ぬるぬる動く“刺繍のドットアニメ”がすごい! 制作期間4年、執念の大作 題材はサ終した人気ゲーム

刺繍を元につくられた、緻密な動きのアニメーション動画がXで公開され、話題になっています。

スマートフォン向けゲーム『ワールドフリッパー』を題材にしたわずか4秒の映像なのに、何度も見てしまう。

使用されたのは42枚の生地で、1秒に10枚以上使われている計算。何度も停止して、擬似的にコマ送りにしてみると、繊細な仕事がよくわかります。

同時に、かなり根気のいる作業こともわかる……執念のなせるわざ!

しかし、なぜこれほど手間のかかるアニメーションをつくったのか? こだわりは? どんな苦労があったのか? 疑問はつきません。

作者は、ハンドメイドマーケット・minneで「ぴうる」(外部リンク)というクロスステッチキットのお店を運営するしゅげぇとんたんさん。制作に至った経緯を聞きました。

刺繍に興味のない人に届けるためにつくったアニメーション

──話題になっている動画ですが、そもそも刺繍を元にアニメーションをつくろうと思ったのはなぜなのでしょうか?

しゅげぇとんたん クロスステッチ(編注:糸をクロスするように刺していく刺繍の手法)だけでは、興味を持ってもらえないとわかっていたからですね。

例えばモナリザのような有名な美術品をステッチしても、美しい風景を写真のように緻密にステッチしても、可愛い動物をステッチしても、もともと刺繍に興味の無い人は見てくれません

──なるほど。だからアニメーションだったんですね。

しゅげぇとんたん はい。動くはずのない刺繍を動かすことで、刺繍に興味の無い多くの人からも見てもらえるようにと考えました。

投稿した動画には、使い回し無しで42枚の生地を使用しています。

──実際に大反響を呼んでいるので、大成功だったわけですね。制作にあたってこだわった点や苦労した点はございますか?

しゅげぇとんたん できるだけ原作の色味に近づけようと思い、刺繍糸の色選びはこだわりました。

苦労した点はたくさんありますね。時間がかかり過ぎてモチベーションが何度も落ちましたし、仕事と育児でまとまった時間がとれなかったですし。

他にやってみたい刺繍があっても手を出せないこともそうです。コッコロちゃん(編注:動画で動いているキャラクター)の色数が小さいわりに多くて、糸を縫って、切って、付け替えての回数がやたら多いなど……本当に大変でした!

ドット絵と刺繍の相性を狙い『ワールドフリッパー』に

──では、アニメーションを制作するにあたって、題材に『ワールドフリッパー』(2024年2月20日にサービス終了)を選ばれた理由を教えてください。

しゅげぇとんたん 刺繍を趣味にしているのは、圧倒的に女性が多いです。なので男性にも刺繍の楽しさを知ってほしいと思っています。

しゅげぇとんたん 特にクロスステッチはドット絵ゲームとの相性が良いですが、ドット絵ゲームに関しては、男性ユーザーが大多数だと思っていて。

それで言うと『OCTOPATH TRAVELER』や『千年戦争アイギス』はドット絵のキャラが生き生きと動きますが、そうしたドット絵ゲームの中でも『ワールドフリッパー』が一番派手で綺麗だったので選びました。

──Xの投稿を見ると、制作は4年前にはじめたとのこと。制作中に『ワールドフリッパー』がサービス終了してしまいましたが、“刺繍アニメ”が完成した今、心境をうかがえますか?

しゅげぇとんたん とても面白くて僕も好きなゲームだったので、応援する意味も込めてつくりはじめたんですが、サービス中に間に合わなかったのは残念です。

しかし、サ終後だからこそ、『ワールドフリッパー』の成分を欲している方がいました。

投稿した動画でゲームを懐かしんでくれたユーザーが集まり、暖かいコメントを残してくれたことは、とても嬉しく思っています。

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