「先生の膝の上に乗せられ…」被害女性が勇気ある証言 強制わいせつ容疑の60歳教諭に求刑2年 11人が被害訴えるも男は一貫して否認

福井・坂井市の小学校で勤務中に女子児童にわいせつな行為をしたとして2023年、教諭の男(逮捕当時59)が逮捕された。被害を訴えている児童は11人にのぼる。取材を進める中で、過去に男から被害に遭ったという女性がカメラの前で証言してくれた。
21日の裁判では、検察側が懲役2年を求刑。一方で男は、逮捕後の取り調べから公判まで一貫して容疑を否認していて、弁護側は無罪を主張している。判決は6月17日に言い渡される。

“強制わいせつ”で逮捕も一貫して否認

2023年5月29日、強制わいせつの容疑で福井市木田3丁目の教諭・見附史教被告が逮捕された。

2023年4月から5月中旬にかけて勤務先の小学校で、休み時間に理科室で女子児童と2人きりになった際、背後から脇の下に手を回し、両胸を触るわいせつな行為をした疑いが持たれている。見附被告は、「逮捕されることに一切納得できない」と容疑を否認した。

この時の学校側への取材では、逮捕容疑より前の2022年秋ごろ、1人の女子児童が「頭をなでたり体を近づけてきたりして嫌だ」と担任に話し、当時の教頭が見附被告に注意していたことが分かっている。

また、学校の聞き取り調査に対し、他の複数の児童が「見附先生に体を触られたことが2022年からあった」と話したことが判明。これについて坂井市教委に見解を尋ねると、「今回の調査で分かったことで、それ以前には報告は受けていない」とした。
だが県教委などによると、2008年にも見附容疑者は、当時勤務していた福井市内の小学校で児童の胸元などを授業中にカメラで撮影したと複数の保護者から指摘され、自宅待機を命じられていたことも分かった。

学校側が説明も…保護者は憤り

見附被告の逮捕から3日後の2023年6月1日。勤務先の小学校が初めて、全校児童の保護者を対象に説明会を開いた。

参加した保護者によると、2022年秋の事案について「前任の校長や教頭は教育委員会に報告せず、2023年度新任の校長や教頭への引き継ぎも怠っていた」と説明があった。
保護者からは疑問の声が相次いだが、教育委員会の回答はというと「例えば過去に不適切な指導を行ったり、交通案件等で違反をして処分対象になったりしたという教職員については全て把握しています。それ以外のところについては記録がございませんので、口頭での注意で済んでいる場合については、なかなか情報を得るのが難しい状況でございます」というものだったという。

説明会終了後、多くの保護者たちは納得できない様子で会場から出てきた。保護者の一人は、「言い訳しかなかったと思いますよ。今後の対応についても具体的なことは言ってなかったし、あの場にいた保護者は誰も納得がいっていないと思う」と対応を非難。また別の保護者は、見附被告が「女子児童の着替えの時間になると廊下をうろつき、早く着替えろと言ってくるので気持ち悪い」と娘から聞いていたことを明かし、学校側の対応に憤った。

福井テレビでは、学校が市教委への報告を怠ったことについて文科省の担当者に見解を尋ねた。すると、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する法律では、在籍する児童が性暴力やセクハラを受けたと思われる時は、その事実や対応した結果を学校の設置者である市の教育委員会に報告しなければならない。見附容疑者の勤務先である、坂井市の小学校の当時の対応は法律違反の可能性があり、場合によっては関係者が処分対象にもなり得る」と指摘した。

この事実を坂井市教育委員会に伝えると、「2022年秋の事案は今回の問題(逮捕容疑)発覚後に知った。捜査中でありコメントは控える」と返された。

11人の児童が被害訴え

2023年6月8日、福井地方裁判所は、見附被告の勾留期限を10日間延長した。勾留期限の18日に、見附被告は同様の容疑で再逮捕された。見附被告は、この時も「わいせつ行為をするのはありえない」と容疑を否認した。
翌7月には福井地裁が、見附被告を2度目の逮捕容疑で起訴。さらにこの日、別の女子児童に対しても、服の上から胸を触るなどした強制わいせつの容疑で3度目の逮捕に至った。

2023年7月31日、福井地方裁判所で開かれた初公判。見附被告は改めて「そのようなことをしたことはありません」と全面的に容疑を否認、弁護人は無罪を主張した。
一方で検察側は、2008年と2016年に児童との不適切な身体接触があったとして教育委員会から調査を受けていたことや、今回の事案後のアンケートで、最終的に11人の児童が被害を訴えたことを指摘した。

「膝上に乗せられ…」被害女性の告白

福井テレビが取材を続ける中で、一人の女性がカメラの前で証言してくれることになった。彼女は、小学生時代に見附被告からわいせつ行為を受けていたという。
今まで誰にも言えずに悩んでいたが、見附被告の逮捕を受け、「声を上げた子供たちのために」と覚悟を持って告白してくれた。

見附被告から被害を受けていた時期は―

小学校5、6年生の時。背後から抱っこされて、手を腰のあたりに回されて、先生の膝の上に乗せられる…。そこで、おなかのあたりを触られていました。手が見えないように机の側面に持っていって…そこまで鮮明に覚えているんですけど、そういうやり口ですね。気持ち悪くて、何でしてくるのかと。それから、胸が大きい友達には「デカ乳」って言ったりとか…やめてほしいと思っていました。

