サニブラウンは本気で言い切る「金メダルを狙う」 内定お預けも…五輪に“出るため”の今じゃない【セイコーGGP】

セイコーGGPに出場したサニブラウン・ハキーム【写真:奥井隆史】

陸上セイコーGGP

陸上のセイコーゴールデングランプリ(GGP)が19日、東京・国立競技場で行われ、男子100メートル決勝に出場したサニブラウン・ハキーム(東レ)は10秒97(向かい風0.1メートル)で8位だった。脚が2箇所つるアクシデントがあり、パリ五輪の参加標準記録10秒00を切っての代表即内定はお預けに。不完全燃焼に終わったが、「金メダルを狙う」と言い切る姿に本気度を漂わせた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

顔をしかめ、フィニッシュ手前で急失速した。サニブラウンは7レーンからスタート。序盤からスピードに乗れず、他の選手たちの背中を追った。最後は流してフィニッシュ。10秒97の8位だった。レース後はふくらはぎと太もも裏をつったことを告白。世界陸上2大会連続ファイナリストは、大会前から調整に手応えがあっただけに悔しさを滲ませた。

「1本目が終わってから体がいっぱいいっぱい。つりそうな予感はあったけど、まだつってないし、いけるかなと思って挑んだ。でも、案の定12~13メートルでつって。怪我をしたら元も子もないので、緩めて走り切る形になりました。集中していて良い走りができそうな感覚だったので、ちょっと悔しい」

予兆は予選にあった。「思いっきり行ってやろう」と9秒台での参加標準切りを見据えたが、他の選手の影響でスタートがやり直しに。10秒07(追い風1.0メートル)の2組1着でまとめたが、2度のスタートで負担が掛かり、決勝まで響く結果に。ただ、世界のトップを視野に入れる25歳は言い訳にはしない。

「五輪決勝で誰かがフライングした状態でも、2本目もしっかり行かなきゃいけない。パリ五輪は2日連続になるので、そのぐらいのスパンで走らなきゃダメ。詰めが甘い大会だった」

五輪の目標は「金」と即答「今年は行くぞって」

今季は3月に10秒02(追い風0.5メートル)、4月に10秒04(追い風1.7メートル)をマーク。序盤の加速練習に重点を置き、「スムーズ+アグレッシブ」に出る流れに確かな手応えがある。春先から徐々に上げていき、夏の大舞台にピークを持って行くのが世界トップの流れ。

サニブラウンにとっても、五輪に出るための今ではない。目標を問われると、「金メダルを狙っていきたい」と即答した。夢を語れない人は叶えることもない。世界一は高校時代からの目標。本気で言い切るからこそ、夏だけにターゲットを絞っている。

「今年は本当にチャラチャラしないぞ、遊んでないぞっていう気持ちでやらしてもらっています。もう自信満々で今年は行くぞっていう感じです」

男子100メートルはこれまで日本短距離界を引っ張ってきた選手たちが苦戦中。山縣亮太は故障でパリ五輪を断念し、桐生祥秀、多田修平らも本調子まで上がってきていない。サニブラウンには1932年ロサンゼルス五輪6位の吉岡隆徳以来、日本人92年ぶりの決勝進出の期待もかかる。

11か月ぶりの国内レースを約2万人が見守った。「ホームで走る機会はなかなかない。日本の国立競技場で走ることはもの凄く嬉しい」。日本陸上界の発展を願うエースは嬉しそうに笑った。

「やっぱり陸上競技がどんどん人気になっている証拠ですし、来年もここで東京世界陸上がある。そこで3階席まで満員になるくらい人を集めて、その中で走れればもの凄く気持ちいいのかな」

今後は米国からイタリアに拠点を移し、欧州のレースを転戦予定。6月末には日本選手権も控える。快挙に向けて調整も加速させていく。

THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada

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