シェフラー事件に思う “クラウドコントロール”の重要性

ウッズの周りにはいつも大ギャラリー(撮影/田辺安啓(JJ))

「全米プロ」が終わった。やはりメジャーだけあって、現場にいるとさまざまなニュースがある。最後は緊張感あふれる中、ザンダー・シャウフェレがバーディパットを決めて優勝するシーンは感動的でもあった。

素晴らしいコース、厚い選手層、大勢のギャラリー、高額な賞金など、メジャーらしさを数え上げればキリがない。世界各国のトーナメントも、4大メジャーのような大会になることに憧れているに違いない。しかし、規模の大きな大会というのは、それはそれで課題も多い。それを象徴していたのが、大会2日目の朝の「スコッティ・シェフラー、警察に拘束される」事件だった。しかし、ここで指摘したいのはシェフラーの行動についてではない。

スコッティ・シェフラーは2日目朝に大騒動に(撮影/田辺安啓(JJ))

大勢の人が集まる大会で欠かせないのは、クラウドコントロール。直訳すれば「群衆管理」となる。どれだけ米国のコースが広かろうが、何万人と人が集まると危険なのだ。一昨年のハロウィーンに韓国ソウルの繁華街・梨泰院で発生した痛ましい事故を思い起こせば想像に難くない。

シェフラーの事件は夜が明けきらない暗い時間帯、かつ雨で見通しの悪い状態で、シャトルバスが大会に出入りしたスタッフをはねて死亡させた交通事故に端を発した。予選ラウンドは夜明けとともに始まり、選手を含めた大会関係者はそれよりずっと前にコースに来る。道路は普段とは異なる規制線が設けられていた。偶然や、不注意が重なって死亡事故は発生してしまったのだろう。

シャトルバス(撮影/田辺安啓(JJ))

もちろん、大会が行われていなければ起こらなかった事故なので、クラウドコントロールとも関係がある。会場内では、選手の通路、ギャラリーの巡回路、メディア関係者など大会関係者の専用路などが事細かに決められている。選手のプレーを邪魔しないためでもあるが、大勢の人が将棋倒しになったりしないように考えられてのことでもある。

車社会の米国では、一般ギャラリー用の駐車場も大きい。これも大会側が場所を選定し、コースまでの送迎シャトルを確保し、ギャラリー専用ゲートも設ける。普段は渋滞もあまりひどくないであろうケンタッキー州ルイビル郊外も、大会期間中はコース周辺で毎日渋滞が発生。地元住民にとっては、全米プロはあまりありがたくないことだったかもしれない。

バルハラGC(撮影/田辺安啓(JJ))

次のメジャーは6月の「全米オープン」。実は2年後の2026年大会に関しては、渋滞について早くも心配の声が上がっている。会場はニューヨーク州のシネコックヒルズGC。前回当地で開催された2018年大会では、オフィシャルホテルからコースまで通常なら30分程度で到着するはずが、午前6時前からひどい渋滞が発生したために、毎日2時間以上もかかるという事態に陥った。

半島の先に位置するシネコックヒルズGCへ通じる道路は、普段から渋滞ポイントなっていて、そこに全米オープンのようなメジャー大会が開催されると、途端にひどい渋滞が発生してしまう。地理的にも解消が困難なため、あと2年後にどのような対応がなされているのか、今から気になって仕方がない。

箱からあふれる場内で出たごみ(撮影/田辺安啓(JJ))

会場で発生する、ごみの問題もある。米国の大会では、ギャラリーが去った後の会場内はごみで溢れていると言っていい。今大会期間中も約40人の回収スタッフが、休む間もなくごみ袋をまとめてバックヤードへ運んで行っていたが、袋はまたすぐに一杯になっていた。メジャー大会には影も潜んでいるのだ。さまざまな課題を克服し、問題を最小限に抑える努力と工夫をすることで、大会は成り立っている。カメラマンとしては、そんな舞台裏も見ていきたい。(JJ田辺カメラマン)

集めても集めても…コースはごみでいっぱい(撮影/田辺安啓(JJ))

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