怖いので、2人きりにさせられることがとても嫌で、いつも逃げていました。

当時、友達や両親に相談しようと考えたか―

考えられなかったです。気持ち悪いなという気持ちはすごくあったのですが、言っちゃいけない事みたいな自覚があったので、誰にも言ったことはなかったです。

初めて話してくれたのかー

やっと報道がなされて、本人が「やってない」と言っているらしいので、うやむやにされて話を終わらせられたら困るので。本当にあったことを言わないと、せっかく声を上げてくれたお子さんたちの努力が無駄になると思ったので、そうではないと証言したくて、ここにいる。

15年前にも報道がなされたということだったのですが、どうしてその時に、もっと捜査をしてくれなかったのかなって。それでまた教師をしていたということだったので、おかしいのではないか、教育委員会ってそういうところなんだなと思ってしまいました。同じ思いをされた方が、多数いるんじゃないでしょうか。

(見附被告の)教師生活も長いので、このテレビを見て被害者が手を挙げてくださって、本人も罪を認めて償って反省してほしいと思います。

今回、カメラの前で証言してくれた女性は、当時は被害について「言っちゃいけない事」と感じていた事を明かしてくれた。

専門家「被害を訴えられる仕組みの整備を」

なぜ教員のわいせつ事件が多いのか、防ぐ方法はないのか。

教育社会学が専門の名古屋大学の内田良教授に話を聞くと、「これまで見えていなかった被害が表に出るようになっただけ」と指摘。内田教授は「実態として増えているというよりも、これまでは水面下で、相手が教師ということで子供も保護者も言えず事案が表に出てこなかったのが、ようやく表に出るようになり、処分が下されるようになった」と分析する。

また、「学校では教師が絶対的な権力者で、子供にとって教師しか頼る人がいない構造が問題を見えにくくしている」と続けた。

教員によるわいせつ事件や再発を防ぐ方法については、「被害があった時は相談してほしいと子供に伝えておき、その窓口をたくさん用意しておくことも大事。担任、別の先生、保護者、電話相談やチャット相談など、いろんなツールを伝えておくことで、何かあった時に言葉に出せるような仕組みを整備していく必要がある」としている。

「絶対許せない」証人尋問で涙の訴え

初公判から約4カ月後の2023年12月6日、被害に遭ったとみられる女子児童の1人が証人尋問で法廷に立った。別室からとなったが、時折言葉を詰まらせながら、当時の出来事を詳しく証言した。「普段から体を触られたりすることがあった」とし、見附被告の逮捕を父親から聞かされた時は「心が落ち着いたというか安心した」と話した。

6日後の12月12日には、この女子児童の父親が法廷に立った。証人尋問で父親は、「学校で先生から嫌なことをされている」と娘から打ち明けられ、「胸やお尻、下半身を触られた」と告白されたと話した。
また娘は、他の女子児童に対しても「胸が大きいから水着姿を見てみたい」と言っていたことも証言した。見附被告に対しては、「大事に育ててきた娘に対して、こういったことをしたことを親として絶対許せない。二度と社会に出てきてほしくない」と涙ながらに訴えた。

同じく証言台に立った勤務先の校長は、見附被告の印象について「明るくて児童から好かれていたと思う」と話した一方で、被害を訴える児童からの聞き取りでは、「肩を組んでいてその手が胸に当たった」「頭をなでられたり体を密着させてきた」という話があったと証言した。

「そのような事実ない」 被告は改めて否認

2024年3月19日、見附被告が被告人質問で証言台に立った。
検察側は、被告のPCから裸でランドセルを背負った女児のイラストや、性的な画像などが見つかったことを明らかにした。しかし、起訴内容について問われた見附被告は、「そのような事実はありません」と改めて否認。わいせつ行為とされた内容については、「背比べをしたり、実験がうまくいったりした時に体が触れることはあった」と説明した。

検察側が、被害を訴えている女子児童が裁判で体を触られた時の詳しい状況を証言したことについて問いただすと、「心当たりがない」とした。検察側は重ねて、学校側の調査で他の複数の児童も体を触られるなどして嫌だったと訴えたことについても尋ねたが、見附被告は「授業の後にかなり叱ったことがあり、それで嫌な思いをしたのかもしれない」と主張した。

そして5月21日。福井地裁で行われた裁判で、検察側は、女子児童が見附被告に触られた場所や触り方などの話が捜査段階から一貫していることから、児童の証言を十分信用することができると主張。「犯行態様は大胆不敵で悪質。被害者が感じた性的羞恥心や恐怖心などの悪影響が相当に大きい」などとして懲役2年を求刑した。

一方、弁護側は、証拠がないことや児童の証言の信用性が低いとして「無罪」を主張している。学校やクラス内では、見附被告に体を触られるといううわさが流れていたことから、友人と被害を相談する中で記憶が改ざんされたのではないかとした。

見附被告は「起訴されている内容について私にはありません」とあらためて否認した。判決は6月17日に言い渡される。物的証拠がない事件だが、性犯罪が厳しく処罰される時代に、裁判所が被害児童の証言をどう取り扱うかが注目される。

(福井テレビ)

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