日本株は中長期的に上昇へ?今、国内投資家が日本株に投資するメリットを金融アナリストが解説

SNSなどで日本株の先行きが明るいとの話が増えているようです。日経平均は何年後に7万円、10万円…という話もあり、ご質問も増えています。“ホームカントリー・バイアス”という言葉がありますが、ポートフォリオのなかで自分の国の資産や市場への投資を厚くする傾向が人にはあるようです。日本人が投資を考える時に、今は新NISAでオルカンや米国が人気ではありますが、次の投資として個別株をやるなら?と考えると、日本株を連想するのは自然なことと言えそうです。

今回は国内投資家が日本株に投資をするメリットについて、また日本株の今後の上昇の可能性についてお伝えしたいと思います。


リアルタイムの取引と情報アクセスの容易さ

まず挙げられるのは市場へのアクセスと情報の利便性です。

日本国内の投資家にとって日本時間の日中活動している時間に取引されている国内市場はアクセスが容易だと言えます。

市場が開いている時間が日本のビジネス時間と一致しているため、リアルタイムで市場の動きに対応することができます。日中働いていて取引をするのが難しいという人でも、1日に1回就業後などに値動きをチェックして、朝通勤前などに注文して、お昼休みに確認をしたりすることも可能でしょう。一方でアメリカ株を取引する場合は、時差がありますので、日中に働いていてもアクティブに取引しやすい方もいらっしゃるようですが、寝不足になってしまうと言うことも考えられます。

また当たり前のことですが、日本語での情報が豊富に提供されています。ニュースやインターネットなどで日本の株式市場について、日本企業の情報について、簡単に知ることができます。日本の個別株について調べたいときには、企業の財務状況、業績発表、ニュースリリースなど、全て日本語で入手可能です。これにより、情報の正確な解釈が容易になり、投資判断を下しやすくなります。

また国内の投資家は日本の市場や企業文化、経済動向に通じているため、投資先を選ぶ際に情報をより深く理解しやすいです。日本で商品やサービスを提供している企業も多いため、実際に商品を手に取ったり、サービスを利用したり、実店舗を訪れたり、企業のIR担当に問い合わせの電話をかけるなどのアクションも起こしやすいというのも、日本株投資のメリットだといえます。

東証の後押しや税制面の利便性

東証の取り組みも日本株に注目すべきポイントといえそうです。2023年3月、東京証券取引所はPBR1倍割れ企業に対して改善要請を行いました。PBRとは株価÷一株あたり純資産で算出する株価の割安度を判断する株価水準を測る指標のことです。

PBR1倍割の状態は、その会社の技術やブランド力などが評価されていない状態となります。PBRを上げるためには収益を拡大する(PERを上昇させる)か、資本効率を高める(ROEを上昇させる)ことが必要です。東証の取り組みにより収益性の向上や資本効率の改善に取り組む上場企業が増加しており、株主還元に取り組む企業も増えています。

税制面での利便性や優遇もあります。

特定口座を通じて国内株式に投資する際には源泉徴収が可能で、税金の計算や申告が簡単になります。2024年に金額や期間が拡充となったNISA(少額投資非課税制度)を利用すると一定期間内で得られる株式の売却益や配当金が非課税になります。これにより、特に長期投資を行う個人投資家にとっては、税負担を抑えつつ投資収益を最大化することが可能です。NISAに関しては日本以外のアメリカや全世界型のETFや投資信託が人気を集めていることや、海外個別株や海外ETFも対象となっているため一概には言えませんが、国内株式型の投資信託は、比較的、手数料が安いものが多いとも言われています。

また「政策に売りなし」という相場格言がありますが、新NISAのような政府の株式市場への政策が発表された影響は市場の上昇圧力に少なくともしばらくの間はなると考えられます。

海外投資家も日本株に注目

加えて、日本株に海外投資家が注目するようになってきました。

2020年8月に米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社株(伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事)を購入し、さらに2023年に保有比率を高めたことは、日本株を33年ぶりの高値に押し上げる一因となったと考えられます。

