あの&幾田りらは「素晴らしい」、実力派声優・内山昂輝が語る『映画デデデデ』キャラの“深み”

内山昂輝 撮影/ふたまん+編集部

地球外からの来訪者が訪れる中、青春を謳歌する少女たちの姿を描いた映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(以下、デデデデ)』。この作品で小比類巻健一を演じるのは声優・内山昂輝だ。

小比類巻健一は主人公の小山門出と“おんたん”こと中川凰蘭と同じ高校の同級生であり、宇宙からやってきた侵略者をめぐって行動をしていく人物。前章と後章ではその立場を大きく変えていくキーパーソンである。

小比類巻役に内山さんはどのようにアプローチしたのか。アフレコの模様を振り返りながら、キャラクターにかける思いを聞いた。【第2回/全4回】

――映画『デデデデ』は、浅野いにおさんが描かれた原作漫画の単行本12巻分のドラマを、劇場版として前章と後章の2本にまとめた作品となっています。収録に臨んで、作品にどんな印象を抱かれましたか。

内山「原作を見事に真正面からアニメ化しているなと思いましたね。それはシナリオからも映像面からも感じたんですが、門出(小山門出)やおんたん(中川凰蘭)などキャラクターの描写であったり兵器の描写であったり、背景美術も含めて、世界観を120%堪能できるアニメになっていると感じました」

――内山さんが演じられる小比類巻健一は本作のドラマを左右する重要なキーパーソンです。『デデデデ』の作品の中における、小比類巻という人物にどんな印象をお持ちでしたか。

内山「まず、このチャレンジングなプロジェクトの仲間に入れていただけるのがとてもありがたかったですね。小比類巻健一はすごく大きな変化があるキャラクターです。前章の高校生時代の小比類巻健一と、高校を卒業して、活動家として侵略者への抵抗活動をしていく後章の小比類巻健一のふたつを用意する必要があるなと感じて、その変化をどうやって付けていこうかと考えました。

前章と後章では髪型も変わるし、見た目の雰囲気がかなり変わるので、その変化に応じた表現にしなければいけない。前章では、高校生でまだ自分というものを確立していないので、いろいろなものに影響されがちな危うさもありますが、それは年相応と言ってもいい部分でもある。そういう年代特有のかわいらしさや、多感な時期を表現できたらいいな、と。

そこからいろいろあって、後章では、いわゆる“闇堕ち”といいますか。客観的な正しさよりも、自分が信じる道を決めて、そこにひたすら突き進んでいくキャラクターになっていく。前章と後章のギャップを作ることが大事だなと思っていました」

「高校生のころっていろいろなものに影響されると思う」

――前章の小比類巻は高校生。主人公・門出やおんたんのクラスメイト・栗原キホ(CV:種﨑敦美)と付き合い始めるという男の子です。収録はいかがでしたか。

内山「今回はスケジュールの都合から、収録は基本的に僕ひとりで行うことが多かったんです。だから、スタッフの皆さんと協力して作っていく感じでした。

小比類巻に共感できるなと思ったところは、影響されやすい部分ですね。たとえば、小比類巻が一方的に早口でまくしたてるシーンでは、そういう精神的にまだ確立されていない危うさみたいなものを表現したいと思いましたし、思春期特有のブレてしまう雰囲気が出ていればいいなと思いながら演じました。

高校生のころっていろいろなものに影響されると思うんです。自分の好きなものに影響されたり、ミュージシャンのインタビューを読んで、そのまま真に受けたりする。“そういうことって誰にでもあることだよな”と思っていました」

小比類巻健一(CV・内山昂輝)(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

――内山さんも高校生のころ、ミュージシャンの言葉に影響を受けたこともあったのでしょうか。

内山「たしかに僕も本屋さんで音楽雑誌を立ち読みしていた思い出はありますし、いろいろなインタビューは読んでいたと思います。ただ、具体的に雑誌の内容だとか、自分がどう受け取ったのかは、そこから10年以上が経っているので思い出せませんね(笑)。

自分が高校生だったころを振り返ると、人から言われたことをそのまま受け止めてしまうことってあったと思うんですよね。自分で使えるお金にも限界があるし、いろいろ不安な気持ちを抱えがちな時期でもある。そうなると、やっぱり大人や年上の言っていることをそのまま飲み込んでしまいがちなのかなって思います。

小比類巻は、キホという彼女が、自分の好きな音楽を聴いてくれたり、その感想を教えてくれたりしていたのに、どうしてもうまく関係を結ぶことができなくなってしまう。そういう部分は共感できましたね」

あのさん、幾田りらさんの印象は

――後章の小比類巻は過激派グループに所属し、宇宙からの侵略者に対抗している人物に変化していきます。後章の小比類巻の人物像を演じるにあたり、どのようにアプローチしていかれたのでしょうか。

内山「アフレコが始まる際のスタッフさんとの会話でも、“変化するキャラクターだから、そのギャップが大事”という話は出てきていたんです。だから、高校を卒業したあとの小比類巻が出てきたときは、変化の度合いをどれくらいにしようかと試行錯誤がありましたね。

テストで僕が最初にやったテイクは、かなりダークすぎる小比類巻という感じだったので、もう少しだけ高校生時代の感じに戻そうかということになって。そのグラデーションをいろいろとスタジオで話し合って、実際に試しながら作っていきました」

――本作では門出役を幾田りらさん、おんたん役をあのさんが演じられています。おふたりの声の印象はいかがでしたか。

内山「まずキャラクターとマッチしているという面で、すばらしいキャスティングだと思いました。幾田さん、あのさんの声質がとてもいいと思いますし、キャラクターの日常だけでなく、小学生時代や、号泣するシーンなどさまざまな表現が要求されるなかで、見事に演じているなと思いました」

おんたんこと中川凰蘭(CV・あの)(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

――本作はたくさんの登場人物たちが入り乱れる群集劇です。内山さんが気になるキャラクターをお聞かせください。

内山「やはり……ひろし(中川ひろし/おんたんの兄)になっちゃいますね。ギャグ担当っぽさもあるんですけど、セリフも含めてキャッチーなキャラクターですよね。映画では諏訪部順一さんの声が付いて、また魅力的になったなと。

しかも、原作を最後まで読みすすめていくと、この作品の本筋にめちゃくちゃ影響を与えていて、おんたんたちに大事なメッセージを伝えている。おんたんと門出の関係性に変化を与えていく存在になるので、実はひろしが命運を握っていたんじゃないかと思いました」

内山昂輝(うちやま・こうき)/8月16日生まれ、劇団ひまわり所属。声優としての代表作にゲーム『キングダム ハーツ』シリーズ(ロクサス、ヴェントゥス)、『機動戦士ガンダムUC』(バナージ・リンクス)、『ピンポン THE ANIMATION』(スマイル/月本誠)、『ハイキュー!!』(月島蛍)、『呪術廻戦』(狗巻棘)などがある。

■作品情報
映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』
2024年5月24日(金)より全国公開/前章公開中
原作:浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』 小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』刊
監督:黒川智之
シリーズ構成・脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高
〈声の出演〉
幾田りら、あの、種﨑敦美、島袋美由利、大木咲絵子、和氣あず未、白石涼子、入野自由、内山昂輝、坂泰斗、諏訪部順一、津田健次郎 / 竹中直人
美術監督:西村美香
音楽:梅林太郎
アニメーション制作:Production +h.

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