「彼のような選手に出会うことはないだろう」ユニホームを脱いだ長谷部誠にクラブ首脳から敬意と賛辞! 現地メディアも「クラブのアイデンティティーの絶対的な柱」

現地時間5月18日に行なわれたブンデスリーガ最終節のRBライプツィヒ戦(2-2)、フランクフルトの長谷部誠は後半アディショナルタイムに交代出場し、現役選手としてのラストマッチを飾っている。

4月17日に今季限りでの引退を発表していた40歳は、チームの6位&来季の欧州カップ戦(ヨーロッパリーグ以上)出場確定を見届けた後、同じくこの一戦をもってユニホームを脱ぐセバスティアン・ロデとともに、本拠地ドイチェ・バンク・パルクから万雷の拍手と歓声を受け、駆け寄ってきた子どもたちとの抱擁で目に涙を浮かべる場面も見られた。

ピッチ上では、マティアス・ベック会長がスピーチで、2選手に対して「君たちは最高の選手であり、我々はとても誇りに思っている。君たちが成し遂げたことは並外れたことであり、君たちの心にはアドラー(鷲=クラブのシンボル)が宿っている。君たち自身がアイントラハトなのだ。素晴らしいし、ピッチ上で君たちを見られなくなることが寂しい」と賛辞を贈り、クラブの終身会員の証を授与し、「当然のことだし、そうあるべきだ。これからも君たちは我々の一員であり続ける」と語っている。
また、スポーツディレクターのマルクス・クレシェは「長谷部は年齢を重ねてからこのクラブに加入(2014年)したので、2、3年プレーするだけかと思われていたものだが、それから10年もプレーした。素晴らしいキャリアだ」と、その鉄人ぶりを称賛。そして、ディノ・トップメラー監督からも、以下のようなメッセージが贈られた。

「6位という順位でマコトとセバスチャンを送り出すことができた。これは我々に相応しい結果であり、素晴らしい締めくくりとなった。2人は、その功績に見合うものを手に入れた。彼らがいなくなるのは寂しく、間違いなく少しの哀愁が伴う。(中略)マコトは、私が今まで見た中で絶対的な模範的プロフェッショナルであり、今後、彼のような選手に出会うことはないだろう。彼は大きな手本だ。彼らと一緒に仕事ができたことに、心から感謝している」

これに対し、長谷部は「この10年間は素晴らしいものでした。皆さんがいなければ、こんなに長くプレーすることはできなかったでしょう。たくさんの素晴らしい瞬間がありました。DFBポカール(2017-18)やヨーロッパリーグ(2021-22)の優勝……こんな経験ができるとは思いませんでした。本当に感謝しています」と感謝の言葉を述べた他、クラブの公式サイトを通しても、「自分のキャリアに非常に誇りを持っていますが、チームメイトやスタッフ、みんなのことも誇りに思っています」とのコメントも残している。 2002年に藤枝東高から浦和レッズに入団した長谷部は、中盤の底に君臨してJリーグやAFCチャンピオンズリーグなどのタイトル獲得に貢献した後、2008年1月にドイツに渡り、ヴォルフスブルクでは加入2シーズン目にリーグ優勝。怪我や2部降格の憂き目に遭ったニュルンベルクでのプレーを経て、2014年よりフランクフルトの一員となり、以降は中盤の底、もしくは最終ラインで安定したプレーを披露してきた。

ブンデスリーガでの最終成績は384試合出場に到達。ロベルト・レバンドフスキ(現バルセロナ)に並んで外国人選手の出場記録で歴代2位となった(1位は490試合のクラウディオ・ピサーロ)。当然ながら、アジア人としては歴代1位であり、データ分析会社『Opta』も、改めてこの偉大な数字を伝えるSNSを「サヨナラ」の文字で締めている。

こうした偉大な実績を残した日本人選手の最後については、ドイツの多くのメディアが注目し、『BILD』紙は「長谷部とロデがチームメイト、コーチ、スタッフが作った列の中を通り、ファンに背を向けてスタジアムを去る際、クラブは欧州カップ戦出場決定に対して以上に、この去り行く2人のレジェンドに盛大な拍手を贈った」と伝えた。
フランクフルトの地元紙『Frankfurter Allgemeine Zuitung』は、「ピッチでの涙、スタンドでの歓声。全てが終わり、4年連続での欧州カップ戦出場権獲得の任務が完了した時、長谷部は膝をついた。ライプツィヒと引き分けた後、彼は父親に寄り添うためにピッチに駆け込んだ2人の幼い子どもたちを腕に抱き、抑えきれずに泣いた」と綴っている。

『Frankfurter Rundschau』紙も、「絵に描いたような2つのキャリアが終わりを迎え、偉大な選手であり、また人間である彼らが、サッカーの舞台に別れを告げようとしている。彼らは、非の打ちどころのないスポーツマン、申し分のない人格者だ。最後に数分間プレーする機会を得て、熱狂的に祝福され、スタジアムで鳥肌が立つ瞬間を作り出した。そしてその後、観客も、選手自身も、涙を流した。さようなら、セップル、ハセ」と、2人のレジェンドのラストマッチを振り返った。

フランクフルトのクラブ専門サイト『SGE4EVER.de』は、「クラブのアイデンティティーの絶対的な柱である2人に対しては感謝と敬意しかない」として、長谷部に対しては「2014年に加入し、2年後にはチームメイトとともにアイントラハトを降格から救った。その後も日本人選手はフランクフルトへの忠誠心を保ち、選手としてクラブの隆盛を直接経験した」と、このクラブでのキャリアを改めて紹介した。

そして『Suddeutsche Zeitung』は、マルコ・ロイス(ドルトムント)、クリスティアン・シュトライヒ監督(フライブルク)らとともに「ブンデスリーガからの別れ」を告げる選手として長谷部とロデを取り上げ、「このヘッセンの功労者である2人は、盛大に送り出された。5万7500人の観客は、スタジアムのビデオスクリーンに2人のキャリアのハイライト動画が再生される中、見事な雰囲気を作り上げた」と、その感動的な最後のひとときの様子を報じている。

構成●THE DIGEST編集部

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