「練上手」色彩豊か 人間国宝・松井康成展 廣澤美術館 茨城・筑西

企画展に展示された松井康成氏の「玻璃光練上大壺」=筑西市大塚

茨城県笠間市ゆかりの陶芸家で重要無形文化財保持者(人間国宝)だった松井康成氏(1927~2003年)を紹介する企画展「人間国宝 松井康成と黄金の茶道具展」が、同県筑西市大塚の廣澤美術館で開かれている。異なる色の陶土を組み合わせ、色彩豊かな文様をつくる技法「練上手(ねりあげで)」のつぼや皿など62点がそろう。

松井氏は長野県生まれ。太平洋戦争下の1944年に父の生地、笠間町(現笠間市)に移り住んだ。57年に月崇寺(同)の住職となり、60年に境内に窯を築いて古陶器を研究。さらに栃木県佐野市の陶芸家で人間国宝の田村耕一(1918~87年)に師事し、この頃、作陶を練上手に絞ったとされている。

会場には初期から晩年までの作品がそろう。鉄色の線状の模様を描いた「線文(せんもん)」や、表面に亀裂を生じさせた「嘯裂(しょうれつ)」、純白の粘土などで明るい調子の色素地を作り出した「晴白練上(せいはくねりあげ)」といった技法、作風の変遷を楽しめる。

焼成後に器の表面をダイヤモンドの粉末で研磨する「玻璃光(はりこう)」は、松井氏が晩年に追究した技法。その魅力を伝える展示作品「玻璃光練上大壺」について、同館の福嶋達也副館長(37)は「高度な技術で、傑作に仕上がっている」と指摘する。

このほか筑波山のヒキガエルを描いた墨絵「筑波山麓(さんろく)蟇(ひきがえる)闘争図」や陶板画などが並ぶ。

本館に隣接する「つくは野館」では、豊臣秀吉が戦国時代の武将、藤堂高虎に授けたほうびと伝わる「黄金の茶道具」一式が展示されている。7月28日まで。

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