B’z、スタレビらの楽曲提供や吹石一恵の歌唱曲まで 『ときめきメモリアル』音楽面でも一時代を築いた功績

人気恋愛シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』が、5月27日にシリーズ誕生から30周年を迎える。

高校を舞台に、学園生活を楽しみながら主人公の“自分磨き(各種ステータスのレベルアップ)”を行い、意中の登場人物との恋愛成就を目指す同シリーズ。初代作品は、1994年5月27日に、当時のコナミからPCエンジン SUPER CD-ROM2用のソフトとして発売された。ゲーム専門誌では「家庭用ゲームにおける美少女ゲームブームの火付け役」とも評されており、異例の大ヒットを遂げた『ときメモ』あるいは『ときめき』シリーズは、派生ゲーム作品や女性向けのゲームシリーズ、書籍、CD、OVA、実写映画、キャラクターグッズまで、幅広い展開が行われている。

そんな同シリーズは、そのゲーム性やシナリオのおもしろさが高く評価されていることはさることながら、実は音楽においても、興味深い取り組みを多数行ってきたことをご存知だろうか。

その一つが、多数の著名アーティストによる楽曲提供やコラボレーション、音楽プロデュースである。例えば、2001年12月に発売された『ときめきメモリアル3 ~約束のあの場所で~』では、サウンド・コレクション・アルバムとして『ときめきメモリアル SOUND BLEND ~ featuring ZARD ~』を2002年1月にリリース。ZARDの坂井泉水が、時に伸びやかに、時に切なげな歌声で、ゲーム内のオープニングやエンディングに使われている「抱きしめていて」「Seven Rainbow」「hero」の3曲を歌い、ゲームの世界観を表現した。

2009年に発売された『ときめきメモリアル4』では、シンガーソングライターの川嶋あいが楽曲提供を行っている。川嶋は同作のために3曲を書き下ろし、そのうちの1曲である「手のひらの勇気」は、当時活躍していた女性アイドルグループ・アイドリング!!!の一部メンバーで結成されたユニット「ときめきアイドリング!!!」が歌唱とパフォーマンスを担当し、話題を集めた。

また、意外なことに、実はB’zとスターダスト☆レビューも、『ときめきメモリアル』シリーズに楽曲を提供している。

B’zは、2002年6月に発売された『ときめきメモリアル Girl's Side』という女性向けの恋愛シミュレーションゲームで、オープニングテーマとして「SIGNAL」を、エンディングテーマとして「美しき世界」を提供(どちらも12枚目アルバム『GREEN』に収録)。スターダスト☆レビューは、2002年1月発売の16枚目アルバム『Style』より「めぐり逢えてよかった」が、2006年8月発売『ときめきメモリアル Girl's Side 2nd Kiss』のエンディングテーマとして起用されている。

さらに、時間軸が前後してしまうのだが、シリーズの初代作品『ときめきメモリアル』は、1997年に実写映画も作られている。同作の音楽プロデュースは、シンガーソングライターの広瀬香美が担当。広瀬は主題歌「セピアの夏のフォトグラフ」の作詞作曲にも携わっており、歌唱はヒロイン・藤崎詩織を演じた吹石一恵が務め、中毒性のあるキャッチーなメロディでリスナーの耳を奪う楽曲に仕上がっている。

そして、『ときめきメモリアル』は、今でこそ当たり前となっている「二次元アイドル」「バーチャルアイドル」の礎を築いてきた作品の一つであることも、言及しておかなければなるまい。

1996年12月、シリーズ初代の『ときめきメモリアル』から、絶対的なヒロインの藤崎詩織(cv. 金月真美)がシングル『教えてMr.Sky』で歌手デビューを実現したのである。当時はまだ、二次元のキャラクターが現実世界で楽曲をリリースし、歌手として活動するという概念は一般的ではなかったはずだ。だが、コナミは藤崎詩織のことを“バーチャルアイドル”として売り出し、デビューシングルは発売から1カ月で10万枚を売り上げたという。また、1997年2月にリリースされた1stアルバム『My Sweet Valentine』は約20万枚を売り上げ、オリコンチャート9位にランクイン。1999年12月までにシングルを5枚、アルバムを3枚、ベストアルバムを1枚リリースし、一世を風靡した。

こうした記録を実現できた背景には、楽曲制作に豪華な布陣が敷かれたことも影響していると思われる。例えば、デビューシングルの1曲目に収録された「教えてMr.Sky」では、数々の歌謡曲・J-POPの制作に携わった森雪之丞が作詞を担当し、作曲をチューリップの財津和夫が務めた。また、2曲目に収録された「風と一緒に行こう」は、松田聖子「天使のウィンク」や杏里「オリビアを聴きながら」などを手がけたシンガーソングライターの尾崎亜美が作詞作曲を担当。2ndシングル以降の作品でも、小比類巻かほる、サンプラザ中野、来生えつこ、来生たかお、大江千里など、人気と実力の確かなアーティストたちが楽曲制作に参加し、藤崎詩織の飛躍に一役買った形となった。

このように、音楽にも多大な力を注いできたことがうかがえる『ときめきメモリアル』シリーズ。5月18日と19日には、立川ステージガーデンでライブイベント『ときめきメモリアル 30th ANNIVERSARY LIVE エモーショナル presented by TOKYO MX』が開催され、改めて、音楽の部分でも同シリーズを愛しているファンが多いことを実感する。

『ときめきメモリアル』シリーズ30周年を機にその歴史を振り返ってみると、同作は一つのゲーム作品として優れているだけでなく、ゲームが音楽アーティストと相乗効果を生み出しながら発展をし続けてきたこと、二次元キャラクターが現実世界で歌手として活躍する道を切り拓いてきたこと、その功績の偉大さに思いを馳せずにはいられないのである。

(文=市岡光子)

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