「再び人が集まる場所を」被災地に喫茶店オープン きっかけは大学時代のボランティア 福島

原発事故による避難指示が解除されてから今年で9年目になる福島県楢葉町に、4月、ある喫茶店がオープンしました。「人が集まる場所を作りたい」。そう願う県外出身の男性の取り組みを追いました。

笑顔で会話を楽しむ、森亮太さん(33)。

楢葉町に「喫茶ヤドリギ」をオープンしました。

森亮太さん「楢葉っていう場所にたまたま辿り着いた種みたいな僕がいて、楢葉の土地とか歴史とか文脈みたいなところに何か根を張って茂っていくのかわからないですけど、まだ芽が出たばかりなので」

きっかけは大学時代のボランティア

店内を覗くと、ミラーボールやどこか懐かしいレトロな電球など、以前のスナックだった面影が残っています。

元からある良さは残しつつ、タイルなどは自分の手で落ち着いた雰囲気に仕上げました。

森亮太さん「ダラダラできるように、おかわりが200円とかにしているんですけど、すごいくつろいでもらえるといいなと思っています」

双葉町から来た人「この地域でこの時間帯にカフェ的なものをやっている場所があまりないので、すごく貴重な場所だと思います」

岐阜県出身の森さんが福島を訪れたきっかけは、東日本大震災でした。楢葉町は、原発事故でおよそ8000人の町民が避難を余儀なくされました。当時、立命館大学に通っていた森さんは、ボランティアで避難先のいわき市に入りました。それが、楢葉町と繋がりができたきっかけでした。

そして、2015年。町の避難指示が全て解除され、現在はおよそ4400人が暮らしています。

森亮太さん「楢葉町が避難指示解除のタイミングを迎えて、どんどん戻っていく流れを見ながら、僕も1度住んでみたいなと思って引っ越しをしてきました」

2017年の大学卒業と同時に、楢葉町へ移住し、その2年後には、地域おこし協力隊に。「喫茶ヤドリギ」をオープンしたきっかけになったのが、JR竜田駅・旧駅舎とのお別れイベントで聞いた町の人の声でした。

森亮太さん「例えば映画館があったりだとか、昔はあの場所で石炭運んでいたとかそういう話を色々聞いて、昔はもっとにぎやかな雰囲気があったっていうのもすごく実感しました。再び町の人が集まる場所を作りたい」

そんな思いで、喫茶ヤドリギを竜田駅のすぐ近くにオープンしました。

ヤドリギに人が集うように…

この日も、町の内外から多くの人が訪れていました。中には、森さんに会いに来る人も。

常連客「一日の活力だね」 常連客「森くんは誰からも好かれる人ですよね、子どもからお年寄りまで」

双葉町から来た人「すごく愛されキャラだなって」

ヤドリギの店員「心待ちにしてくれている人がいっぱいいるんだなって隣にいて思う」

おすすめのメニューは、たっぷりのあんとバターが乗った「小倉トースト」、そして双葉町で焙煎所を計画している「諒くんのコーヒー」。さらに、昔ながらのクリームソーダも。

常連客の男の子「モコモコしていておいしいです」

「喫茶ヤドリギ」森さんが描くこれからとは。

森亮太さん「今こうやって駅に降りてきて、帰ってきたあの人が寄れるような場所にもできたらいいなと、そうやって色々な人の動きが変わるようなことができたらおもしろいなって思うんですけど、まだ始まったばかりなのでまだまだこれからだと思ってます」

ヤドリギに鳥が集うように、人々が集まる小さな喫茶店が楢葉町にあります。



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