子育てをしながら40代で1億円貯めたFIRE達成者が「お金ではなく時間がある生活こそFIREの本質」と語るワケ

FIREとは「Financial Independence, Retire Early(経済的自立と早期リタイア)」の頭文字を取った言葉です。このFIREの“RE”を「Retire EarlyのREではなく、Restart(リスタート)のRE」だと再定義し、「朝から晩まで拘束されている会社員人生から抜け出して、いつ何をしてお金を稼いでもいい自由人になろう」と、”タイムリッチ”な人生設計法の魅力を語るのは、実際にFIRE達成を果たした寺澤伸洋氏です。本記事では寺澤氏の著書『ぶっちゃけFIRE 手取り25万円で子育てしながら1億円ためる方法教えます』(主婦と生活社)より一部を抜粋・再編集して、改めてFIREの定義・魅力に迫ります。

「FIRE」の本質とは?

まず、「生きていくために、好きでもない仕事をする」の対義語は、「働かずに生きていく」ではなく、「好きなときに、好きなことで収入を得て生きていく」ことです。この考え方が、僕たちのFIREのベースになっています。

これは別の言い方をすると、FIREのREは「朝から晩まで拘束されている会社員人生から抜け出して、いつ何をしてお金を稼いでもいい自由人になろう」ということです。ここにおいてFIREの本質は「会社に所属しないとお金を得ることができない」という固定観念からの脱却、意識の変革なのです。

そしてこの考え方のもとでは、「FIREのREとはただ会社を辞めるということではなく、会社を辞めて好きなことで独立・起業するのに近い考え方だ」ととらえたほうがしっくりくるかもしれません。

今どきのFIREの一般的な形

人生を何十年も過ごしてくると、誰もが「こういうことが好きだな、こういうことがやりたいな、こういうことで生きていけたら最高だな」と思うことを何かしらもっているはず。ですが実際は、日々の仕事に忙殺されてなかなかそうしたことに手がつけられていない、という方が多いのではないでしょうか。

僕が思い描いているFIREは、「生まれ変わったつもりで、そうした好きなことを、好きなようにやる」という生き方。これはたとえば、若いころに「ミュージシャンになりたい」とか、「絵で食っていきたい」と思いながらも現実を見て諦めた人が、40代、50代になって金銭的余裕を得たあとに、まずは副業としてユーチューブなどで音楽活動をはじめたり、絵を描いてインターネットで販売しはじめたりするイメージです。

夢を諦めた20代のころのように、「この絵が売れなかったら食っていけない」という切羽詰まった状況ではなく、「この絵が売れなくても生きていける」という余裕がある状態で、あらためて夢を追うべきだと思うのです。

そしてその夢を実現していく中で改善や工夫を重ね、少しずつでも収益を出せるようになっていくと、それがFI(経済的独立)につながっていきます。その金額が大きくなり、「これで生きていける!」と判断ができるようになった段階で、会社を辞めて「作曲家」や「画家」といった新たな肩書で、第2の人生を送っていけるようになる。これが今どきのFIREの一般的な形なのです。

「キャッシュリッチ」か「タイムリッチ」か

また、「副業で楽しく稼げていれば、会社を辞める必要ないんじゃない?」という意見をいただくこともあります。そこでもうひとつ、次のお話をさせてください。

FIREというと、多くの人がまだ「お金を1億円貯める、そして投資の運用益で生きていく」という概念を持っていることから、「キャッシュリッチ」になることばかりにフォーカスされがちです。しかし、高収入の人や資産を持っている人は世の中にたくさんいると思いますが、日々忙しく、自由な時間がない方が大半です。これは、「キャッシュリッチが直接的に自由で自分らしい人生に結びつくわけではない」ということを表しています。

僕自身、外資系企業で夜中までずっと働く日々と、FIRE後に自由な時間がたくさんある日々の両方を過ごしたうえで感じるのは、FIREの本質は間違いなく「タイムリッチ」であるということです。決して「キャッシュリッチ」が主軸ではありません。

実際に、どれだけ年収が高くても、資産を持っていても、時間がない人生に幸せを感じることは一切ありませんでした。ですから、今は多くのFIREに関する記事やSNSなどで、お金を貯めることや運用をすることばかりが取り上げられていますが、「時間がある生活のほうがFIREの本質なんだ」と、気づいてもらいたいと思っています。

従来のREはFIREの現状とズレている

こうして今どきのFIREを実現した際、従来の定義のように会社を辞めることをRE(アーリー・リタイア)と表現するならば、たしかにリタイアはしています。しかし、退職後に精力的に人生を楽しんでいるFIREされた方々の様子は、リタイアの言葉に含まれる「定年退職後に何もしないでボーッとして暮らす」というニュアンスとはあまりにもかけ離れていたのです。

・これは決してリタイアではない

・みんな会社を辞めたあと、第2の人生を新しくスタートしている

心からこう感じた僕は、あらためてFIREのREをRetire EarlyのREではなく、Restart(リスタート)のREだと再定義したのです。この言葉が自分自身でも、ものすごくしっくりときています。

ただ、「それって、趣味での独立と何が違うんだ?」と思われる方もいるでしょう。この点ですが、会社以外の収入がある状態から退職をしていることも相まって、ある程度の資産に支えられた独立は、生きていくためにリスクをとってでも早く結果を出さないといけない通常の独立とは、まったく気持ちが違いました。全然焦りが生まれないのです。

成功したらラッキー。仮に成功しなくても、好きなことをして生きていけるのだから幸せ。会社を辞める前は、ここまでポジティブな気持ちになれるとは考えていませんでした。これが「何のストレスもなく、ゆるく自分の好きなときに好きなことをして楽しんで、それでいてその活動がお金を生み出すような、『遊ぶように生きる』自由な生き方をしよう」という考え方につながっています。

こんな第2の人生のリスタート、最高じゃないですか?

寺澤伸洋

作家/講演家

※本記事は『ぶっちゃけFIRE 手取り25万円で子育てしながら1億円ためる方法教えます』(主婦と生活社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン