円安要因にも!? 日本が抱えるデジタル赤字

●デジタル赤字が過去最大 財務省が5月10日に発表した2023年度の国際収支で、デジタル赤字が過去最大の約5.4兆円となり、この10年で約2.5倍となっていることが分かった。

一方で、経常収支は25兆3390億円の黒字で過去最大となっている。

米国グーグルやアマゾンへの巨大ITのサービスへの依存度が高く、ドル建て支払いが常態化していることが原因とみられ、円安要因にもなっているという指摘もある。

“デジタル赤字大国”の日本は今後も赤字が拡大するのか、またそれは、どのような影響を及ぼすのだろうか?

●デジタル赤字とは? デジタル赤字とは、デジタル関連のサービスの輸入が輸出を上回ることである。

デジタル関連のサービスは、ネットフリックスなどの動画配信サービス等だけでなく、企業が使うようなDX(デジタルトランスフォーメーション)関連、著作権使用料なども含まれる。

デジタル関連収支の黒字は、1位米国が1114億ドル(約17兆3000億円)で、2位の英国に2倍近くの差をつけている。

日本のデジタル赤字はOECDの中で最大となっている。

●デジタル赤字は悪? GAFAMのような巨大IT企業を持たない日本にとって、今後もデジタル赤字は避けられない。

デジタル赤字は海外に富が流出しているということでもあり、日本円で決済しても海外企業は円を売ってドルに換えるので、円安要因になりやすい。特定の国に頼ることで、安全保障上の観点からも懸念される。

ただ、デジタル赤字が悪いことばかりではない。

デジタル赤字の拡大は国内のITサービスが普及しているという証左でもあり、ITサービスの普及によって国内企業の効率化が進めば、人手不足や新たなビジネスチャンスの機会も創出できるかもしれない。

日本がAIビジネスで主導権を握る、もしくは独自のOSや国産クラウドなどを生み出せば、デジタル赤字の解消も可能だ。

現状、インバウンドによる外国人旅行客の大幅増によって旅行収支は黒字だったが、デジタル赤字でそれを打ち消し、サービス収支全体では赤字となっている。

国内IT産業の育成がデジタル赤字の解消、国内の業務効率化、さらには円安是正の鍵になるかもしれない。

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