小島よしおには笑いの才能はないが、人を元気にする才能はある【今週グサッときた名言珍言】

小島よしお(C)日刊ゲンダイ

【今週グサッときた名言珍言】

「意識しているのは、ライバルにならないような場所に行こうってこと」
(小島よしお/NHK「ワルイコあつまれ」5月7日放送)

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「そんなの関係ねえ!」で、一世を風靡した小島よしお(43)。現在、テレビでの露出こそ減ったが、いまも子供に大人気。子供向けライブを年間約150本も行い、親子連れが詰めかけ、みんなで「そんなの関係ねえ!」を大合唱している。

そんな小島は、記者に扮した子供に「大人にはウケなくなったから子供向けにシフトしたんですか?」と痛いところを突かれ、「あのー、結構正解ですね」と苦笑しつつ「周りで子供向けのライブをやっている人がいなかったから」と答えた。さらに「ライバルは誰?」と問われ、「競争に強くないから」と返した言葉を今週は取り上げたい。

小島はお笑いユニット「WAGE」のメンバーとしてデビュー。2006年に解散し、ピン芸人として活動を始め、翌年には大ブレークした。だが、09年ごろになると仕事は激減。典型的な「一発屋」の道をたどった。しかし、小島はターゲットを子供に限定することで“復活”を果たしたのだ。

生まれてくる子には新ネタ

きっかけは10年に行った単独ライブでの出来事だった。見に来ていた関係者の連れてきた子供が、始まって30分も経たないうちに「帰りたいよー、つまんないよー」と泣き出してしまったのだ。それがショックだった。

その頃、「いっそのこと子供向けにやってみれば?」と提案してくれたのが、ピン芸人になった頃からずっと遊んでくれていた先輩、東京ダイナマイトの松田大輔だった。「松田さんがいなかったらお笑いやってない」というほどの恩人だ(テレビ朝日系「アンタウォッチマン!」23年11月28日)。

翌11年から単独ライブのタイトルを「小島よしお的おゆうぎ会」として“子供向け”を打ち出した。とはいっても、浸透するまでは5~6年かかった。やはり松田の提案でつくった「ごぼうのうた」や、YouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」などの地道な活動で、認知されていった。

子供たちの前で「そんなの関係ねえ!」とひたすら全力でやっていく中で、気付いたことがある。それは飽きるほどやったネタでも「生まれてくる子には新ネタ」(テレビ東京系「あちこちオードリー」23年10月4日)だということだ。

冒頭の番組では「笑いの才能はないけど、人を元気にする才能がある」と胸を張る。そんな稀有な才能に磨きをかけた小島よしお。もはや彼の前で「帰りたいよー」と泣く子供はいない。

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)

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