時疾風秀喜 東農大卒業寸前に鎌首もたげた「相撲熱」宮城県出身27年ぶり新入幕

時疾風(C)日刊ゲンダイ

【大相撲 人気力士丸わかり名鑑】#89

時疾風秀喜
(27歳・時津風部屋・前頭15枚目)

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迷いに迷った末、プロの門を叩いた。

幼少期から地元の相撲道場に通っていたが、同時にバレーボールやサッカーにも熱中。相撲自体はそれほど好きではなかったという。

それでも素質を強豪・東農大関係者に見初められ、中学では相撲に専念。そのまま、小牛田農林高校に進学し、東農大へと進んだ。

もっとも、本人はプロに行くかどうかを決めておらず、相撲熱もさほどではなかったか、個人成績は3年次の全日本選手権ベスト16が自己最高。そんな時疾風を変えたのが、4年次の惨敗と同級生たちの活躍だ。

「何だかんだで、自信はあったんでしょうね。それが4年のインカレはベスト32止まりで、全日本選手権は予選落ち。さらに同い年で近大を中退した翠富士や錦富士が、前相撲から始めて順調に幕下に出世した。悩んだ末、『このままでは不完全燃焼だ』とプロ入りを決めたのは、それこそ卒業ギリギリだった」(タニマチ筋)

幕下上位での足踏みが長く、十両昇進は入門5年目の昨年。今場所、ようやく新入幕を果たした。

「得意の左四つ右上手に持ち込む技術はあるものの、相手に食らいつくのではなく、真正面から胸を合わせてしまう癖があった。体が大きくないのに、大きな相撲を取っていたのが苦戦の原因です。その悪癖も今は修正されつつある。勝っても負けても淡々としているが、内面は熱いともっぱら。そうでなくては、関取にはなれませんよ」(ある親方)

宮城県出身力士の新入幕は、1997年の五城楼(現浜風親方)以来、27年ぶり。同県出身横綱は4人いるものの、それでも明治時代の大砲が最後だ。はるか昔のように、故郷を相撲で活気づけられるか。

▼ときはやて・ひでき
●本名は冨栄秀喜
●1996年、宮城県栗原市出身
●179センチ、133キロ
●最高位は現在
●今場所前、結婚していたことを発表した

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