【夏休み2024】第70回青少年読書感想文全国コンクール課題図書一覧

青少年読書感想文全国コンクール公式Webサイト

例年、夏休みの課題の1つとして出されることが多い「読書感想文」。梅雨入りの足音が聞こえてきたこの時期から、気にしはじめるご家庭もあるのではないだろうか。

「青少年読書感想文全国コンクール」は2024年で70回目の開催となる。全国学校図書館協議会と毎日新聞社が主催するこのコンクール、作品は在籍校を通して提出することとなっている。地方審査を経て中央審査会へと進み、段階的に審査が行われる。そのため、締切りは都道府県により異なる。

青少年読書感想文全国コンクールのWebサイトでは、第69回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書がすでに発表されている。そこで2024年度の課題図書を、小学校低学年、小学校中学年、小学校高学年、中学校、高校の区分ごとに紹介する。なお選定理由は、第70回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」選定委員会の報告をもとにしている。

夏休みはまだ先ではあるが、課題図書を一足先にチェックして、勉強に、遊びに充実した夏休みの計画の第一歩としてみてはいかがだろう。

・小学校低学年(1、2年生)

・小学校中学年(3、4年生)

・小学校高学年(5、6年生)

・中学校

・高等学校


小学校低学年(1・2年生)の部

アザラシのアニュー

【選定理由】
北極圏から南下して出産するアザラシの生態が絵本になっており、小学校低学年が共感しながら読め、自然の営みについて理解できる。アザラシの成長について解説が書かれている点も評価された。

【書籍情報】
出版社:童心社
著・イラスト:あずみ虫
価格:1,650円(税込)
あらすじ:さむい冬のある日。地球の北のほうにある海の氷の上で生まれた、タテゴトアザラシのあかちゃん・アニュー。アニューは、おかあさんのおちちをのんですくすくそだちます。ある日、おかあさんがうみにでかけると…。アラスカに滞在して制作をする絵本作家・あずみ虫が描く、野生動物たちの物語。小さな子供から楽しめるストーリーで、動物への興味の入り口となる絵本。巻末には、アザラシの生態を解説するページも収録。

ごめんねでてこい

【選定理由】
日常生活でありがちな、主人公の素直になれない気持ちに共感できそう。「ごめんね」という気持ちが、いろいろな生活場面に発展して考えられる。1年生でも2年生でも読める文章量も選定理由。

【書籍情報】
出版社:文研出版
作・絵:ささきみお
価格:1,320円(税込)
あらすじ:大好きなおばあちゃんと、少しの間いっしょに暮らすことになったはなちゃん。優しいおばあちゃんと過ごす時間はとても楽しかったけれど、いつもと違う生活にだんだんもやもやがたまってきて…。

おちびさんじゃないよ

【選定理由】
体が小さいということを前向きにとらえている。主人公の行動力や勇気、大切なことが言えるところに共感してほしい。ストーリーに沿って主人公の成長と実体験を重ね合わせて読むことができる。

【書籍情報】
出版社:イマジネイション・プラス
作:マヤ・マイヤーズ
絵:ヘウォン・ユン
訳:まえざわあきえ
価格:1,870円(税込)
あらすじ:テンちゃんは身体の小さな女の子。周りの皆んなが子供扱いするけど、いろんなことができるし、知っているのです。ある日、転校生のマルくんという身体の小さな男の子にいじめっこが近づきます。小さなテンちゃんはマルくんを助けようと…

どうやってできるの? チョコレート

【選定理由】
普段食べているチョコレートがどのように作られていくのかが、写真と説明で小学校低学年でもわかりやすい内容になっている。驚きのある写真も見事で、情報量が小学校低学年にちょうど良い。

【書籍情報】
出版社:ひさかたチャイルド
写真:田村孝介ほか
価格:1,430円(税込)
あらすじ:原料のカカオから板チョコレートができるまでを、豊富な写真としかけ画面を使いながら、順を追ってみることができる。原料が変化して食べ物になるふしぎ、そして社会の仕事にも目が向く絵本。


