺で見られる危険運転の総称で、黄色信号でも無理やり交差点を通過する、ウインカーを出さずに強引な右左折・車線変更を繰り返すなどの危険行為が特徴とされている。これらの危険運転が交通事故死亡者数が多い理由の一つであるとして県も問題視。県警も躍起になって対策に取り組んできた経緯がある。

「15年には県警も”交通事故分析システム”を導入。04年以降に県内で発生した事故のデータを分析し、県内でも交通事故が起きやすいエリアを特定。重点的に取り締まりを行なうなど交通事故対策に力を入れています」(前同)

全国各地の幹線道路を走ってきた村松氏が、自身も直面した名古屋走りの危険なリアル実態を話す。

「名古屋走りは名前に“名古屋”とついてはいますが、実際は名古屋市内というよりも、その周辺にある岐阜県や愛知県北西部の一宮市へと向かう道などで見られます。中心部よりも中心部と郊外を結ぶような道で横行している印象です。特に、愛知県と岐阜県を結ぶ名岐バイパスなどで頻繁に見受けられますね。バイパスのように信号が少なくて広い道路はスピードも出しやすい。交通ルールを無視する危険運転が起きやすいんだと思います」(同)

悪名高い名古屋走りだが、中心部から離れるほど交通量も信号も減って歩行者も少なくなるため、気が大きくなるドライバーも増えるというわけだろうか。そんな名古屋走りは日が暮れ、歩行者の姿も見かけなくなる深夜の時間帯ともなると、より顕著になるという。

■120キロで後続車両が追い抜いて……「深夜の恐怖体験」

前出の村松氏が愛知県内で自身が直面した「名古屋走り、深夜の恐怖体験」を振り返る。

「前提として深夜は車の数が少ないのでスピードを出す車は増えるのですが、名岐バイパスは尋常じゃない。120キロは出ているかというようなスピードで後続車両が追い抜いて行ったかと思えば、黄色信号や赤信号で自分が止まっている横を平然と通り過ぎて行くような信号無視車両も珍しくない。間近で直面すると、事故の恐怖を感じますよ。

結局、危険運転が起こるのは、“その道路が走りやすいかどうか”。交通量が多い東京のような大都会ではなかなか自由に走れないけど、地方都市である名古屋は郊外に向かって道も広くなるし、交通量も減っていく。昼夜問わずスピードを出しやすい道路があるため、運転が乱暴になりやすいのでしょう」(村松氏)

ウインカーを出さずに車線変更を繰り返しがちな危険運転が常態化している地域は、中京エリアに限らない。きびだんごで知られる岡山県も中国地方の危険運転地域として知られるという。

「“岡山ルール”と呼ばれるノーウインカー走行が県内では常態化。これは赤信号の際、交差点前で停止していた車が青信号に変わった瞬間に猛スピードで発進し、対向直進車よりも先に右折する行為のことを指します。目と鼻の先で対向車線の車が右折していく。運転している身としては事故が起きないかと冷や冷やものです」(前同)

岡山県の“岡山ルール”に匹敵する危険運転が頻発するのは、四国地方最大の都市・愛媛県松山市だという。

「松山市は、安土桃山時代の末期に建てられた松山城を中心に発展した城下町。その影響からか、道が狭く一車線しかない道路も。そうすると赤信号に一度捕まると、なかなか車が走り出せない。この特有の街作りの影響で、1回右折や左折をする場所を間違えると、予定のルートに戻るのは難しい。そのため、岡山ルール同様、交差点の信号が赤から青へと変わった瞬間に右折をする車が絶えません。“伊予の早曲がり”と呼ばれ、県外のドライバーからは恐れられています」(同)

命を失うこともある自動車事故。運転はマナーを守って、安全に。

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