【ソフトバンク】山川穂高 左手甲への死球にヒヤリ…王会長が見逃さなかった〝極限回避術〟

試合後は、サヨナラ勝ちに笑顔だったソフトバンク・山川穂高(中)

好事魔多しがよぎった。ソフトバンクは19日の西武戦(みずほペイペイ)に2―1のサヨナラ勝ち。連日の逆転劇で4連勝を飾り、貯金を今季最多の17とした。0―1で迎えた9回、完封ペースだった相手先発・武内が周東に安打を許した後にアクシデント降板。代わった守護神・アブレイユから柳田が殊勲の同点打を放ち、最後は近藤が劇的なサヨナラ打で決めた。

首位を快走するチームにあって最大懸案は絶対的主力の離脱だが、この日は文字通り危機に直面した。近藤の劇打が生まれる直前、4番・山川穂高内野手(32)が左手甲に死球を受けて交代。157キロの速球が直撃しただけに左手は震え、激痛が走った。

試合後、山川は平然と報道陣に対応。患部は皮がむけて赤く腫れ上がっていたが「力も入りますし、グー、パーもできる」とネガティブな言葉を発することなく帰路に就いた。チームドクターの所見では骨に異常はなかった模様。スラッガーの「宿命」に動じない姿勢が、4番の責任感をにじませた。

山川は奈良原ヘッドコーチに「よけきれませんでした」と試合後に明かし、死球の衝撃を最小限にとどめられなかったことを悔いたという。それでも初球に胸元をえぐられていた大砲が2球目も臆することなく踏み込んだ末に、直撃の瞬間、わずかに体を捕手側に引いて最悪の事態を回避した技術はファインプレーだった。

このシーンを見逃さなかったのが王貞治球団会長(84)だ。「(当たり方が)こうじゃなかったからね。こうだったから」と身ぶり手ぶりで衝撃度を抑えようとした山川の受け身を解説。自身も通算114個(歴代16位)の死球を受けた勲章があるだけに、言葉は熱を帯びていた。

その上で王会長は、去り際に「明日は休みだから大丈夫でしょう」とも言った。多少なりとも痛みがあれば影響は避けられないが、弱みを見せない4番の姿はチームを鼓舞する。王会長らしい温かいエールだった。

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