小学校中学年(3・4年生)の部

いつかの約束1945

【選定理由】
2人の女の子とおばあさんとの会話から、過去と現在の対比が描かれ、戦争や平和について自然と考えることができる。戦争の悲惨さと現在の平和を作った多くの人々の努力を伝えている。

【書籍情報】
出版社:岩崎書店
作:山本悦子
絵:平澤朋子
価格:1,430円(税込)
あらすじ:ゆきなとみくは、自分は9歳だと言うおばあさんに出会い、共に町を歩き回ることに。後日、ふたりは意外な場所で彼女と再会する。残されたメッセージに込められた思いとは。いっしょに町を歩きまわり、語り合った、忘れられない夏の1日。

じゅげむの夏

【選定理由】
友情と夏休みの冒険がテーマで、同世代の子供たちが、男女問わずに楽しんで読むことができる。エピソードそれぞれに、ダイナミックな展開があり、読んでいて爽快である。

【書籍情報】
出版社:佼成出版社
作:最上一平
絵:マメイケダ
価格:1,650円(税込)
あらすじ:山ちゃん、シューちゃん、かっちゃん、ぼくの仲よし4人組は、天神集落で同じ小学校に通う4年生。かっちゃんは筋ジストロフィーという病気だけれど、小さい頃から一緒にいるぼくらにとって、かっちゃんは特別な存在ではない。そのかっちゃんが、4年生の夏休みに川へダイブしたいと言い始めた。天神集落の子供にとって、川へのダイブは、特別なならわし。かっちゃんの願いをきいてあげたくて、ぼくらは綿密に計画を練ったのだけれど…。夏の匂いが濃く立ちこめる山あいの村で、死という確かで曖昧なものを共有しながら、めいっぱいいのちを謳歌する少年たちの夏の日をみずみずしく描いたさわやかな作品。

さようなら プラスチック・ストロー

【選定理由】
子供たちにも身近な、プラスチックと地球環境の問題を、ストローの歴史から紹介することが新鮮。生活を便利に豊かにするはずの発明が新たな問題を生む事実もわかりやすく語られている。

【書籍情報】
出版社:光村教育図書
作:ディー・ロミート
絵:ズユェ・チェン
訳:千葉茂樹
価格:1,760円(税込)
あらすじ:約5千年前に発明されたストローは、なぜ今、問題になっているのだろうか。ストローの発明と改良の歴史、使い捨てプラスチックが環境や海の生き物に与える影響、解決策など、SDGsを考え行動するためのノンフィクション。

聞いて 聞いて!:音と耳のはなし

【選定理由】
「音」や「聞く」を、科学的視点で見ることの面白さを教えてくれる。小学校中学年が理解するのに適しており、知的好奇心が大いに刺激される。身近なことを立ち止まって考えるきっかけとなる。

【書籍情報】
出版社:福音館書店
文:髙津修、遠藤義人
絵:長崎訓子
価格:1,760円(税込)
あらすじ:音は、ふるえる空気の波。その波は耳の中の器官を伝わり、電気信号となって脳に届く。左右の耳に届く音はわずかにズレているが、脳はその差を手がかりに、音がする方向や、どんな場所で響いているかを判断する。動物は音で敵の気配を感じ取ったり、なかまとやりとりをしたり。人間もまた、日々、さまざまな音を聞きとり、記憶し、くらしに役立てている。雨の降る音。車の音。鳥のさえずり。目をつぶって耳をすませると、身のまわりの情景が心に浮かぶ。音には、目に見えない景色をイメージさせる力がある…。オーディオ専門の執筆活動に携わってきた著者が語る、音の魅力と耳のふしぎ。


小学校高学年(5・6年生)の部

ぼくはうそをついた

【選定理由】
タイトルから、読者は「なぜ」と思いを巡らせて読み進めていく中で、ひとりひとりの判断や行動には理由があることなどを感じ取ったり、自分の日常と生活を関連付けて考えたりすることができる。

