教員の性犯罪公判に職員を多数動員、横浜市教委が謝罪 第三者の傍聴妨げる

横浜市の教職員による児童生徒への性犯罪公判に動員をかけ、第三者の傍聴を妨げた点について謝罪する市教委幹部=21日、市役所

 横浜市立学校の教職員による児童生徒への性犯罪事件の公判で、市教育委員会が多数の職員を法廷に動員し、第三者の傍聴を妨げていたことが分かった。11回の公判で延べ525人に動員を命じ、実際に大半が傍聴に訪れていたという。市教委は21日に会見を開き、被害者の特定を防ぐ目的だったと強調した上で、対応を改めると釈明。「裁判公開の原則」をうたう憲法に反するとの指摘に対しては言及を避けた。

 市教委が動員をかけたと明らかにしたのは、2019、23、24年度に横浜地裁で開かれた四つの性犯罪事件の公判。いずれも被告は市の教職員で、被害者は市立学校の児童生徒だった。動員は通常業務の一環として行われ、対象者には往復の交通費が支給された。今年3月末に退任した前教育長は、当初から動員の事実を把握していたという。19年度以前の対応については不明とした。

 地裁は一部の注目事件を除き、傍聴者を先着順で決めている。このため市教委は、法廷の傍聴席数に合わせて動員の人数を調整。事件が起きた学校を管轄する市内4方面の学校教育事務所が中心となり、各回最大50人に文書を通じて動員を命じていた。

 一部黒塗りで開示された文書には、公判の日時や集合時間、各事務所や担当部署による動員の内訳に加え、裁判所付近での待ち合わせや地裁内での声かけを避けるなど、職員による集団傍聴が露見しないための注意事項が記されていた。

 市教委は、動員をかけた四つの事件を現時点で公表していない。法廷に職員を大挙させることで第三者の傍聴を妨げた理由については、記者や市民から事件の存在を隠したわけではなく、あくまでも被害者である児童生徒の特定を避けるためだったと説明。保護者や弁護士の意向を踏まえた判断だとの見解を重ねて示し、保護者らに動員を提案した事実もないと明言した。

 一方、被害者が市立学校の児童生徒でも、加害者が市の教職員ではない事件の公判については動員をかけていないことも判明したが、曖昧な説明に終始した。

 市教委は4事件の加害者のうち、3人は懲戒免職処分とし、残る1人は地方公務員法の規定に基づき、禁錮以上の刑に処されたため失職したと説明。懲戒処分を下した3件については今後公表する方針を示したが、失職の場合は公表基準に該当しないとした。

 地裁は「対象事件の事実関係を把握していない」とコメントした。  

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