「全身性エリテマトーデス」ってどんな病気? 症状さまざまで診断困難

若い女性に多い(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

月曜連載「病気と共に生きていく」では、これまでに全身性エリテマトーデス(SLE)と共に生きる女性2人に登場いただいている。彼女たちに共通していたのは、不調の原因がなかなかわからず、診断まで時間がかかったということ。SLEとはどういう病気なのか? 順天堂大学医学部付属練馬病院膠原病・リウマチ内科診療科長の天野浩文医師に聞いた。

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私たちの体には異物を攻撃・排除する免疫システムが備わっている。これが異常をきたし、自分自身の正常な細胞や組織を過剰に攻撃してしまう病気を「自己免疫疾患」という。自己免疫疾患には関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病などいろいろあり、SLEは代表的な自己免疫疾患の一つになる。

「SLEの診断が難しいのは、この数値があれば診断に直結するというものがなく、症状が非常に多岐にわたり、一人一人症状も異なることから、総合的に判断しないと診断に至りづらい、という点にあります」(天野医師=以下同)

SLEの典型的な症状は、紅斑や皮疹などの皮膚症状、発熱、関節痛。皮膚症状は皮膚科、発熱は内科、関節痛は整形外科といったように別々の科を受診すると、それらの症状をトータルで見て判断してもらう機会を得づらい。

「患者さんがたまたま他の症状があることを伝え、血液検査に至ったとしても、膠原病の疑いを持って調べないと、SLEの診断にたどり着きません。そもそも典型的な症状が早期から出てくるとは限りません」

■9割が女性、20~40歳で発症

かつては典型的な症状を中心に1997ACR分類基準が診断に使われていたが、現在はより細かく多くの症状が網羅された2019EULAR/ACR分類基準が用いられている。それによって、比較的早期に適切な診断・治療を受けられるようになった。

とはいえ、連載「病気と共に生きていく」の2人は、診断まで数カ月間要している。全身にさまざまな症状があり、病名がわからない場合は、総合診療科あるいはリウマチ・膠原病科を受診することを考えた方がいいかもしれない。

「早期診断が大切なのは、不可逆的な状態になる前に治療を開始すべきだからです。SLEでは体内に炎症が起こる。腎臓に起これば腎炎となり、ある段階を超えると透析が必要な不可逆的な状態になります。また、脳卒中や心筋梗塞のリスクがある場合、それらを起こす前に治療を開始すれば、回避できる率が高くなります」

天野医師はしばしば火事に例えて患者さんに説明するという。小火のうちに消火した方が損害も小さい。一方で、大火事になったら、速やかに適切な量の水で徹底的に消火する。

この火事の例えは、治療にも通じる。

「SLEの状況に応じて、ステロイドを大量に投与して体内の炎症を急ぎ鎮めなくてはならないこともあります。患者さんの中には、ステロイドの副作用の心配から抵抗感を示す方もいますし、勝手に途中でやめてしまう方もいます。しかし“大火事”がもっと大きくならないうちに消火し、少しの小火も残さないようにしなくてはならない」

この10年で、新たな免疫調整・抑制薬や分子標的薬が登場し、治療選択肢が増えた。ステロイドを中心とした治療から、必要時にはステロイドを使うものの、ステロイドに依存せず、最終的にステロイドを中止するという流れに変化してきている。

「ステロイドは副作用がありますが、正しく使えば副作用を最小限に抑えられます。必ずしもずっと使い続けるわけでもない。自己判断でやめることなく、主治医の指示に従って使ってほしい」

9割が女性で、20~40歳での発症がほとんど。SLEでない者も知っておくべきことは?

「SLEには特有の倦怠感、疲労感があり、薬を正しく使い、病勢がコントロールされていても、倦怠感が残ることは珍しくありません。SLEという病気を理解し、だるそうにしていても『怠けている』などと思わないようにしていただきたい。上司なら、働き方の見直しも検討してください」

はっきりした原因がわかっていないSLE。遺伝との関係が指摘されているが、100%遺伝ではない。もちろんコントロールがうまくいっていれば妊娠・出産は可能だし、生まれてきた子供が将来SLEを発症するとは言えない。

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