【書籍情報】
出版社:ポプラ社
作:西村すぐり
絵:中島花野
価格:1,650円(税込)
あらすじ:広島に住む小学校5年生のリョウタ。同居する祖父から、原爆で亡くなった祖父の兄ミノルの話を聞く。平和学習で資料館に行き、戦争は怖い、二度と繰り返してはいけないと思っていた一方、どこか遠い昔の出来事のようにも感じていた。しかし、祖父の話から興味を持ったリョウタは…。平和のために、今、私たちは何ができるのだろう…すべての人が幸せに生きられる世界へ、祈りをこめた物語。

ドアのむこうの国へのパスポート

【選定理由】
作中の架空の国に入るための活動をとおして、登場人物たちは自分自身を見つめ、友だちのことを理解し、受け入れ合う。こうした展開が読者の興味・関心を高め、読みを深めることができる。

【書籍情報】
出版社:岩波書店
作:トンケ・ドラフト
リンデルト・クロムハウト
絵:リンデ・ファース
訳:西村由美
価格:1,980円(税込)
あらすじ:作家の家には、謎めいたドアがある。ドアのむこうには、特別なパスポートを持った人しか入れないという。クラスの子供たちは作家と手紙を交わしながら、パスポートやビザの申請といった課題にむきあううちに、仲間や自分をより深く知っていく。オランダの人気児童文学作家2人による、子供たちへのエールに満ちた物語。

図書館がくれた宝物

【選定理由】
イギリスと日本の戦時下の市民のくらしの違いに気づかせてくれ、困難な生活の中を、必死に生きていく姿に心を動かされる。登場人物たちに、家族のありようのひとつを見ることができる。

【書籍情報】
出版社:徳間書店
作:ケイト・アルバス
訳:櫛田理絵
価格:2,090円(税込)
あらすじ:1940年、ロンドン。ドイツとの戦争が始まったばかりの英国。幼いころに両親を亡くしている12歳のウィリアム、11歳のエドマンド、9歳のアンナの3人きょうだいの保護者がわりだった祖母が亡くなった。遺産が残されたが、未成年の3人は、後見人がいないと遺産にも手をつけられない。弁護士のエンガーソルさんの勧めにより集団学童疎開に参加することになった3人の救いとなったのは、村の図書館だった。ロンドンから疎開した本の好きな3人きょうだいの心あたたまる物語。

海よ光れ!:3・11被災者を励ました学校新聞

【選定理由】
読みやすい文章で、新聞の役割と紙面構成、記事の書き方がわかる構成で、ノンフィクションとして優れている。震災当時の子供たちの活動や地域の絆の大切さが描かれている。

【書籍情報】
出版社:国土社
作:田沢五月
価格:1,540円(税込)
あらすじ:東日本大震災の避難所となった小学校で、被災者といっしょに寝泊まりしていた子供たち。何を感じ、そして自分たちに何ができるのかを考え取り組んだこととは…。子供たちの思いをつぶさに伝える感動のノンフィクション。


中学校の部

ノクツドウライオウ:靴ノ往来堂

【選定理由】
靴づくりの細かなところまで描かれており、物作りの魅力にどんどん引き込まれていく作品。大切に扱えば長く使えるものとの出会いは、気付かないだけで身近にあることがわかる。

【書籍情報】
出版社:あすなろ書房
作:佐藤まどか
価格:1,650円(税込)
あらすじ:高いビルの間にちょこんとはさまっている小さな建物。くすんだ色のレンガ造りのこの店は、築100年のオーダーメイド靴店「往来堂」だ。店主は、靴職人の祖父。孫の夏希は、シューズデザイナーを夢見る中学生で祖父を尊敬していた。ある日、店の後を継ぐはずの兄が突然いなくなり…。シューズデザイナーを夢見る中学生をさわやかに描いた青春ドラマ。

