PCの新時代 マイクロソフトが新ブランド「Copilot+ PC」 新型Surfaceも

by 西田 宗千佳

イベントは米マイクロソフト本社で開催

5月20日(米国時間)、米マイクロソフトはシアトル・レドモンドにある本社内でプレスイベントを開き、同社の生成AIサービス「Copilot」に関する新しい施策と、同社製PC「Surface」の新製品を発表した。

イベントのタイトルは「A new Al era begins」

同イベントは翌日21日より開かれる年次開発者会議「Build 2024」に先駆けてのもの。同社の中核戦略であるCopilotと、それを使うメインデバイスであるPCに関し、新しい方針をいち早く伝えるものとなった。

現地からの速報をお伝えする。発表会や製品の詳細などは追って詳報する。

イベントには同社のサティア・ナデラCEOも登壇

オンデバイスAI搭載PCブランド「Copilot+ PC」

まず発表されたのは新PCブランド「Copilot+ PC」だ。

マイクロソフトの本格的なオンデバイスAI搭載PCブランドとなる「Copilot+ PC」
ナデラCEOは「クラウドからエッジへ」とAI利用の拡大を解説
Copilot+ PCの特徴

これはWindows 11に生成AIであるCopilotを活用したオンデバイスAIレイヤー「Windows Copilot Runtime」を搭載、複数の「スモールランゲージ・モデル」を含む複数の言語モデルが動作する。

オンデバイスAIを動作させるレイヤーとして「Windows Copilot Runtime」を搭載

そのため、PCのプロセッサーには40TOPS以上のAI処理性能が必須とされ、多くの処理がAI用の「NPU」にオフロードされる。つまり、高性能なNPUを搭載したPCでの動作が前提となる。

AI処理のために、プロセッサー側には40TOPS以上の性能を持つNPUが必須に

OS側にもオンデバイスAIを前提とした複数の機能が搭載され、ファイルや文書などを文章で呼び出す「Recall」などの新しい機能が搭載されていく。

Copilot+ PCの目玉機能の1つ「Recall」

RecallはPC上の作業を自動的にスクリーンショット撮影しつつオンデバイスAIがインデックス化していき、「青いドレス」のように曖昧な言葉で、ファイルや作業内容に依らず見つけ出し、呼び出せるようになるという。画面上の文字だけをインデックス化して検索可能にするわけではないので、例えば以下の画像のように、「赤い車を描いた作業」を呼び出すこともできる。

Recallの実機デモ。「赤い車」というキーワードで、過去に行なった「赤い車を描いた作業」を呼び出すこともできる

インデックスはPCの中に保存され、作業内容もインデックス自体もクラウドに共有されることはなく、AIの学習にも情報は利用されない。Recallは現状、英語・中国語(簡体字)・フランス語・ドイツ語・日本語・スペイン語に対応している。

また、ビデオ通話では40以上の言語で、リアルタイム書き起こしと翻訳に対応する。翻訳は各国の言語から英語への翻訳に対応。

ビデオ通話のリアルタイム文字翻訳も

「Copilot+ PC」はインテル・AMD・クアルコムがそれぞれ対応プロセッサーを提供するが、まずはクアルコムから「Snapdragon Xシリーズ」がCopilot+ PC向けプロセッサーとして出荷され、6月18日よりACER・ASUS・DELL・HP・Lenovo・Samsungより搭載PCが発売される。

まずクアルコムの「Snapdragon Xシリーズ」が対応
6月18日よりACER・ASUS・DELL・HP・Lenovo・Samsungより搭載PCが発売

Snapdragon X搭載で「最も素早く賢い」新Surface Pro/Laptopが登場

マイクロソフトからはCopilot+ PC対応製品として、新しい「Surface Pro」と「Surface Laptop」が発売になる。

Copilot+ PC対応製品として、新しい「Surface Pro」と「Surface Laptop」が発売に
新しい「Surface Pro」
新しい「Surface Laptop」。サイズは15インチ
13インチ版の新しい「Surface Laptop」

搭載しているプロセッサーは Snapdragon X EliteおよびSnapdragon X Plus。どちらもARM系プロセッサーとなるが、マイクロソフトやアドビなどの主要アプリケーションがARM系プロセッサーにネイティブ対応し、「アプリを使っている90%の時間はARMネイティブで動作する」、とマイクロソフトは主張する。

ネイティブアプリの増加もあり、ARMプロセッサーでも「日常の9割の時間はネイティブ動作になる」とする

また、新しいARM向けの「Prism Emulation」の搭載により、x86系向けに作られたアプリケーションの動作速度は、ARM系プロセッサー搭載のSurface Pro 9と比較した場合、約2倍高速になっているという。

ARM系プロセッサー向けのエミュレーションとしては新しい「Prism Emulation」が登場。パフォーマンスが過去の機種に比べ倍になった

そのことから、マイクロソフトは新Surfaceを「これまでで最も素早く、最も賢いSurface」と説明している。

新しいSurface Proはキーボードが無線式になり、本体から外した形でも利用可能。またSurface Penは同じ形状ながら、より精度や振動によるフィードバックが改善されているという。

新しいSurface Proはキーボードが無線式になり、利用の自由度が上がった

発表会ではMacBook Airを強く意識した発表が多く行なわれている。「22時間のビデオ再生(Surface Laptop 15インチの場合)」など、過去のSurfaceよりも性能が高くバッテリーも持ち、さらにM3搭載のMac Book Airよりも高性能であることがアピールされた。

ライバルとしてはアップルのMacBook Airを意識した説明が目立った

なお、Copilot+ PC対応Windows 11や新しいSurfaceの詳細は追って別記事でレポートする。

© 株式会社インプレス