『6秒間の軌跡』は人に“歴史”があることを教えてくれる 橋爪功の衝撃のコスプレ姿も

得体の知れないものは、誰でも怖い。でも知れば、案外なんてことないのかもしれない。『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』(テレビ朝日系)第6話では、ふみか(宮本茉由)が幽霊の航(橋爪功)と“対話”を通じて、その恐怖を乗り越える。

水漏れトラブルで今の部屋に住めなくなり、望月煙火店に住み込みで働くことになったふみか。しかし、星太郎とひかり(本田翼)から航の存在が明かされ、卒倒してしまう。ふみかは幽霊や怖い話が大の苦手だったのだ。

それでも星太郎のもとで花火作りを学びたい彼女は必死で恐怖と戦うが、夜は一人で眠れず、日中ですらビクビクしっぱなし。だけど、当然といえば、当然だろう。星太郎にとって航は実の父。ひかりはもともと幽霊が見える体質で、ふみかが怖がっているのもお構いなしに、派手な衣装を身にまとってふざけている航のことも見えている。一方、ふみかは航に会ったこともなければ、見たこともない。ひかりにいくら「幽霊といっても先代である星太郎さんのお父さんですから」と説明されても、怖いのは当たり前だ。

そんなふみかが恐怖を克服するきっかけを与えたのは、星太郎の母・理代子(原田美枝子)だった。ある日、星太郎が作業場から戻ると、ひかりやふみかと楽しげに話す理代子の姿が。美女2人に囲まれて生活する星太郎に、「父さんの真似?」と問う理代子。聞くところによると航は学生時代、数人の女子を喫茶店に連れていき、ケーキをご馳走していたという。すると周りの人は女子をはべらせた航をモテると勘違いし、航は本当にモテるようになったそうだ。理代子が笑い話として語ったそのエピソードには、航のチャーミングな人柄が表れていて、結果的にふみかの恐怖を和らげることに繋がった。

その夜、理代子が作った料理を前に食卓を囲んでいると、航と話してみたいと言い出すふみか。星太郎が通訳となり、2人は初めて言葉を交わす。内容は、ふみかの父・ぐっちょがニッカポッカを履いていた理由について。航によると、ぐっちょは望月煙火店で修行していた当時、秋田にいる恋人と遠距離恋愛中だったそう。その恋人と公衆電話で長電話するために、いつも10円玉で作業ズボンのポッケを満杯にしていたぐっちょを航はからかった。それで、10円玉をいっぱい入れても目立たないニッカポッカを履くようになったのではないかという航。

「惚れてたんだねえ」と星太郎を通じて伝えられた航の言葉にふみかは笑顔になる。ぐっちょはその当時の彼女と結婚し、ふみかが生まれた。ふみかは航に会ったこともなければ、見たこともないけど、全く関係のない人ではない。まだ初々しかった頃の父と母を知っている人。ふみかの両親にも歴史があるし、幽霊である航にも歴史がある。それに関する微笑ましくて心がポカポカするような2つのエピソードが、ふみかと航を隔てていたものを取っ払った。

こうしてふみかが目に見えないものへの恐怖を克服する一方、星太郎は別の見えないものに対する恐怖を募らせていく。ベテラン俳優・橋爪功が、おそらく芸歴63年の中で初めてコスプレ姿を披露した第6話。そのふざけっぷりは、見えない設定とはいえ、よく宮本茉由も笑わずにいられたなと感心してしまうほど。そんな中、星太郎は一人険しい顔をしていた。

細長い穴に落ちる夢や、なぜか望月家になつく野良猫などを、幽霊の望月航(橋爪功)からの何かの暗示だと信じて疑わない星太郎。航が好き放題やっているのも、「いつ何が起きるかわからないから、今を全力で楽しめ」というメッセージと受け取った星太郎は缶詰やカップ麺など、何かが起こった時のために備蓄を買い漁る。未来も幽霊と同じく、本来は見えない得体の知れないもの。そんな未来への恐怖で身動きが取れない星太郎は、どこに行き着くのだろうか。

(文=苫とり子)

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