希望のひとしずく

【選定理由】
登場人物が多く、連続ドラマになりそうな多彩なエピソードで構成され、飽きずにぐいぐい読める。ちょっとした気づきや優しさが、人の助けになるかもしれないと思わせてくれる。

【書籍情報】
出版社:理論社
作:キース・カラブレーゼ
訳:代田亜香子
価格:1,980円(税込)
あらすじ:オハイオ州の小さな町には、願いを叶えてくれるという井戸がある。中学1年生のライアンは、裕福な家のひとりっ子アーネスト、幼なじみのリジーとともに、この井戸を見つける。そして、クラスメイトや町の人たちのさまざまな願いごとを知る。いろいろな悩みをかかえる人々が、ちょっとしたやさしさで救われていく、希望と愛でいっぱいの物語。

アフリカで、バッグの会社はじめました:寄り道多め仲本千津の進んできた道

【選定理由】
大変わかりやすく書かれ、言葉の選び方、ページ数など伝わることを大切にしている編集、読後に明るい未来を思い描ける内容。表紙に描かれたバッグの写真も印象的。

【書籍情報】
出版社:さ・え・ら書房
著:江口絵理
価格:1,650円(税込)
あらすじ:目の覚めるような原色に、花や動物、サークル模様がデザインされていて、持つだけで心が華やいでくる…人気のバッグ・ブランド「リッチーエブリデイ」を立ち上げた仲本千津さんは、いま注目の「社会起業家」。バッグづくりを通して、アフリカの貧困問題を解決し、女性を勇気づけ、輝かせたい…。迷い、遠回りしながら、自分の信じる道を歩んできた仲本千津さんの姿を描く 「進路決定」ドキュメンタリー。


高等学校の部

宙わたる教室

【選定理由】
定時制高校の実話が、高校生には意外性をもって受け止められる。主人公が学びに目覚めるプロセス、かつ科学分野に目を向けていく点に多様な読書感想文が期待できる。

【書籍情報】
出版社:文藝春秋
著:伊与原 新
価格:1,760円(税込)
あらすじ:東京・新宿にある都立高校の定時制。そこにはさまざまな事情を抱えた生徒たちが通っていた。「もう一度学校に通いたい」という思いのもとに集った生徒たちは、理科教師の藤竹を顧問として科学部を結成し学会で発表することを目標に、「火星のクレーター」を再現する実験を始める…。「月まで三キロ」「八月の銀の雪」著者がおくる、青春科学小説。

優等生サバイバル:青春を生き抜く13の法則

【選定理由】
日本よりも厳しいといわれる韓国の受験戦争真っただ中の高校生を描き、日本の高校生にも共感をもって、さまざまな読書感想文が寄せられることが考えられる。物語のテンポの良さを評価。

【書籍情報】
出版社:評論社
作:ファン・ヨンミ
訳:キム・イネ
価格:1,650円(税込)
あらすじ:首席で進学校に入学してしまった主人公ジュノ。入学初日から生徒を成績でランク付けする学校のやりかたに違和感を感じながらも、高校生活が始まる。入学してからはトップをとれず、思い悩む日々。テスト、課題、進路、SNS、そして恋…。1日は24 時間。やらなきゃいけないこと、考えなきゃいけないことは満載! ハードな高校生活を生き抜くために、“ 優等生” のジュノが見つけた法則とは?

私の職場はサバンナです!

【選定理由】
南アフリカでサファリガイドになる、主人公のアクティブな生き方は高校生には新鮮で、文系・理系問わず読める、楽しく魅力ある作品。生物多様性を考えるきっかけにもなる。

【書籍情報】
出版社:河出書房新社
著:太田ゆか
価格:1,562円(税込)
あらすじ:大好きな動物を守りたい…南アフリカ政府公認・唯一の日本人女性サファリガイドが伝えたい知られざるサバンナの動物たちの生態、環境保護の最前線、人と自然が共生するために大切なこと。


編集部

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