今年は、中国株の先行きに懸念する中国の投資家たちがETFを通じて日本株を買っていると報じられるなど、日本株が投資先としてホットであると考えられているようです。

ただ足元では、日銀の金融政策正常化に向けた動きへの警戒感が意識されていることに加え、中国市場が底打ちしてきているので、中国の資金が日本株から抜ける可能性などもあり日経平均は米市場に比べて動きは鈍く見えます。

中長期的には少子高齢化で労働力の減少や社会保障費の増加が企業の収益に影響し、消費需要の減少も懸念されます。また技術力でも競争力低下や技術革新のスピードに遅れを取ることで市場シェアを失う可能性もあります。リスクもあるということは認識しておいてください。

日本株は中長期的に上昇の可能性

ここで日本株の先行きについてですが、足元では日本の実質賃金は前年同月比2.5%減の24カ月連続の減少となっています。給与は伸びているもののインフレに追いつかない状態が続いているようです。24カ月連続での実質賃金のマイナスはリーマンショック前後の記録を超えており1991年以降の記録で過去最長を更新しています。とはいえインフレと賃上げがどちらも実現してきてはいて、デフレ脱却、そして名目GDPの成長への期待感が高まっているようです。

名目GDPは、国内で生産された財やサービスの市場価格に基づく総額を表します。インフレにより、商品やサービスの価格が上昇すると、それらの市場価格も自然と高くなります。つまり、インフレは単価の上昇をもたらし、結果として名目上のGDPが増加します。

インフレにより企業が製品やサービスの価格を引き上げることができると、企業の売上高も増加します。コスト上昇を価格転嫁できる企業では利益も増えるため、これが株価を押し上げる要因となります。インフレが期待されると、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く際の実質利子率が低くなるため、企業の評価額が上昇します。これも株価上昇の一因です。さらに経済成長や企業収益の改善を織り込んで株価が上昇することも考えられます。

前述した資本効率の改善などの企業の取り組みに、名目GDPの成長が追い風となって企業利益が増加していくと日本の株価は中長期的に上昇する可能性があるでしょう。

インフレだと、シンプルに貨幣の価値が下がるので株は相対的に上がる、とも考えられます。良い話ばかりではなく、日本円の価値が落ちて日経平均が上昇するという可能性も考えておいた方が良いでしょう。実際に円安進行で海外から見ると日本株も割安感が増している側面があり、日本はエネルギーなど必需品を多く輸入に頼っているためインフレヘッジとしての投資も考えておきたいところです。個人的には日本株への投資ももちろん優位性がありますが、地域分散(アメリカや他の国々へ分散した)投資も検討しておくといいと考えています。

企業への投資は成長への支援にも

最後に知っておいてほしいこと、それは国内企業に投資することで、その企業の成長を支え、間接的に日本経済の成長に寄与することができることです。

国内企業に資金を供給することで、それらの企業が成長や拡大に必要な資本を得られ、支援につながります。雇用創出、技術開発、新製品の投入などが促進され、経済全体の活性化にもつながる可能性があります。

長期的な視点を持って投資を行うことは、長期的に企業を支えることになります。長期的な投資をすることにより企業は短期的な市場の変動に振り回されることなく、持続可能な成長戦略を実行しやすくなります。

加えて株式を持つことは、その企業の一部の所有権を持つことを意味しますので、株主として、企業の株主総会での投票権を行使することにより、企業経営に対して直接的な影響を及ぼすことが可能です。これにより、企業が社会的、環境的責任を果たす方向に導くこともできます。

さらに地方企業や中小企業に投資することで、地域経済の発展を支援し、地域全体に貢献することも可能です。地方創生や地域産業の振興に寄与することも、国内投資の重要な側面だと考えます。

日本の投資家が国内企業に投資することは利益追求のみならず社会的な意義も大きいと言えるでしょう。

この記事が皆様の投資の参考になれば幸いです。

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