『シティーハンター』鈴木亮平が撃ちまくる、ガンアクションの魅力 凄腕スイーパー・冴羽獠を凌ぐ身体能力

■凄腕スイーパー・冴羽獠の再現度は?

『シティーハンター』といえば、スーパーテクニックが炸裂するガンアクションが売り物である。凄腕のスイーパーである冴羽獠の手にかかれば、初弾が当たってできた穴に二発目以降を通すワンホールショットも朝飯前。相手の銃の銃身に弾を打ち込む、弾丸に弾丸を衝突させるなど、常人には到底不可能な離れ業を描くことで、獠の並大抵ではない射撃の技量が表現されてきた。

Netflix版『シティーハンター』でも、この「荒唐無稽でマンガっぽいガンアクション」は健在である。鈴木亮平演じる獠は冒頭からノールックで半グレの拳銃を撃って弾き飛ばすし、ラスト手前では歩いて移動しながらのワンホールショットという、「冴羽獠じゃないと無理だよ、そりゃ」という射撃をキメたりしている。まあ、そこは『シティーハンター』なんだから当たり前である。

■細部まで見どころが多いアクションシーン

とはいえ、意外に地に足がついているというか、物理的には不可能ではないし、細かいところがよくできてるな……というアクションが多いのもこの作品の特徴だ。特に、クライマックス直前のユニオンの部隊と獠が大銃撃戦を繰り広げるシーンでの鈴木亮平の動きは、速く正確で見栄えもいい。

獠が短機関銃のMP5Kを使って戦っている際、放り投げられたマガジンを受け取ってリロードするシーンはそのわかりやすい一例である。この銃には弾薬をこめるチャージングハンドルを引いて固定しておけるストッパーが付いており、マガジンを交換してからハンドルを叩いてストッパーを外すと、素早く弾を込め直すことができる。このハンドルを叩いて弾を込め直す一連の動作を、銃の製造メーカーの名前を取って「HKスラップ」という。

色々な映像作品で見られるHKスラップだが、『シティーハンター』で鈴木亮平が見せた動きは抜群に速い。特に「目にも止まらない」と言っていいくらい速いのは、香が投げたうちふたつめのマガジンをキャッチしてリロードするシーンだ。あんなに素早く、しかも素手でHKスラップをしたら手が痛いんじゃないのか……と、なんだか心配になってしまうくらい、この時のリロードは早い。

■鈴木亮平の左手の動きに注目

また、鈴木亮平が左手で銃を扱うのがうまいのにも注目したい。前述のリロードのすぐ後、右手だけでMP5Kを撃ちつつ、左手でベルトに挟んだベレッタを引き抜いて撃つシーンがある。手元に鉄砲のおもちゃが二丁以上ある人はちょっとやってみてほしいのだが、後ろ向きに歩きながら右手で銃を振り回しつつ、左手でベルトに挟んだ銃を引き抜く……という動作を澱みなく行うのはけっこう難しい。

さらにその直後、弾切れになったMP5Kを捨ててそのまま右手で手前の敵を殴り、放り投げられたもう一丁のベレッタを受け取るシーンがある。カットが切り替わっているので一連の動作というわけではないのだが、ここで受け取った側のベレッタを装填するために、左手で持っているほうのベレッタのグリップエンドを叩きつけるようにしてスライドを動かしているのもなかなかすごい。

そんなことしたら右手側のベレッタのサイトがめちゃくちゃにならんか……と心配になるが、このシーンでの獠は「接近戦でとにかくバカバカ撃ってすぐ銃を捨てる」という戦い方をしているので、多少サイトがずれようが壊れようが別にどっちでもいい……ということなのだろう、多分。一応理屈は通っている。

と、鈴木亮平の身体能力と練習の凄まじさを感じさせる『シティーハンター』での獠のアクションだが、リボルバーを使った見栄え重視のアクションが随所に挟まれているのも見逃せない。

元々、リボルバーは映像映えする銃である。銃本体が中央から折れる中折れ式にせよ、弾の入ったシリンダーが横に飛び出すスイングアウト式にせよ、リボルバーをリロードする際のアクションはオートマチックの拳銃に比べると大きく派手になり、さらに弾を込め直す前にシリンダーから空薬莢を抜く作業が必要になるため、リロード完了までの時間もかかる。装弾数の少なさも相まって、リボルバーのリロードは緊張感のあるシーンとなる。

■見せ場となるスピードローダーの使用シーン

『シティーハンター』でのリロードシーンも、見せ場のひとつだ。もっとも、本作の獠は一発づつ再装填するような手間はかけず、6発全部を一気に再装填できるスピードローダーという器具を使っている。このスピードローダーを使うシーンは数回あるが、まずユニオンの戦闘員との銃撃戦の中(「プランCだ」というセリフのあるあたり)ではスピードローダーを使う手元にカメラが寄り、「見たことないかもしれませんが、こういう便利な道具があるんですよ」「これを使うと素早くリボルバーに弾を込めることができますよ」という点を説明している。

ちなみにこのスピードローダー使用シーンでは、素早く手首を返すことでスイングアウトしたシリンダーを銃本体に戻す動作も収められている。パーツに負荷がかかるので本来ならばやらないほうがいい動作なのだが、この手首のスナップでシリンダーを戻す動作はアニメの『シティーハンター』などでもよく見られた。リアルさ一辺倒ではなく、映え重視の動作をほどよく取り入れているのも、実写版『シティーハンター』のアクションである。

というわけで、ここで「スピードローダーという道具がある」ということをきっちり説明してしまっているので、それ以降は獠がどれだけ高速でリボルバーをリロードしようが、「スピードローダーを使ったから速い」ということにできるのがこの作品の上手いところである。

スピードローダーに関する事前説明が活きてくるのが、終盤、獠が防弾ガラスに向かって何発もパイソンを発砲するシーンだ。このシーンの獠は「6発撃ち尽くしたらすぐ次」という感じで何発も防弾ガラスに銃弾を撃ち込んでおり、射撃ペースの速さからも獠の怒りが伝わってくる。そしてさらに強く獠の感情を伝えるためには、発砲とリロードの間に演者である鈴木亮平の顔も同じフレームに収まっている必要がある。

ということで、このシーンで鈴木亮平は「顔のすぐ前でパイソンのシリンダーをスイングアウトさせ、素早く薬莢を抜いた後にこれまた素早くスピードローダーをつっこんで弾を込め直す」という動作をおこなっている。この動作、言うのは簡単だけど実際にやるとなるとかなり大変で、0.5倍速で動きを細く追ってみるとスピードローダーを差し込む左手がけっこう辛そうな角度になっている。「そこまでやってでも獠の怒りと、怒りに溺れない正確なテクニックを見せなくてはならない!」という作り手側の思いがあればこそのシーンだろう。

このほかにも「ほどよくプロっぽく、ほどよく弱そうなユニオン戦闘員の全滅特殊部隊感溢れるアクション」とかについても書きたいところではあったのだが、それをやると原稿の分量が倍くらいになってしまうので、こちらはまた別の機会に。とにかく地に足のついた納得感と獠のキャラクター性、さらに『シティーハンター』らしい荒唐無稽さが絶妙なバランスで織り交ぜられた本作のガンアクションは、鈴木亮平の身体能力と器用さ、銃器類を揃えアクションを設計したスタッフの熱意、そして『シティーハンター』という作品への愛あってのものだろう。まさに冴羽獠のような、プロフェッショナルの仕事なのである。

(文=しげる)

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