女優・田中道子さんが語る競馬愛 生来の“穴党”は食費を削ってレースに挑んだことも

4月にサッカー元日本代表・川又堅碁選手(34=アスルクラロ沼津)との結婚を発表した田中さん。ゴールの決め手は「彼の見た目によらず誠実なところ」。ワイルドな風貌の夫は意外にも美文字の使い手だ。ミス・ユニバース・ジャパン3位の美貌を引っ提げ、ドラマ「大奥」などで女優として活躍中の田中さん、生粋の“穴党”として競馬ファンからも一目置かれている。

■シャフリヤールを切っての3連単893を的中

2021年9月26日、朝から雨が降りしきる中京競馬場11R「神戸新聞杯(GⅡ)」。その日、田中さんは根拠を持ってレースに臨んだ。

「ダービー馬、シャフリヤールが単勝1.8倍の断然人気。ただ、その日は朝からの雨で馬場コンディションは不良。『絶対に荒れる』という確信がありました。それでもシャフリヤールが3着までに入る可能性はありましたが、単勝1倍台では倍率的におもしろくない。何度も何度も頭の中で展開をシミュレーションし、1番人気の馬を完全に外しました」

これぞ勝負師の思い切りの良さ。ステラヴェローチェ、キングストンボーイの1着固定、2着と3着7頭の3連単フォーメーション60点を200円購入し、893.3倍の超万馬券となった。

払戻金の約18万円は何に使ったのか?

「それがあまり覚えていないんです……。いつもはメインレースを的中させても、12Rの軍資金に回すことが多いですし。穴馬狙いは、1頭を軸にして36点くらいで勝負すれば、7~8回に1回ドカンとくればマイナスにならない。今は重賞レースを中心に程よい距離で競馬を楽しんでいますが、以前は食費を削ってまで全レースに挑んでいました(苦笑)」

計算も得意で1級建築士の資格も保有

そうちゃめっ気たっぷりに話す田中さんだが、考え方はまさしく「理数系」だ。実は、超難関の国家資格・1級建築士でもあるのだ。

「穴馬狙いではあるんですが、いろんなパターンをシミュレーションする中で、購入点数を絞る作業をします。性格的に負けず嫌いなところもあって、1級建築士の試験勉強をがんばれたのもライバルたちのおかげ。通っていた専門学校に負けたくないライバルをつくって、『あの人は受かったのかな?』と常に考えながら自分を追い込んでいました。というのも、2級建築士の試験は大学の勉強でもある程度理解できたのですが、1級ともなると、見たこともないような記号であるとか、複雑な構造計算(モーメントやトラス)、12乗の計算のようなものまであるのです。競り合う人がいることでそれが力になったし、反骨心にもなりました」

こうして合格率十数%の狭き門をくぐってきたわけだ。

「父が小学校の教師をしていて、幼い頃はピアノを習っていましたし、インドア派な性格だと思います。親が止めるくらい本を読むような子でした。ただ、スポーツも得意ではあるんです。高校生の頃にこんなことがありました。同級生の女子にやり投げの優秀な選手がいたのですが、ある日の体力測定でその子が握力39キロ(平均は25キロ程度)という数値を出して、周りの女子たちが『おーっ』とどよめいていました。ところが、私がやったら40キロ……。その子に悪いし、周囲の空気も読んで40キロのことは黙っていました」

夫のケガの治療のため全国の病院を回った

自分で“オタク気質”と言うだけあってゲームにおいても負けず嫌い。

「先ほど負けず嫌いと言いましたが、私の夫も似たようなところがありますね。といってもスポーツのことではなく、ゲームでのことです。最近は仲間同士が協力して敵陣地を攻略する『モバイル・レジェンド』というオンラインゲームがお気に入り。夫から教わってネット対戦の麻雀ゲームにもハマっています。私の親族が『(川又は)勝つまでやめてくれない』とボヤいていました。ただし、ゲームの腕前は私の方が上。麻雀ゲームも私が勝っちゃいます」

なかなか夫婦仲は良さそうだ。もっとも、交際当時から順風満帆だったわけではない。

「夫はケガ(アキレス腱痛や骨折)の影響で3年間ほど満足なシーズンが送れず、所属先も決まらない時期がありました。それでも一切、私の前では泣き言のようなことは言いません。ケガの治療のため名医という名医を全国をかけ回って訪ねていたのですが、私もすべて付いていきました。でも、なかなか治療は難しく、そんな時に奇跡的にアメリカ勤務の日本人医師と出会えた。その先生のおかげでリハビリ期間も短縮できたのです。『できない』と自分から言ってしまうと仕事は来なくなる。これは私のいる芸能界も同じだと思っています」

まだ恋人同士ではあったが、“夫唱婦随”で治療にあたった結果、川又選手は昨年、ゴン中山こと中山雅史監督率いるJ3アスルクラロ沼津に移籍が決まり、今季もスーパーサブとして好調なチームを支えている。まだまだ先の話だが、J2昇格も射程圏だ。

■競馬場への移動中は“戦場”に向かう心境

「仕事やプライベートで全国の競馬場に足を運んでいます。新潟競馬場の芝・直線1000メートルのレースは圧巻。京都競馬場も改修できれいになって好きな競馬場です。阪神競馬場も仕事でよく行かせてもらっています。プライベートでは1人で行くことが多く、その方が競馬に集中できる。新幹線で行く時は、普段なら移動中は寝てしまうことが多いのですが、競馬の時は“戦場”に向かうような心境で、一切眠れません。レースに集中し脳を使いますので、チョコレートを口にしながら予想しています」

女優業や夫のサポートで忙しい毎日だが、コロナも落ち着いたことだし旅行にも出かけたいところ。もちろん、大穴を当てて軍資金を貯めることが大事だ。

「建築の勉強をしてきましたので、ヨーロッパの聖堂に興味があります。神秘的でやわらかい光を通すステンドグラスも鑑賞してみたいですね。もちろん、国内も。出身地が静岡県の浜松ですので、熱海や伊豆の温泉もいいですね」

趣味の絵画も玄人はだし。昨年、東京競馬場90周年を記念したアート展で正門特別ブースに躍動感あふれる「馬」を描いた油絵が飾られた。

「競馬好きの私にとってとってもうれしい出来事でした。絵は完全な独学。浜田雅功さん司会の『プレバト!!』という番組に出演させていただき、もう7年、8年くらい描き続けています。最初に先生から『そこそこ』と言われてハマりました」

女優というと、壁をつくってしまう人もいるが、まったく本人におごったところはない。会話をしていても屈託がなく、10年も付き合っているかのような親近感を感じさせてくれる。類いまれな頭脳と美貌、さらに芸術センス、そして人には言えないバカ力……。

「競馬場では人と人の隙間をかいくぐって、最前列で観戦しています」

真剣な表情の彼女と出会えるかもしれない。

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