井上尚弥はPFP1位“防衛”?ウシクがフューリーに判定勝ちでヘビー級史上初の4団体統一

Ⓒゲッティイメージズ

ウシクは史上3人目の2階級4団体統一王者

プロボクシングの世界ヘビー級4団体王座統一戦が18日(日本時間19日)、サウジアラビア・リヤドで行われ、WBA・IBF・WBO王者オレクサンドル・ウシク(37=ウクライナ)がWBC王者タイソン・フューリー(35=イギリス)に判定勝ちし、ヘビー級史上初の4団体統一を果たした。

試合は一進一退の攻防が続いた9回、身長191センチのウシクが左ストレートをクリーンヒットすると、フューリーは206センチの巨体をよろめかせながらリング上を“宇宙遊泳”。たたみ掛けるウシクの猛攻を受けてコーナーにもたれ掛かったところでレフェリーがダウンを宣した。

ジャッジは2-1(115-112、114-113、113-114)と割れたもののウシクを支持。クルーザー級で4団体統一したウシクが、テレンス・クロフォード(アメリカ)、井上尚弥(大橋)に次ぐ史上3人目の2階級4団体統一王者となり、戦績を22戦全勝(14KO)に伸ばした。

ヘビー級は、あのマイク・タイソン(アメリカ)でもWBA・WBC・IBFの3団体統一王者で、イベンダー・ホリフィールド(アメリカ)やレノックス・ルイス(イギリス)、ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)も3団体どまり。主要4団体で最も新しいWBOが発足した1988年当初は、新興団体としてタイトルの価値が低く見られていたこともあるが、4団体統一王者は誕生していなかった。

前回も井上尚弥からPFP1位を奪ったウシク

気になるのがパウンド・フォー・パウンドの行方だ。世界で最も権威があるとされるアメリカのボクシング誌「ザ・リング」の最新ランキングでは井上尚弥が1位。ルイス・ネリ(メキシコ)を倒して約2年ぶりに返り咲いたばかりだ。

井上が2022年6月にノニト・ドネア(フィリピン)を2回TKOで破って初めて1位になった前回、同年8月に1位の座を明け渡したのは他ならぬウシク。今回も現PFP3位のウシクが試合内容次第では再び井上から1位を奪うのではないかと話題になっていた。

SNS上では早くもウシクを1位に推す声や、それでも井上を支持する声など侃侃諤諤の様相。ウシクは15センチも背の高い相手からダウンを奪った点は評価されるが、KOはできず判定も2-1のスプリットデシジョンだったのに対し、井上も6回で豪快にノックアウトしたとはいえ、1回に人生初のダウンを喫しており、簡単に結論は出ないだろう。

約13キロの体重差がポイント

議論を呼ぶポイントのひとつにウェイトがある。今回の前日計量でウシクは233.5ポンド(105.91キロ)だったが、フューリーは262ポンド(118.84キロ)と約13キロもの差があった。

最重量級のヘビー級は体重制限がないが、それ以外の階級で13キロの差があると6~7階級は違ってくる。井上が戦うスーパーバンタム級(55.34キロ)から見れば、スーパーウエルター級(69.85キロ)の選手に勝ったようなものだ。

この点を重視するならウシクが1位に上がるだろう。ただ、自分より大きな相手に勝ったことを評価しすぎると、どうしても体重制限のないヘビー級が有利になる。公平性を保つには、この辺りのさじ加減が難しい。

試合のインパクトでは井上が上だ。最後のダウンでネリをロープに吹っ飛ばした強烈な右ショートは、背筋がゾクゾクするような恐怖感を覚えた。やはりKO勝ちと判定勝ちでは与える印象が違う。

いずれにしても、現2位のクロフォードも含め、上位3人は2階級で4団体統一した歴史に残る名王者。軽量級、中量級、重量級と分かれていることから3人が直接対戦することはあり得ず、だからこそPFPランキングが興味をそそる。次回、1位に輝くのは誰になるだろうか。



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